第六百四十四話
「あかーん!」
もはやどこのものかわからない方言で俺は叫んだ。
全面戦争はほぼ決定してるけど、まだだ。
いつになるかはわからない。
そこにレプシトールの短距離ワープのレポートが来た。
やっぱり~!
やっぱりゼン神族が裏にいたのね!
男の子たちで自然石割りとかやってキャッキャしてる場合ではなかった。
レプシトールやパーシオンにおける命の価値が恐ろしく低いのはわかっていた。
だけどエース部隊に千分の一の確率で死ぬ装置使うか?
バカなのかな?
「国家はお前らを尊重してる」って心の底では思ってなくても真顔で言える社会じゃないから国民は国家に忠誠を誓わないんであってだな。
ラターニアの「たとえ遺体になってもお前らを国に帰してやる」っていうのを見習え!
レプシトールの偉い人……というかカレン大統領と会議。
カレンさん……食品の屍食鬼&病原菌汚染問題で寝てないそう。
ショボショボの顔で会議に出た。
「もうやだ……大統領辞める……」
体力お化けの大統領がこの有様である。
「えーっとお酒を送りますんで」
「お酒よりイチゴいっぱい乗ったケーキの方がいいもん!」
あ、とうとう壊れた。
完全に女児になってる。
「えーっとラターニアの製菓店……」
「スパイス入ってないやつ!」
スパイス嫌いか。
ラターニア人だけだな、クロノスのスパイス料理は俺たちでも普通に美味しい範囲だし。
「クロノスのうちの系列店。花火とチョコのプレートつけられますが?」
「……チョコ大きいの!」
「あ、はい。文字入れられますけど」
「カレンちゃんがんばったね!」
「あ、はい。オプションのマジパン細工つけます?」
「にゃんこ!」
「あ、はい。にゃんこ……と。花火つけます」
「つける!」
一番大きいイチゴホールケーキ冷凍で。
オプション全盛り、チョコプレートは『カレンちゃんがんばったね!』、マジパンはにゃんこと……。
あ、セットでアイスケーキ頼むと安いのか。
「アイスケーキ……」
「いりゅ!」
あ、はい。
アイスケーキ同梱で。
「味は……?」
「チョコ!」
あ、はいチョコね。
はい注文。
「送りましたんでいい子にしてくださいね!」
「あーい!」
「ところで甘いお酒……」
「送ってください」
シャキーンッ!
甘味が予約されるといきなり大人に戻った。
なぜこうなった。
「それでワープ装置ですが」
「いまから二十年くらい前に古代人の研究者が作り出したと記録にあります」
「その方は?」
「行方不明です。その……レプシトールは管理がガバガバなので」
レプシトールちゃん……どこまでも企業側の論理だけで運営してるよね。
ぶん殴るぞ~♪
「でじゃ引き続きゼン神族の動向の監視お願いします。できれば本拠地の割り出しお願いします」
なんか財閥のトップを拷問したけどわからなかったんだって。
拷問が合法なのか~。そうか~。
俺は考えるのをやめた。
というわけで次。
今度はベルガーさんのところへ。
短距離ワープの件でレプシトール側に提供してもらった資料を見てもらってる。
「ども~、進捗どうですか?」
「これは陛下。どうやら開発者は我々の仲間のようですね」
「この資料だけでわかるんですか?」
普通の論文資料だ。
論文用の文書作成アプリで作られてる。
「いえ、文章が知り合いのものそっくりですので」
「というと?」
「故郷の同窓です。ほらここ、誤植があるでしょ。彼の特徴です」
たしかに「もちろん」が「もろちん」になってる。
ふへー。
そういうのでわかっちゃうんだ。
「古代人と言っても現在では技術の大半が失われてます。やつはワープを不完全ながら復活させたようです……歴史が専門の私ではできないでしょう。恐ろしい才能です」
なるほど。
結局わからず保留。
……って思うじゃん。
でもさー、ゼン神族は俺をどうしても抹殺したかったのだ。
それはレプシトールの端っこ。
パーシオンとの支配領域が重なる隅っこに突如として現われた。
そう、現在建設中の移動要塞と同じコンセプトの巨大兵器だった。
経済再建中のレプシトール、パーシオン両国はなけなしの艦隊を派遣。
特にパーシオンは俺が殺しにやってきたと大騒ぎ。
ぶぶー。まだ建設終わってません~。
外務省と軍、特にイソノが問い合わせで謀殺される。
俺たちは食堂でクロノス国営放送を見ながら、自分たち用に注文したケーキを食べてた。
チョコのプレートは『レオのあほ』。
プレートは欲しそうにしてたシーユンとワンオーワンで半分こ。
マジパンのにゃんこはタチアナに。
イチゴはクレア様がさらに増量。
クロノスの農家に作らせたブランド品。
決して船の水耕栽培施設で無限に作れるアレではない。
カラースプレーはキロであるので「勝手にとっておくれやす」と置いてある。
タチアナがかけまくってた。
レンが用意してくれた紅茶を飲みながら観戦。
といってもいきなり攻撃してくるわけじゃないだろう。
特にパーシオンはお荷物確定なので占領したくないだろう。
一応現在は国籍不明機。
まずは警告から。
「ここはレプシトール、パーシオンの境界である! 貴船の所属国籍と責任者の名前を答えよ!」
「我らはローザリア帝国」
知らない子である。
他国とベルガーさんに問い合わせ。
レプシトール、パーシオン、ラターニア、太極国から「知らない」と返事が返ってきた。
首をかしげてるとベルガーさんから連絡がある。
「ローザリアは銀河の端にある国家です。他国とあまりつきあいはありません」
「大国でも知らないの?」
「距離が離れており付き合いもありませんので。ただあのへんは小国だらけで、その中の一国という感じでしたが……」
あー、そういうことか。
バトルドーム加盟の小国みたいなもんか。
俺たちは付き合いあるから知ってるけど、太極国くらい離れるとつき合いないもんね。
クロノス人も小国になると解説ないとわからんもんね。
地理専攻なら知ってるってレベルかな。
「クロノス王と会談を望む」
あー、うん、はい。
でもそれ、レプシトールやパーシオンくんに言っても、「クロノスに問い合わせします。永遠にお待ちください」で終わりだよね。
いきなり両国とも緩衝地帯として役に立ってるな……。
役に立つってことは保護しないといけなくなったわけで……。
あれよ。義理は果たせる範囲でちゃんと返さないと俺の信用が落ちるのよ。
任期制の首相とか大統領なら後の政権に押しつけることもできるが、王様じゃその逃げは使えない。
あー、もうしかたないな~。
お仕事しますかね。




