第六百四十三話
地下の住民、京子です。
レオくんの嫁候補としてパパ上に送りこまれて、はや二年ちょい。
私の生活は……充実していた。
愛機を壊しまくるレオが王様になってからと言うもの、修理に追われる日々は卒業。
好き放題開発しまくる生活がやってきた。
ふへへへ。楽しいよ……。
レプシトールのワープ装置の実験も楽しい。
だんだん装置の実態が見えてきた。
これは安全な装置ではない。
約0.1%ほどの確立で次元の狭間から出られなくなる。
何度も繰り返した実験、缶詰を短距離ワープさせる実験では、同じ確率で失敗した。
どうなるかというと、缶詰は出てこない。
亜空間なのかブラックホール的などこかなのか?
とにかくワープ前の物体は消失した。
こんなもの人間に使えるはずもない。
命の価値が限りなく安いレプシトールならではの戦法だ。
この実験のデータを帝国の大学教授に送る。
私はまとまった論文を書くような教育は受けてない。
なので共同執筆という形で教授に論文作成してもらってる。
教授も外宇宙のテクノロジーのリバースエンジニアリングの生データを入手するなんて私と組まなければ不可能だ。
なのでカミシログループ研究員兼銀河帝国軍技術士官という地位を最大限利用させてもらってる。
カミシログループの業務で開発した特許料の大半を大学のラボに寄付してるので文句も出ない。
教授は会議のたびにニコニコ顔なので嫌われてないと……思う。
ヴェロニカちゃんからもらった領地はパパ上に管理してもらってる。
伯爵級の惑星で貨物の中継基地として使われてるらしい。
なので私はお金を気にせずに生活できてる。
レオくん?
お嫁さんいっぱいいるから私はどうでもいいかな?
さて、ワープ装置だが私のご飯を運んでもらうのに使ってる。
カップ麺だ。
栄養に関しては問題ない。
と思って毎日カップ麺を食べてたら一日一個までにされてしまった。
なのでラボのある地下の廊下に冷凍食品の自動販売機を設置してもらった。
無料だ。
お昼になると誰かが作ったご飯を女官さんが運んでくれる。
お風呂も寝室も地下にある。
すばらしい。
「大野京子少佐。運動の時間です。外に出てください」
わずらわしいのはAIで生活が管理されてることだろうか。
適切な運動に睡眠に入浴……あと三食の食事の時間を完全に管理されてる。
冷凍食品とカップ麺で栄養素が足りないと判断されると、女官さんが完全栄養食を持ってきてくれる。
カロリーは適切量に調整される。
実際、健康的な生活は研究時間は減少するが効率は数倍に跳ね上がる。
それはわかってるのだが……私は夜型なのだ……。
昼間は寝ていたい……。
けど昼寝するとAIに起こされる。
健康が強制される生活だ。
運動着に着替える。
士官学校の小豆色の芋ジャージだ。
私は士官学校生ではないが、書類のマジックで卒業したことになってる。
中卒でパパ上のところでニート生活してたのに、知らない間に士官大学校の大学院を卒業してて、いまは軍の研究者である。
お給料をもらえるので……どうでもいいか。
「ランニングを開始してください」
「は~い」
ランニングをする。
走るのは苦手だ。
私は肉体労働に向いてないのだ。
すぐに息が上がる。
でも……これでも、走れるようになったのだ。
最初は500メートルを完走するのも難しかった。
いまでは普通に走れるようになった。
あくまで普通だ。
「武装障害走! はじめ!」
「うおおおおおおおおおおおおおッ!」
30㎏もの装備をつけ銃を持った男子が宮殿の練兵場の障害物コースを駆け抜ける。
本気の走りで垂直の壁を登り、崖をロープで登り、堀に飛び込む。
ほふく前進で網をくぐり、不安定な足場を駆け抜け、ロープを渡る。
レオくんたちもさすがに息を切らせてるが余裕たっぷりだ。
化け物かな? 無理……。
おまけに走り終わった隊員は荷物を置いてバスケットボールをしてる。
ご飯食べたらサッカーをするらしい。
……本当に人類なのかな?
格技系の部の人たちなんて、その辺の拳より大きい石を拾って自然石割り大会を開いてる。
バスケットボールが一段落して暇になったレオくんも自然石割りに加わる。
「下の石にぶつけるの禁止な!」
そう言ってレオくんは手刀で自然石をたたき割る。
男子たちも思い思いの方法で石を割っていく。
バトルグローブじゃない。
素手で割ってるのだ。
……本当に人類なのかな?
こういうのを見るかぎり、私はレオくんのところに嫁ぐのは無理だと思う。
理系っぽいから話は合うんだけど、なんか違うんだよね。
ほら、自然石割り大会が終わったら腕立て伏せ大会してるし……。
やっぱりレオくんは体育会系だと思う……。花柄エプロンなのに。
男子との体力のあまりの差に打ちのめされながら地下に戻る。
やはり結婚は考えずに研究で役立とう。
そうだ。
レオくんの嫁は無理だ。
あの明るくキラキラしてる感じが無理!
シャワーを浴びて戻ると女官さんがご飯を運んでくれた。
給養当番手作りのご飯だ。
私は料理できないので免除されてる。
炒飯と鳥胸肉とピーマンのカシューナッツ炒め……。中華スープ付き。
いただきます……お店レベルの味だ。
ピーマン嫌いなのに素直に美味しい。
おしゃれなカフェとかチェーン店じゃない。
町中華とか地方の食堂味。
うーん……今日の当番はレオくんだな……。
また腕を上げたか。あの花柄エプロン。
そんなレオくんも仕事が忙しくなると、連日焼きそばになるので今日は当たりの日。
レオくんはお嫁さんに欲しいけど、お嫁に行きたくないんだよね。
あの明るすぎるのが……どうしても無理。
などと考えてるとAIから通知が入る。
「論理モデルのシミュレートが完了しました」
「はーい」
「ご飯を食べ終わってからにしてください!」
「はいはーい」
AIに叱られた。
ご飯を食べ終わってシミュレーションの結果を見る。
レプシトールのワープ装置の改良だ。
現状では安全とは言えない。
使うとしてもカップ麺の転送がせいぜいだ。
なんとか改良できればいいが。
人間が使わなくても貨物の転送など利用方法は多岐にわたるはずだ。
「うーん……うん?」
一つだけ良い結果が出たものがあった。
どうやって作ったかさえわからない銀河帝国とこちらの銀河を結ぶ星間移動ゲート。
その現状わかってる範囲のモデルを組み込んだものだ。
「レプシトールの技術はゼン神族由来……?」
一人で考えてもしかたない。
私は技術レポートを報告するのだった。




