第六百三十三話
春……つまり貯蔵してたイモにカビが生える季節。
カビが生える前にプランターに植えて苗作り。
廃棄?
もったいない……。
たしかにウイルスなんかのリスクはあるけど……自家消費分なので考えたら負けってことで。
そんなことをしてたらレプシトールのカレンさんから連絡が入った。
パーシオンのデモ隊と連絡がついたようだ。
対談する。
今のところなんの約束もできないけど人物を見極めないとね。
まー……俺は人物を見極める能力ないけどね。
パーシオン人はクロノス系の人種で色素が薄い。
髪の毛も銀髪というより真っ白だ。
目も赤い。
学生のリーダーは俺と同じくらいの年齢かな?
ゾーク戦争がなければ一生会うことのなかった存在だ。
向こうもそう思ってるだろうけど。
「レオ・カミシロ・クロノス国王陛下にご挨拶申し上げます」
……どうしよう。
俺より常識人かもしれない。
同じくらいの年齢だから「やっほー、ぽくレオきゅん♪ 夜露死苦ね!」ってやろうか迷ってたのよ。
「学生サークルのノリの術」ね。
いいじゃん! ベンチャー企業の三十歳超えた社長だってやるじゃん!
面接で学生に「うっざ!」って嫌われるヤツ。
俺がやっても許されると思うのよ。
「これはご丁寧に」
静かにほほ笑む。
おすまししてるのは「学生サークルのノリの術」を使えなくなってしまったからだ。
どうしよう……「さ、さすが若くして国王になった英雄」って顔されてる。
困った……期待値が大きすぎる!
よし本題切り出してごまかそう。
「レプシトールを通しての医療品と生活物資の援助の用意があります」
「さ、さすがレオ陛下……ご慧眼に驚く次第にございます」
いや俺が一番驚いてるよ。
そりゃ怪我人続出だろうから医療物資が必要だし、逃げるんでも潜伏するんでも食料や生活物資も必要でしょ。
という話でしかない。
そりゃ援助するよ。
人道援助とまでは言わんけど、怪我人放っとけないじゃん。
でも武器のことを一言も口に出してない時点で回答はゼロに近いのよ。
つまりさ「俺とお前らは関係ないから」って言ってるのに等しいわけ。
なんか同年代をだましてるみたいで心が痛い。
ああ、なんか優秀そうだし。放っておいても……。
「真の民主主義革命を目指す我々に正義はあります。デモを繰り返せば民衆は必ずわかってくれるはずです(キリッ!)」
前言撤回。
レプシトールの学生の方が現実的でわかりやすい選択肢を提示してるだけマシだったわ。
どうしようお花畑だ。
具体性がなさすぎる。
「がんばってください。成功を祈ります」
「ありがとうございます!」
通信終了。
カレンさんに連絡。
「……だめだあいつら」
カレンさんが苦笑いした。
「話にならないでしょ?」
「レプシトール人が現実主義者なのはわかりました」
そう、クロノス併合も交渉材料とみれば悪くないのだ。
クロノスは併合を断ることと引き替えに保護国として面倒を見なければならない。
最初からそれを狙ってるってことはない。
クロノスの反応はある程度予想してて複数のシナリオを用意してるはずだ。
クロノスに併合されてもいいし、独立国でいてもいい。
どちらにせよレプシトール人は利益を享受する。
これがプローン相手なら最後の一兵になっても戦わなければならない。
だけど相手はクロノスだ。
命までは取られない。
うーん、レプシトール人って内紛繰り返してただけあって手強いわ……。
で、パーシオンだ。
ここは上から下まで夢見がちな乙女みたいな国だ。
クロノスも「上の世代が下の世代の盾になって散った」という神話を信じてるくらい夢見がちな乙女ではある。
でも上層部は「逃げ遅れただけだよバカ」と知ってる。
それでも神話を信じたい需要はあるから利用してる。
そういう意味じゃ良い意味でずるいわけだ。
パーシオン人はそういうずるさがない。
でも自分たちが宇宙で一番優秀で先進的な民族だと信じてる。上層部すらね。
自分たちがクズなのわかってて、それを最大限利用してたオーゼンはパーシオンに比べたらマシなような気すらする。
「どうしよう……あいつら俺がバックにいるって勘違いしたと思う」
「でしょうね。良くも悪くも純粋ですから」
「なんで貿易国なのにあんなにウブなの!?」
「レプシトールの商社が貿易取りしきってましたので」
レプシトール人がスレきってる理由がわかったような気がする。
「どうすんのこれぇ!」
「レオ・カミシロ・クロノス陛下のお心のままに」
あー!
笑顔!
胡散臭い笑顔!
やってやったぜって顔!
きー悔しい!
「それより銀河帝国式メークですが」
「なんでそっち!」
「だって目がつり上がったメークしてたラターニア人があの美しさ! 私たちも銀河帝国式が入ってきてこれですよ!」
つるんとしてる。
レプシトール人女性特有の身長二メートルだけど童顔な顔である。
前は美しい系だったけど、かわいい系になってる。
なお野郎は三メートルも珍しくない。
だけど骨格は細いんだよね。
体重も軽いんだよね。
「男性も女性もこぞってマネしてます」
男性の女装に女性の男装。
個人の趣味ならいいんだけどさ。
影響が大きすぎる。
「どうしてこうなった?」
「陛下が陛下だからではないかと」
「ひーん!」
「そう言えばレプシトールのラターニア大使館から陛下に関する質問がございました」
「やだ怖い。なに?」
「陛下の女性の趣味についてです。どんな女性が好みなのかと」
「悩みが増えたー!」
「あはははははは! 悩んでください!」
カレンさんの態度もだいぶいい感じになってきた。
こういう気を使わなくていい関係っていいよね。
「ま、陛下でしたら女好きっていう評判も使い倒すのでしょうけど」
「最終的にそうするしかなくなるんですけどね!」
ということでラターニアが俺のとこに女を送り込んでくる可能性が出てきた。
いやじゃー!
もうリコちで容量いっぱいよ~!
「俺は女の子にチヤホヤされたかっただけで、嫁が増えてくのを望んでないんじゃあああああああッ!」
「いいじゃないですか~。リコちゃん喜んでますよ」
「そうなんだけどさー!」
あきらめろとばかりにカレンさんはほほ笑むのだった。
こうしてまたパーシオンくんは放置プレーに。
どんどん介入したくなくなっていくのだった……。
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