第六百三十五話
まずはベルガーさんのとこに行く。
アリッサとエッジと一緒にいた。
アリッサとエッジは結婚したんだよな。
こないだ長期休暇取って地元に戻って結婚式挙げてきたんだって。
地元の星を領地にもらって里帰りして結婚式。うーん立身出世。
といっても銀河帝国みたいな派手なヤツじゃなくて領家が家族になるよ的なやつだって。
それはいいんだけど、「うちの幹部だから戻ってきたら銀河帝国でも大々的に結婚式やろう」って言ったら本気の顔で拒否された。
絶対嫌でそれやったら実家に帰るからと脅されたのであきらめた。
帰ってきたときに実家の惑星が開発されまくってショッピングモールができたらしい。
もう原形留めてなかったって。
ただ結婚式は地元の形式でやったみたい。
補助金入りまくって老人が毎日病院かパチンコ屋に並んでるらしい。
元王様も平日はパチンコ屋、休日は競馬場だって……。
なんか申し訳なくなったので「ごめんね」って謝っておいた。
「しかたないですよ……」
そう言うエッジの顔はなんだか大人に見えた。
ほんとごめん。
いまから謝っておく……だって来年度に競艇場とカーレース場もオープンするって、カミシログループが……。
ちゃんと公営ですよ。エッジくんの承認書もほれ。
あ、もうあきらめてる。はい。スマンス。
で、ベルガーさんね。
ゼン神族の研究をしていた。
「どもども~」
「これは国王陛下」
「エッジもいて珍しい組み合わせッスね」
するとエッジがまた微妙な顔をする。
無口なエッジのかわりにアリッサが教えてくれる。
「ベルガーさんの分析が終わったら報告しようと思ってたんですが、レース場の整備をしてたら遺跡を発見しまして」
「ふぁ?」
資料を読む。
やべえ困った。
建築会社の報告書だ。
遺跡の写真とメモだ。
「これ壊しちゃだめなやーつ!」
「わかってます。なので工事は一時中断してます」
「あ、うん、ちょっと待って」
「焦らなくても大丈夫です。まだゼン神族関連とは限らないので」
そりゃそうか。
エッジとアリッサの地元は、ほぼ違う文明状態だもんね。
「そういう状況なんで、うちの騎士団と村の住民に守らせてます」
エッジは本当に苦々しい顔で言った。
そもそもオートレース場自体作るのが嫌なのだろう。
でもさー、自給自足状態の集落で強制的に経済回すのってギャンブルと工場しかないのよ……。
工場で稼いでもらって、安いギャンブルで吐き出させる。
夜のお店でもいいんだけど、新しい住民との軋轢がね。
その点、お馬さんならプレイヤーを育成できる。
ボートとレースは運転免許の奨励になるわけ。
漁師になるんでも、農家やるんでも、工場勤めでも生産量が求められる。
つまり輸送で必要になるわけ。
ゆくゆくは金がかかる飛行機のパイロットや宇宙船乗りの育成しないとな~。
そっちは士官学校が最短なんだわ。
それらもぜーんぶ公金。
免許取得も無料。
つまり外と接触を持った以上、弱小地方の補助金漬けは避けられないわけで……。
そうすると地方は帝都に従わないわけにはいかないわけ。
その構造自体が嫁ちゃんの権力基盤を盤石にしてる……。
世の中の仕組みってよくできてるのね……。
「ベルガーさん地方の公金漬けの解消ってできます?」
「銀河帝国の経済学者に聞かれては?」
「ですよねー!」
まー、現状不満だらけになるなら妖精さんがテキトーに調整するか。
放置してるんだから文句はあるけど幸せなのだろう……。
ベルガーさんがニコニコしながら答えてくれる。
「それで陛下。分析では十中八九ゼン神族の遺跡ですが……」
「ですよねー!」
そういうオチだと思ってた!
嫁ちゃんに連絡。
「嫁ちゃん!」
「どうした婿殿」
嫁ちゃんはいつものジャージで眠そうに答えた。
仮眠とってたみたい。
「エッジの地元でゼン神族の遺跡が見つかったって!」
「ぶッ! な、なんじゃと!」
お目々ぱっちり。
「えっとアリッサ、危険性は?」
会話の瞬発力があるアリッサに報告はまかせる。
「地元の軍が警戒してるけど異常なさそうだよ」
「べべべべべべ、ベルガーはどう思う?」
あわててる。
そりゃねー。
嫁ちゃんからしたら国内に問題ないからクロノスにいられるわけだしね。
「稼動してない遺跡のようです。『鉱山閉鎖につき立ち入り禁止』とあります」
「警備ロボットの類いは?」
「ドローンで調査したけどないみたい」
当時の民間会社の鉱山かな。
「とりあえずカミシログループにレース場予定地の移転命令出しとくね」
書類提出っと。
「妾からも出しておく」
夫婦の共同作業だねっと。
「とりあえず国軍と大学の調査も派遣する。ベルガー、お主はどうする? 来るか?」
「ゼン神族の廃坑は珍しくありません、なにか珍しいものが見つかれば……といったところでしょうか。カチヤくんはどうする?」
「私も様子見で。こちらにいた方が生きたゼン神族にぶつかる可能性が高いので」
そんなわけでまた悩みが増えた。
会議はそこで終了。
ということでメリッサと西条くんと稽古。
汗を流す。
「だいたいさー、隊長はベースが競技武術じゃん。うちら競技に適応してるだけで本質は違うもん」
メリッサが俺に指摘した。それなー。
「競技武術でもねえのよ。実戦で習った武術を組み合わせて使ってるだけで」
「その応用力が化け物じみてますよね。私たちの場合、流派が競技に適応するのに十年かかるのが普通ですし」
「でも残心はするんですよね」
残心ってのは身も蓋もない表現をすると、倒した後で攻撃できるようにしてゾンビアタックしかけてくるやつを警戒する所作である。
斬られたふりして寝てるヤツとか。まだ死んでないもんアタックとかの警戒。
古流武術だと剣術や徒手なんかでもあるやーつ。
「やらないとピゲットもカトリ先生も殴ってくるんだもん……」
もうやだ。こんな野蛮なの!
あたい……ピンフォールしたら相手に背中向けて観客にアピールするやつの方がいいわ。
二人相手だと型稽古で視線外しただけでグーパンされるもん!
瞬き減らせとか無理言うし。
あとアレよ。視線。
常に全体を見てないと視界の端から攻撃飛んでくる。
もはや癖になってる。
俺が対多人数戦が得意なのはこれを心がけてるからってだけだ。
これができるからゾークとの戦いで生き残ったような気がするけどね。
なーんて、ゆるい生活が続けばいいな……って思うじゃん。
そうもいかないわけよ。
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