第六百三十二話
冬の終わり。
つまりジャガイモの植え付けシーズン到来である。
正確にはクロノス人が食べてるナス科のイモである。
だいたい同じ見た目である。
細けえことは気にすんな。
芽出ししたイモを植える……。
宮殿の林での袋栽培はクレアに禁止された。
その代わりに正式に俺の畑をもらった。
宮殿近くの空き地。
冬の間にクロノスのクロノス乳酸菌や酵母に納豆菌というか枯草菌と土壌菌なんかをミックスしたものを作って……。
って難しいことはしてない。
畑にクロノスの農業資材メーカーから買った土壌菌ミックスとクロノスのゴミ処理用のクレア印のコンポスト用の菌をまく。
そしたら野菜屑ともみ殻やワラをまぜたものを撒いて上に土を被せておく。
量を間違えるとガスが発生して悪臭でたいへんなことになるので注意。
量入れる場合は細かくして水分抜いておく。
あとは冬が終わるまで放置。
春になったら耕す。
ゴミは分解されてなくなってる。
悪臭がなければだいたい大丈夫。
悪臭がしてたら菌を撒いてかき混ぜて様子見。
最終的には土壌分析のセンサー使って判断するけどね。
今回はセンサーであらかじめ大丈夫なのを確認した。
ポケットマネーで買った農機で耕す。
そしたら芽出ししたイモ植えて、マルチシート張って終わり。
なぜか休みの同期連中も手伝ってくれる。
みんな芋ジャージでお手伝い。終わったら洗濯である。
ルーちゃんママが中継して配信。
ほのぼのニュース枠で放送してる。
「おいもさん大きくなーれー」
ルーちゃんがニコニコする。
ワンオーワンもニコニコしながらお手伝い。
こういうときに一番頼りになるのは末松さん。
エディたちと恐ろしく手慣れた動きで作業完了。
いやー、このまま何事もなくパーシオンガン無視できれば……。
なんて思って宮殿に帰ったらリコちが来た。
リコちはリコ・サカザキからリコ・カミシロ・クロノスになった。
どうやら内政やりたくなくてサカザキ本家の家督を父親にあげたようだ。
将来的には俺との間にできた子どもか、それがダメなら親戚に継がせればいいって。
リコちはなんかカートに積んだ資料の山を持ってきた。
「なんかあったん?」
「レオくん聞いて……」
やだなに怖い。
「レプシトールから男の娘文化がパーシオンに流入して……」
「ふぁ?」
「それと一緒に男装も流行って」
「ふぁ!?」
「服装の自由を主張する若者グループが民主化デモを起こして軍と衝突したの!」
「ふぁあああああああああああああ! ちょ、ちょっと待って」
ルーちゃんママを呼び出す。
あ、あと嫁ちゃん。
麦わら帽子を置いたジャージ姿の嫁ちゃんが首をかしげる。
「なんじゃ?」
「たいへんだー!」
緊急対策会議が招集された。
準備前にミリタリー式シャワーで手早く体を洗浄。
士官学校でアイロンとともに叩き込まれる技術だ。
石けんを節約し手早く体を洗浄する。
烏の行水とも言われる技術だ。
洗濯ボックスに服を詰め込み女官さんに洗濯を頼む。
他の同期どももミリタリー式シャワーで洗浄。
「ふえーん、髪がゴワゴワになるよ~」
女子たちの悲鳴がフロアにこだまする。
しゃーないやん……恨むなら西条くんを……って責任転嫁は大人げないか。
女子にラターニアの高級ヘアートリートメント差し入れとこ。
はい注文。
元凶たる西条くんは長い髪がおもしろ髪型になっていた。
気合の入ったヤンキーというか怒髪天をつくというか……。
いじる気はない。がんばれ!
「じゃあ行くぞ」
軍服に着替えたやつから会議室に向かう。
ルーちゃんママは資料をまとめてるだろう。
女子たちは会議室で携帯用のドライヤーで髪を乾かしてる。
気合の入ったヤンキーみたいな髪型になってた西条くんもユリちゃんが髪を整えてた。
すると会議室に女官さんがドドドドドドと入ってきて女子をメークしていく。
「ここでやるん?」
「緊急事態ですので」
後続の女子はシャワー室でメークしてるみたい。
女子たちの用意が終わると、ばっちりメークしたルーちゃんママが来た。
さすができるバリキャリ……。
こちらはクレアすら疲れた顔してるもの。
ルーちゃんママが説明してくれる。
マスコミと政府の癒着じゃないかって思うかもしれないけど、こういうときは協力してもいいと思うのよ。
一手間違えたら滅亡するパワーバランスなんだし。
ルーちゃんママがまず現状を説明してくれる。
「我が社にも第一報が入りました。パーシオンで学生グループと政府軍が激突。抵抗運動がパーシオン全土に広がってます」
なんてこった。
次にイソノが壇上に上がった。
「服装の自由はきっかけにすぎない。もともとパーシオンはレプシトールをクロノスに取られた時点で継戦能力を失った。この暴動は学生の軍事徴用が発表されたことにある。ま、ゾーク戦争のときの俺たちみたいなもんさ。ただ問題は上層部の無能が原因ってことだ」
「なるほど」
そりゃねえ。
俺たち士官学校生なら給料分は戦うし訓練もしてる。
タチアナだって志願兵だ。
オリジナルが死んだことは複雑な思いを抱えてるが、仕方のないことだと思ってる。
そういう職業だもん。
でもさー、普通の学生に強制徴用して戦えなんて無理でしょ。
そりゃ国民の理解を得られてればいいけど、クロノスって対外的な評判いいもんね。
しかも鬼神国に兄貴呼ばわりされてる戦闘民族の俺が王様なわけで。
やる前から萎えちゃうよ。
俺たちが虐殺しまくる蛮族とかじゃないかぎりは。
ワンオーワンが女王になる前のゾークくらい話が通じなければ、戦わなければ絶滅だから戦うけどさ~。
俺たちラターニアと交渉できるくらいコミュニケーション能力高いもの。
『戦う前に交渉しろクソボケ!』ってなるのは当たり前だよ。
実際、暴動起こしてるの大学生が中心だもの。
陽キャ文明でよかった!
これさ……俺と嫁ちゃんだからこういう展開になったけど、麻呂の時代にゲートが開いたら……鬼神国かプローンかラターニア、そこをなんとかしても屍食鬼に滅ぼされてたと思う。
うーん……俺たち首の皮一枚で助かった感がある。
「とりあえず学生グループとコンタクトを取りましょう。いいよね嫁ちゃん」
「うむ。婿殿がそう言うのならそれが最善手だと思うのじゃ」
しかたない……おイモの世話は庭師の人に頼もう。
カナシイ……。
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