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第六百四十話

 レオ・カミシロ・クロノス。

 武勇と知略を兼ね備えてると評判の男だ。

 数百年もの戦いを経て我らが追い払ったゾークを討ち果たした銀河帝国。

 その皇帝の配偶者にしてゾークマザーを倒した英雄。

 鬼神国人すら認める圧倒的武勇。

 それでありながら私たちラターニア人を理解しようとする外交上手。

 外交手腕だけでレプシトール、パーシオン両国を手に入れた化け物……。

 そんな男の元に私は送り込まれる。

 私、アポリナーリヤ。通称ポリーナはラターニア王の娘だ。

 ただ王位継承権はない。

 ラターニア王になる前に結婚していた相手との間にできた子どもだからだ。

 ただラターニア王の娘ということで様々な優遇を受けてる。

 王族という最高の環境、最高の教育に、最高の友人……。

 実の母と引き離された以外は、なにもかも最高のものを与えられた。

 なにもかも贅沢なものだったのだろう。

 若くしてラターニア軍の中尉であるということも優遇の一つだろう。

 ただ特別な優遇には義務が生じるもの。

 とうとう優遇のつけを払うときが来た。

 王の血族としての役割、つまり婚姻政策の駒に使われるのだ。


「お前には自由でいてほしかった」


 ラターニア王、父上は私に何度も謝罪した。

 父上も君臨はすれど政治的には無力。

 平時では儀礼的な存在だ。

 私がクロノス王の元に送り込まれることに反対する力はない。

 私もいつかこうなるだろうとは思っていた。

 プローンの嫁じゃなかったことは幸運だっただろう。

 そんな私は案内されて食堂に……はて? 食堂?

 するとそこにいたのはクロノス王の最側近たちの姿だった。

 銀河帝国皇帝に太極国皇帝にゾーククイーンまで!

 芋ジャージをだらしなく着崩した聖女もだ!

 気が付かなかった……。

 なんだここは……最高会議の場所が……宮殿の食堂……だと。

 そして花柄エプロンでヘラヘラ笑う男性こそがクロノス王、レオ・カミシロ・クロノスだ。


「ラターニア軍パーシオン方面隊長。ポリーナです! 銀河帝国皇帝陛下並びにクロノス国王陛下にご挨拶申し上げます」


 私は敬礼した。

 それにしてもレオ様……たいへん顔が整ってる。


「あ、どもどもー。なんか食べてく」


 だが軽い。

 威圧感が全くない。


「はながら……いえ。失礼いたしました!」


 失敗した。失言であった!

 花柄エプロンのイメージが強すぎてつい口にしてしまった。

 そんな私にレオ様は「ケーキ食べる?」と声をかけてくるのだった。

 あ、美味しい。店で売れるわこれ。

 ……そんな私ではあるが邪険にされることもなく、ラターニアとの交渉窓口に任命。

 外交官扱いになった。

 ここまでは予想どおり。順調だ。

 レオ様は情に厚い人物と聞いてる。

 外堀さえ埋めてしまえばほだされるだろう。

 そして……いま……私は……。


「なぜに?」


 首都から離れた郊外にある馬のレース場にいた。

 競馬と言うものらしい。


「いやさー、クロノスの馬。絶滅危惧種なんだって。残ってるのは飼ってて地下に逃がしたのと被害のなかった惑星だけでさー。増やさないといけないのよ。でもクロノスの乗馬って伝統芸能で細々とやってるだけなんだよね」


「なるほど……それでレースですか」


「そう。最終目標は野生馬を増やすためだけどね。それには国民の理解が必要なわけ。犬猫ならわかるけど、王都じゃ馬は知ってても見たことある人少ないからさ、理解を深めるためにもふれあえる場所を作らないとね」


 子ども向けに乗馬体験などもできる施設だそうだ。

 レオ様が柵に近づくと馬がゾロゾロやって来る。

 一緒にいたクロノス王妃の一人、メリッサ様が笑う。


「あははははは! 隊長仲間だと思われてる!」


 メリッサ様の発言は本当だった。

 馬が挨拶に来る。


「おっす」


「ブフー」


「陛下の前じゃ大人しくしてますね……」


 飼育員さんがほほ笑んだ。

 馬たちはおすまししてるようだ。


「ラターニアじゃ競馬ってないの?」


「ございません。乗馬は伝統芸能として嗜まれているだけですね」


「ってことはポリーナさん乗れるの?」


「嗜む程度ですが」


「へー……乗る?」


「ええ、まあ陛下の命とあれば」


 乗馬は伝統芸能として嗜んでる。

 競技となれば難しいが、普通に乗ることはできる。


「俺も久しぶりに乗るかな」


「待って、隊長乗れるの?」


「だってうちの惑星、主な移動手段は軽トラと原付と馬だし。あと熊とか狼もたまに乗せてくれる。やると親と学校に怒られるけど」


「さすがバカ殿!」


 クロノス王の右腕と言われるイソノ卿が笑う。

 王をバカ扱いするのだからよほど信用されてるのだろう。

 信頼関係が厚い。


「あ、私も乗りたい!」


 今度はクレア様だ。

 農業惑星出身者という噂は本当なのだろう。


「リコちは」


 レオ様が新しく妃になったリコ様に声をかける。


「馬なんて乗れないよ! 乗ったことあるのは象だけだよ!」


「え?」


 象?

 あの象?

 あの大きな?


「リコちのとこはそうなんだ」


「うん、惑星全体で象を保護しててさ。うちなんかは象を何頭か飼ってるわけ」


 象を……飼ってる?

 き、気にしたら負けかもしれない。


「学校乗ってくと怒られるんだよね」


「わかるー、うちもー、熊に乗っていったら全方面から怒られ……」


 わからない。

 レオ様が何を仰っているかわからない。


「それはレオくんだけかな」


「うそーん!」


 よかった。

 銀河帝国人でも理解できないもののようだ。


「嫁ちゃんは?」


 レオ様が銀河帝国皇帝ヴェロニカ様に話かけた。

 夫婦仲が良いという噂は本当だったか……。


「できぬ」


「あら珍しい。一緒に乗る」


「ふむ、いいぞ」


 レオ様が皇帝陛下を乗せて自分も馬に乗る。

 ゆっくり中を一周した。

 私も馬に乗る。

 いい子だ。よしよし。

 メリッサ様も馬に乗って一周。


「子ども向けにポニーみたいなのも必要かもね」


 やはりクロノスは侮れない。

 復興をしながらもこういった動物や自然資産の保護を推進してる。

 文化的に進んだ国なのだろう。

 しばらく馬に乗っていたらいい運動になった。

 これは観光として話題になるかもしれない。

 馬から降りるとレオ様はある人物を紹介してくれた。


「それでさー。ここからが本題。競馬場の騎手。銀河帝国軍から元騎手の人をスカウトしました!」


 後に私はこの日、クロノス王の深謀遠慮に気づけなかったことを後悔することになる。

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― 新着の感想 ―
>クロノス王の深謀遠慮に気づけなかったことを後悔することになる。  ノリでやってますwww
>理解を深めるためにもふれあえる場所 理解を深めるためにモフれる場所 かと思った
どうなるかはわからんけど、性格のいいお嬢さんやな。
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