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第六百三十六話

 さーて、長くクロノスにいるといろいろあった。

 エッジの惑星がギャンブルで有名になったり。

 エッジの惑星の住民が「ギャンブルするより胴元になった方が儲かるんじゃね?」という事実に気づいてしまったり。

 エッジの惑星の住民が爆速でカジノの設置許可を取って地元住民で組合作って運営したり。

 エッジの惑星の住民が理系教育に力を入れはじめたり……。

 いやギャンブルって高度な数学の結晶じゃない?

 胴元やるにも最低限の数学力が必要なわけね。

 ほら、完全なサイコロをプログラム上で再現するだけでも複雑なプログラムがね……。

 スロットマシンのリールだけでも数学的なあれこれがあるのだ。

 ギャンブルの『運』を再現するには高度な数学な必要なわけ。

 そもそもスロット機作れないとダメだって話にもなってくるわけ。

 もちろん人力のゲームのディーラーなんかの養成もね。

 というわけで、エッジの惑星は手つかずの自然とカジノがある観光惑星になったのである。

 目の色変えて数学と工学に打ち込む彼らを見てエッジは渋い顔をするのだった。

 そして俺の方も。

 執務室で仕事してるとメリッサがやって来た。


「隊長いま大丈夫?」


「へーい。なんかあった?」


「本家親父に譲っていい?」


「お、おう、なんかあった?」


「管理したくない」


 いつか言うと思ってたが……。


「もっと詳しく」


 メリッサは言葉が足りない。

 だから誤解されることが多いのだ。

 最初にブスとか言われてたのも知らないところで男子を傷つけたんじゃねえかと予測してる。

 スパーリング相手の男子に「弱っ!」とか言ったんじゃなかろうかと。

 男子は繊細なのよ……。

 まー、あんなランキングやったら、男子どもはイーブンどころかギルティなんですけどね!


「まーた、反乱の兆しがあるんだって。いくら売上がいいって言っても、常にいられるわけじゃないから責任取れないよ。親父なら観光地の経営も得意だし。ほらおれ……あたしは隊長の妻でクロノスの何番目かの王妃なわけじゃん。正式に親父に本家の頭領になってもらって、実家からお小遣いもらう方が楽だなと……」


「ちゃんと説明すれば説得力あるのに!」


「考えを整理しないとわかんないよ! 隊長と話せば理屈を整理してくれるじゃん!」


「つまりメリッサは家と領地が遠すぎるから、親に家督を譲与したいと。公爵位は?」


 妻たちは銀河帝国での結婚式後に公爵位が生えてくる予定だった。


「そっちはテキトーでいいや。一度クロノス王の妻になったんだし食うに困らないよ」


「まー……最悪クーデター起きたら貨物船の乗組員でもやって稼ぐわ」


 銀河帝国軍の輸送船の免許持ってるし贅沢しなきゃ大丈夫でしょ。


「隊長が追い出されることはないと思うよ。ま、追い出されそうになったらクロノス軍の貨物船パクればいいじゃん」


「ソレダ!」


 俺たちの会話を聞いてた近衛騎士団の隊員は頭痛そうにしてる。


「なにか?」


「僭越ながらクロノス王陛下に申し上げます。盗まなくても個人用のを購入されればよろしいのでは?」


「ソレダ!」


 メリッサと海賊ギルドの中古船の注文サイトを見る。

 おっと定員二十名の船が売ってる。


「メリッサ支払いどうする?」


「十年ローン使えるかな?」


「レオ様のポケットマネーであれば現金一括で買えます。そもそも! メーカー正規品の新造船の購入ができます!」


「いやほら、もったいないから中古かなと」


 ローンの金利で多少損するけどさ~。

 中古を十年ローンがリスクが一番少ないかなと。


「お願いですから新品でお願いします!」


「へーい」


 ほいほい一括で新造船と。

 じゃあ夜逃げ用の輸送戦艦を注文。

 家財道具持って逃げるヤツ。

 これはカタログスペックでいいか。

 ……そしてバレないように海賊ギルドに俺用の中古輸送船を注文。

 カワゴン専用機と。

 まずは新品の船で逃げて、どこかで中古に船に乗り換えて銀河帝国まで逃亡。

 ……パーフェクト!

 ということで二隻注文。

 ゴソッとお小遣いが減ったが気にしない。

 このお小遣い、ある程度使わないと怒られるんだわ。

 使わなかった分は自動的に株とか土地買われて次の収入になって帰ってくる。

 そして使わなければならないノルマだけが増えていく……。

 しかも多額の寄付禁止。ただし冠婚葬祭はセーフ。

 もはや意味わからん。

 無駄遣いすると国が滅ぶって言ったの誰!?

 使わないと怒られるんですけど!

 車の趣味ないからなあ。

 あっても移動は宮殿が指定する車両だし。

 結局、三ヶ月ごとに私用の端末が最新機種になるだけである。

 なんたる理不尽!

 俺個人の税務とか法律とかのバックオフィスやってくれてる事務所に送る。


「ふう、なんでこんなに面倒なんだろ……」


 船籍の登録とかいろいろ。

 海賊ギルドの方はアマダ警備の偽造ナンバーにしとこ。

 有事の際にストックしてあるヤツ。

 はははははは! この銀河忍者カワゴン! 虜囚の辱めは受けぬ!

 捕まえられるもんなら捕まえて見やがれ!

 というくっころシミュレーションをして夜逃げの準備完了。

 あとは両方の船の内装を新婚気分でメリッサと選ぶ。


「和室欲しい!」


 完全同意!

 和室いいよね和室。


「掘りごたつ作るか」


「いいね!」


 最初はいいんだけど、何回か堪能するとセッティングが面倒にる。

 結局掘りごたつの上から普通のこたつを設置される運命のアレである。

 だけど最初はいいのよ。

 最初はね……。

 いいもん掘りごたつ作るもん。

 部屋広いし。


「食堂は業務用最新機種をそろえてっと……」


「いいね、隊長の作ってくれるご飯好き」


「ぬははははははー!」


 テンション上がってきた。

 夜逃げを快適に。

 中に遊ぶとこ作っとこ。


「ヨシ!」


「なにがヨシなのじゃ?」


 おっとぉ……。


「なぜ嫁ちゃんがいるとですか?」


「暇になったから遊びに来たのじゃが?」


 なんてこった。


「それはなんじゃ?」


「夜逃げ用の船の内装」


 嫁ちゃんがプーッとふくれた。


「まーた言ってるのか! 逃げられるわけなかろう! 支持率100%じゃぞ!」


「でもさー! 新卒就職失敗してクーデター起こされるのって革命の定番じゃん!」


「クロノスも銀河帝国も上が死んでグラフがピラミッド状になったのじゃ! しばらくは不景気など来ない!」


「それはそうなんだけどさー。戦争に負けたりとかあるじゃん!」


 戦争に負けてウルトラ不景気。

 あるあるなのよ。

 ほら戦争ってギャンブル要素強いから。

 俺はいまのところ勝利してるから株式市場も上昇するけどさ……。

 負けはじめたら下がる一方なわけね。

 いつ負けるかわからないじゃん。

 俺、べつに指揮官として有能なわけじゃないし。


「婿殿が一番得意なのが戦争じゃろが!」


 ギャバー!

 ち、違うもん!

 で、電気工事と重機の運転も得意だもん!


「もうあきらめよ!」


 ギャバー!

 結局、嫁ちゃんに怒られ戦艦はあきらめ……。


「戦艦は買うがよい」


 あんれー?


「婿殿は国王じゃろが! 専用戦艦の一つや二つ用意しても怒られん!」


「へーい。嫁ちゃん、部屋は和室と洋室どっちにする」


「一緒に寝るのじゃ洋室で大きなベッドを入れるのじゃ」


「へーい」


「ねえねえ、ヴェロニカちゃん。ドレッサーってこの大きさでいい?」


「メリッサ! 自分で着替えようとするな。こういうのは専用の部屋を作って女官にまかせ……だからもっと大きな部屋じゃ! ええい、自分でやろうとするな! 内装の専門家にまかせよ!」


 こうして銀河帝国皇帝陛下の厳しい指導の下、戦艦を新調するのだった。

 そうなのよ。

 今思うと……この夜逃げ用戦艦が引き金となったわけね。

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― 新着の感想 ―
あー、王専用の決戦艦でも作ってしまったか。
作ってるものの規模が予想の数倍なせいで難癖とは言えないわ……
ごくふつうに、軍事独裁政権の専制君主が予算に糸目をつけず建造する 専用戦艦私物化行動…と書くとスゲーあかん臭プンプンなんだけど、 国王陛下御自ら手掛ける、クロノス億千万年の大計にして救国戦艦秘密建造計…
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