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第六百四十五話

 さて、ローザリア帝国が出現した例の場所であるが、非常に面倒な場所である。

 なんというか『なにもない』。

 使える惑星はおろか、小惑星すらない。

 昔は開発しようと思ったこともあるようだが、物資の運搬が難しく頓挫。

 この場合の難しいってのは技術的に不可能って意味じゃない。

 経済的に黒字にならないって意味だ。

 実はローザリアとレプシトールやパーシオンは国境を接してない。

 なにもない空間で隔てられている。

 そのせいで「存在は知ってるけど、つき合いはない」という状態だそうだ。

 良くも悪くも商売相手にすらならない。

 そりゃ中継基地のステーションをいくつも作れば航路の確立もできるだろうが……。

 数百年先の利益を刹那的に生きるレプシトールや人生受け身のパーシオンが取るとは思えない。

 武器の密輸は細々行われてるらしいが、向こうの通貨の両替はラターニア銀行も行ってない。

 物々交換だけである。

 あ、そうか。

 クロノスとの銀行システムの統合って、ラターニア銀行のお墨付きなのか……。

 そりゃ投資も殺到するわ。

 そんななにもないところを渡ってきたローザリアさん。

 ここを渡ってきたせいで、レーダーに引っかかるまでノーマークだったというわけだ。

 さて、そんな俺は倉庫でニヤリとしてた。

 なあに、我らはお話好き民族。

 いきなり戦闘にならなければ問題ない。

 まずは物資の交換かな。

 これは重要だ。


「あーしらこういうものッス」


 という自己紹介だ。

 ここで渡した物資で相手の工業レベルとか文化が垣間見られるわけだ。

 帝都の私立大学付属幼稚園でのママどうしのマウントバトルなんてものじゃねえ。

 国家レベルのマウントバトルである。

 ということで我がクロノスも会談するにあたってローザリアに品を提供する。

 ただし、いきなり押しかけてきたのでネタに走る。

 まずは『劇場版ファQさん~人妻迷宮の謎~』のメディア……。

 あ、らめ、やめ!

 クレアさんアイアンクローらめ!


「レオ……真面目に」


「はーいママー!」


 ギリギリギリギリ。

 というわけで潰れた大福みたいになった俺は……。

 あとで大福作るか……。


「じゃあなにがいい?」


「伝統工芸品とか」


「クロノスの剣かな」


 伝統工房があるはず。

 個人的に支援してる工房だ。

 連絡。


「やっほー、親方」


「どうしたんですかい王様?」


 バージル親方である。

 鬼神国人系クロノス人でムキムキの人だ。

 鬼神国人系と言っても三代前からクロノスで伝統工芸の剣を作ってる家系だ。


「いやさー、ローザリア帝国ってのが来たじゃん。親方の剣を向こうに贈りたいなって思ってさ」


「贈答用ですかい。それなら俺のところの工房じゃなくても。もっと見た目がいい工房があるだろ」


「いやいや~。一番腕いいの親方じゃん」


「おや、うれしいね。王様にそこまで言われちゃしかたねえ。いまから作っても間に合わねえがいいか?」


「うん最近の作品頼んます」


「へいよ~」


 通信終了。

 親方の剣は俺も何本も持ってる。

 いい剣だよ。

 刀も好きだけど、クロノスの剣もいい。


「レオ……、芸術性の高い工房じゃなくていいの?」


「うん。親方の剣をわかるかで相手の傾向がわかるからね。わからないなら『剣士としてはたいしたことねえな』って判断できるもん」


 これぞ国家マウントバトル。

 わかりやすい工芸品にプロにしかわからんものを忍び込ませる。

 ここで度肝抜いてスッキリして終了してもいいが、相手の値踏みもする。

 わかる人にしかわからない品を見抜ければ、相手は超一流。

 そうじゃなくてもデータにはなる。

 これぞ笑顔でテーブルの下で蹴り合うってことね。

 俺はエグい笑みになる。


「本当にレオが敵じゃなくてよかった……」


「ちゃんとゴブレットとか伝統服とか絵画も送るよ」


 伝統楽器とかもね。


「ねー、シーユン」


「ええ、レオ様♪」


 隣で仕事してるシーユンもエグい笑みを見せる。

 シーユンもローザリア帝国と会談予定だ。

 シーユンもキラキラ系の贈り物に燻し銀のものを紛れ込ませる。

 わかれば超一流。

 わからなくても話のきっかけにするのでも一流。

 わからないでスルーしたら二流。

 文句つけたら三流。

 これだけで外交スタッフの質がわかっちゃう!


「くえーっけっけっけ!」


「うふふふふふふ……」


「シーユンちゃんが汚されていく……」


 なお仕事してるのは食堂。

 関係者まとめて仕事してれば楽でしょって話だ。

 いつメン勢揃いである。


「嫁ちゃんはどうする?」


「妾もこういうのは苦手での。意図だけ伝えて文官に頼んだぞ。……というかの。婿殿はどこでこういうの学んだのじゃ? 不思議でしかたないのじゃが……」


「あのね嫁ちゃん。うちはね、強い貴族……というかミストラル公爵家の大鼓持ち一本で生き残ってきたのね。こうやって相手との無言のやりとりを制さないと生きて来れなかったの……」


「怖ッ! うちですらそこまでじゃないよ!」


 クレアどん引きである。

 だって無能な侯爵家が周囲のおもちゃにされずに生き残ったんだぜ。

 いま考えるとご先祖様は砂を噛む思いでアホを演じてたんだと思うよ。

 公爵会があったら、少しでも優秀だったら目をつけられておもちゃにされてたもん。

 なお親父は普通に無能。


「あははははは~。それなー。うちも剣バカって思われてなかったら潰されてたもん」


 メリッサがゲラ笑い。


「怖ッ! 中央政治怖い!」


「クレア、安心せい。公爵会は滅ぼした」


「わたし……公爵会みたいになるのだけはやめようと思う」


「公爵会どころかクロノス王族じゃろ」


 冷静なツッコミである。

 そうよねえ。


「嫁ちゃん……明るく楽しく激しい帝国にしようね!」


「婿殿ぉ~!」


 抱き合う。

 ここまで茶番。

 いつものことなのでみんなスルーである。

 なんて話してたらイソノに連絡が入る。

 なんか深刻な話をしてるようだ。

 アホアホイソノが真剣な顔してる。


「ハナコさん、なにかあったん?」


「ちょっとレオ、ここ頼めるか」


「おう、なにかあった?」


「ハナコさん子どもできたみたい……病院行ってくる」


「お、おう! ケビン、付き添い頼む!」


 非番でお菓子食べてくつろいでたケビンが立ち上がる。


「イソノくん行こう!」


「悪いなケビン」


「レン!」


「はい、ご一緒します!」


「……タチアナ?」


「なんで疑問形なんだよ!? ケビン姉ちゃん、あーしも行く。クロノス教に連絡しとくね」


「えっと、末松さんにも連絡して!」


「わかった!」


 そうなのである。

 もうね、政治的問題なのである。

 だって俺が子ども作る前に死んだら、クロノスの王位継承権がイソノのところの子に移るもの。

 次がアマダのとこ。

 これからたいへんだぞ~。

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2巻4月20日発売です!

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― 新着の感想 ―
あれは、良い物だ!!
マ・クベ「壺も贈ろう」
ネタ臭が、プンプン香りますw
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