第六百三十九話
どうもコニチワ!
銀河忍者カワゴンにゴザル。ニンニン!
いま拙者は必死こいて逃げてる。
バトルドーム行きの貨物船に乗り込み、そこから気合で銀河帝国に入国。
実家に潜伏する予定だ。
嫌じゃ嫌じゃ!
勝手に支配領域拡大するのは嫌じゃ!
自分から積極的に動くという概念がないパーシオン人の面倒を見るなんて嫌じゃ!
オーゼン人も大概だけど、パーシオン人はその遙か上を行く存在だからな!
そうか……パーシオン人、なにかに似てると思ったけどオーゼン人の煮詰まったやつだ……。
ぜったいに面倒見たくない!
コンテナに隠れてれば見つからないはず……。
くっくっく、バトルドーム行きの船をチャーターしてやった!
貨物便で物資は【劇場版ファッQさん~人妻迷宮の謎~特別限定版BOX】。
と見せかけてコンテナの中は俺の居住空間になってる。
おふとん! ゲーム! 勝利!
他のコンテナは食料や水、着替えなどの逃走用物資とダミーだ。
倉庫区画はクルーと完全に切り離されており、何を運んでるかすらわからないという仕様だ。
完璧だ!
完全勝利だ!
本気で逃げようとした俺を止められるはずねえだろ!
よね……。
「陛下がいたであります!」
「にゃーん!」
「なぜだー!」
いきなりワンオーワンに発見された。
「かくれんぼ楽しいであります!」
「ぐッ! 煙玉!」
煙玉と言いながら発炎筒を放り投げ。
さらばだー!
逃げ。
【発煙検知。火災警報! 火災警報!】
あ……。
結局、これでやってきたピゲットと俺の近衛騎士団に捕まり、死ぬほど怒られた。
賠償金もたくさん取られ……ってうちの会社じゃん!
保険会社もうち。
保険会社に賠償金払うのは俺。
賠償金も別に痛くない程度の金額。
なにこの自分の足を食べるタコ状態。
世間様は「まーた王様がなにかやってる」程度の認識だ。
だって荷物俺だもん。
ただ個人的に貨物船クルーには見舞金を払う。
わかるな?
こういう細かい気配りが後の処刑を回避するのだ。
さて、ワンオーワンに逃亡開始からわずか一時間で発見されたのよ。
拙者のレプシトールニンジャとしてのプライドはズタズタ。
もうニンジャやめる!
「いや一時間で貨物船に乗り込んだのすごいでしょ。特殊部隊でも無理だよ」
クレアがため息ついた。
なおワンオーワンは【UMAカワゴン捕獲賞】として段ボール箱いっぱいのお菓子をゲットした。
それをタチアナやシーユンと分けてる。シェアできて偉い!
ルーちゃんも輪っかのパッケージに小さなチョコがいくつも入ってるお菓子をもらってご満悦だ。
小さな子にお菓子あげて偉い!
子どもの面倒見られるの偉い!
ということでボーナス。さらにお菓子ドーン!
「ふおおおおおおおおおおおおお!」
くくく、ハンバーガーの形したグミとか「お前らどこに向かうん?」みたいな駄菓子詰め合わせセットだ!
なお味は……なんでこういうグミって味は微妙なんだろうね?
「もー! レオ、下の子たちに甘いんだから!」
クレアに怒られたので袖の下。
「お高い焼酎にビールテイストのアレの原液と衛生検査済みあたりめセットをば」
「もう、しかたないわね」
笑顔で袖の下を受け取る。
クレアもニコニコである。
「あはははは! 買収した!」
「そんなメリッサさんにはこれ」
コーヒーリキュールを渡す。
牛乳と混ぜて甘ーいお酒様。
あといちごのお酒とか梅酒なんかも渡す。
「一緒に飲もうぜ!」
我ら甘党。
これだけでわかり合える。
「旦那様……」
「お酒飲まないレンにはステーキセット!」
レンにっこり。
そしてリコち。
「あ、はい。いつものビールと乾き物セット」
「ねえ、なんで私には雑なのかな?」
「だってレプシトールで同棲してたときいつもそれだったし」
「そうなんだけどさ!」
「はいサラミ」
「うわーい! って違う!」
そして最後に嫁ちゃん。
「くっくっく。嫁ちゃんにはこれだー!」
ばーん!
手作りケーキ!
イソノが運んできた。
ケーキには花火が乗っててパチパチ火の粉が輝いていた。
「……婿殿」
嫁ちゃんは真面目顔をする。
「なあに?」
「……このケーキの意味は?」
なんか目に圧がこもってる。
「ああ、うん、レプシトールとパーシオンちゃん、銀河帝国にプレゼントしちゃおうかなって?」
「却下」
「ぎゃばー!」
「飛び地などいらぬわ! プローンの惑星だけでも管理が大変なのに!」
「やっぱりだめかー」
「ダメに決まってるじゃろ! ケーキはもらうがな! ふむ……婿殿……」
「なに怖い顔して……」
「腕を上げたな。店出せるぞ。ニーナに手伝ってもらったのか?」
「いや今回は俺単独」
暇なときにケビンと一緒にニーナさんに製菓技術習ってたけどね。
その……ほら……俺って根が雑だから勘で作って失敗するのよ。
するとイソノたち男子がゲラ笑い。
「とうとう花柄エプロンが覚醒した!」
「花柄エプロン言うなバカチンども!」
なんていつもどおり笑ってたのね。
そしたら食堂に女性が入ってくる。
まー、すっごい美形。クールビューティーのラターニア人だ。
「ラターニア軍パーシオン方面隊長。ポリーナです! 銀河帝国皇帝陛下並びにクロノス国王陛下にご挨拶申し上げます」
バシッと敬礼。
「あ、どもどもー。なんか食べてく」
「はながら……いえ。失礼いたしました!」
「ほら陛下。やっぱ外の人も花柄が気になってんじゃん」
「いいじゃん、これ使いやすいんだからさ! ねー、なに食べる?」
「い、いえ……その」
「ほいビール。そのへん適当に座って。よっしゃ、今日は歓迎会な!」
「婿殿! 話は終わっておらんぞ!」
「えー、だってパーシオンどうすればいいのよ~」
「だから好きにせよ!」
「好きにしたくないのに~!」
するとポリーナさんがつぶやいた。
「が、学生サークルのノリで会議してる」
「そりゃみんな学生時代からの同期だし。研究者や文官の偉い人はパイセンだしねえ。あ、ポリーナさんケーキ食べます?」
だって実態がベンチャー企業だもん。うちの国。
このいつもの飲み会の隅っこで、ちびちび日本酒飲んでたレイブンくんは「ようこそここは地獄だ。あきらめろ」という顔をしてたという。




