第六百三十七話
なぜぇ……。
超弩級移動要塞カミシロ。
俺の戦艦だと思わずにスルーしてた。
公爵会が好きそうな大きな船である。
いやそんなアホなもの作るなら数をそろえろとあれほど……。
俺の個人プロジェクトだったはずなのに、費用はクロノスと銀河帝国持ち。
銀河帝国では「あ、あの英雄レオ・カミシロの!?」と国民がわいた。
複数の重工業の主だった企業がプロジェクト参加を表明。
クロノスでも主要企業、そりゃ惑星級だから建築会社も入るよねっていう話で知らん企業まで……なんでパチンコの企業まで?
あ、中にパチンコ屋入れる? はい。
もう気づいたときには経済への影響が大きすぎて「それ違う! 小さいの!」って言えなくなってしまった。
だって銀河帝国だけじゃなくて、こっちの銀河でも製造してる宇宙港周辺の惑星に人が押し寄せたもの。
というかまずは宇宙港の建築からである。
スーパーウルトラ大規模プロジェクトで失業率は劇的に改善。
そりゃねー……。
建築業まで関わるじゃん。
近くの惑星に労働者用の住宅建つじゃん。
人口増えるから宇宙港に王都惑星クロノスへの定期便できるじゃん。
定期便増えて物流も確保できるから各種流通業が来るじゃん。
子ども増えるから総合病院やら学校やら私塾やらできるじゃん。
小児科と歯科クリニックもできまくるじゃん。
人口増えるのを見越して物流倉庫とか工場とか地元の就職先できるじゃん。
各種免許が必要だから教習所や職業訓練校ができるじゃん。
いままで外に出るしかなかったマイルドヤンキーが地元で子育てするじゃん……。
銀河帝国の大学まで分校作るじゃん……。
ベビーラッシュでこの循環がさらにブーストするじゃん……。
プロジェクト止められないよおおおおおおおおッ!
ということでどう考えても夜逃げに適さない国家プロジェクトが進行したのであった。
でさー、その間に使うように中古の戦艦もらったのね。
……士官学校の実習船やんけ。
俺たちが乗ってたのは爆発したから同じものじゃないんだけど、なつかしい。
これはせっかくなのでみんなに相談することにした。
なつかしすぎて笑う。
「こんなお風呂小さかったっけ?」
クレアがため息をついた。
「いま考えると女子のこと考えてねえよね」
メリッサも渋い顔してる。
「これじゃ毛並みが悪くなってしまいます」
レンも嫌そうな顔だ。
あ、はい。
居住スペースに金かけます。はい。
「ランニングは廊下走ればいいけどさ、トレーニングルーム狭くね」
イソノが不満げだ。
ですよねー。
筋肉バカのための施設を増やして……。
「なーレオ、俺たちは雑魚寝でいいじゃん。士官用の居住施設減らして水耕栽培施設を最新のにしねえ? 旧型は清掃がめんどうなんだよ!」
それなー。
あれは掃除当番という苦行のためにわざわざ旧型にしてるしな。
掃除が全自動のに変更と。
「CTとMRIと超音波お願い」
ケビンが主張する。
全身スキャナーだけだと見つけられないのあるからね。
「うわーお、昔からある機械なのにお高い!」
「死ぬよ」
「はい?」
「隠れた出血とか見つけられなかったら死ぬよ」
「喜んで入れさせてもらいマッスル!」
外科医の迫力に一番お高いのを即決。
こんなにコンパクトなのね!
命のお値段だと思うと安いわ!
こんな日常……だと……思うじゃん。
それがさー、これにパーシオン側がどう反応するかなんて考えてなかったのよ。
すそれがわかったのはカミシロの建設が始まって一ヵ月後だった。
怒濤の書類作業を終え、仮眠。
きなこちゃんの添い寝でスヤー。
「起きてください!」
レンに揺さぶられる。
「イモ!」
「なんの夢ですか! それよりたいへんです! 食堂で幹部の皆さんがお待ちです!」
「ななななな、なにがあったのよ!?」
「パーシオンです!」
「またか、あのバカ国家!」
きなこちゃんに「行ってきます」のチューをして食堂へ。
すると対策会議が行われていた。
あ、幹部だけじゃねえや。
文官も集まってるからガチのやつだわ。
席に着くとクレアが資料を送ってくれた。
「パーシオンの主力艦隊がクロノスが先日奪取した惑星に向かって出発しました」
「ほーん。また少し攻撃したら退却するんじゃ?」
パーシオンは、やるのかやらないのかハッキリしない連中だ。
また挑発でだけで終わりじゃなかろうか。
今度はイソノ。
「外交諜報部からの報告だ。超弩級移動要塞カミシロの建築計画でパーシオンは上から下まで大騒ぎだ。一年後にパーシオンが滅亡するって見解が優性だ」
一年で建造できるわけねえだろ!
「夜逃げ用の戦艦だったのに!? つうかどこ情報よ?」
「クロノスだけなくてどの国も言ってる」
「……なんてこった」
特大の軍事的挑発だったのね。
『オラオラオラオラ! 一年後にテメエら滅ぼしたるからのう!』
そう言ってるのに等しかった。
「なんで船の製造計画通っちゃったの!」
軍事的挑発だったらちゃんとツッコミ入れてくれないかな!
俺が知ったの止められなくなってからだよ!
「え、だってパーシオン滅ぼすの既定路線じゃん!」
「ちぎゃうのー! クロノスでサプライチェーンを丸ごと奪って無力化するつもりだったのー!」
レプシトールがいなければ文化的鎖国状態の国でしかない。
経済圏を奪って放置すればいいだけなのだ。
ついでにゼン神族にお荷物押しつけて動きを鈍くできる。
滅ぼすんじゃなくて、全体がうっすら不幸なまま存在しててほしかったの!
レプシトールがいなければ過剰在庫抱えてるだけなんだから!
「いつかは爆発してただろ。いいからこれから先の話をしろ!」
「ぴぎゃああああああああああああああッ!」
すると外交部の文官が叫んだ。
「パーシオンが全面戦争を宣言しました!」
「いつも言ってるやーつ!」
「今回は本気のようです。投入できる全戦力をクロノス側に配備する計画が承認されました」
「なじぇえええええええッ!」
「あきらめろ征服王」
「それとラターニア側から今回の件で人員を派遣すると通知が」
嫌な予感しかしない。
「ラターニア軍のエリート士官が抜擢されたようです。おや若い女性ですね!」
「ぎゃあああああああああああああッ! 最悪のタイミングでラターニアが送り込んできた!」
こうして俺の預かり知らぬところでパーシオンとの決戦が近づいていた。
いや本当に。どうしてこうなった?




