第六百二十八話
いつもの食堂でネタばらしである。
タチアナの歌はニーナさんの能力をものまねしたものであった。
おそらくレベルが上がったのだろう。
超能力ではない能力も『ものまね』できるようになった。
しかも『誇張』で増幅も可能。
ただ筋力などでのコントロールが必要なものは制御できずに暴走するようだ。
つまり歌は筋力が足りずジェスターの能力で増幅した結果、暴走したと。
クラシックのはとんでもない筋力が必要だもんね……。
その暴走には聖女の力も発現したわけだ。
しかも増幅の原資は他人の自分への信仰心と。
で、歌うと聖女の能力が顔を出して信仰という原資を捧げた人に回復で還元すると。
……使い方工夫したら最強じゃないか?
「戦闘能力には関係ないし」
タチアナはそう言った。
そりゃそうか。
タチアナは後方支援型だしな。
「私と同じだね」
リコちが笑う。
キミはゴリゴリの前衛タンクだろが!
とにかく座敷童ちゃんは大喜び。
神籬ちゃんも未だにピカピカ光ってる。
中継のおかげでクロノスの宮殿には参拝者が来る始末である。
そこでちょっとした事件が起きる。
「兄貴、これ見て」
画面にメッセージを表示する。
なになに……『オープンキャンパスのお知らせ』?
「なにこれ?」
「帝都の国立音楽大学校へのお誘い」
「ふへー、受けるの?」
「あーし、ここで働いてるし」
「むしろ音楽大学の講師をここに呼ぼうかの。外国に赴任してクロノス音楽の第一人者になりたいものも大勢いるじゃろ」
嫁ちゃんもこれには反応。
たしかに。
こういうのは早い者勝ちだもんな。
「ついでにニーナさんも授業受ける?」
「うーん、私は料理の方がいいかな」
「料理研究家も呼ぶかの」
「ところでさ、タチアナ料理のものまねは……」
ずびし!
タチアナが消しゴム投げてきた。
「え、なになに!? なんでキレてるの」
「できなかったの……」
ニーナさんが悲しそうな顔をした。
「なにが?」
「お料理……」
「でもタチアナ普段から手伝ってるじゃん」
「その……舌が……」
「あー……味覚がアレすぎるのか……」
試食しない系メシマズではなく、味覚見失い系か……。
「その……タチアナちゃんが作るとラターニア料理みたいになっちゃって」
「なるほど」
つまり本人の資質が『ものまね』にも反映されると。
才能があった歌や回復には反映されるが、俺の戦闘力のコピーはできないわけである。
タチアナが十人いれば宇宙の支配者も可能かと思ったけど、なかなか難しいね。
結局俺たち男子が怒られただけに終わった。
あとタチアナの歌の先生が来ることに決まった。
さて、そんなわけで仕事が一段落し、我が家の猫とたわむれる。
猫と遊んでお昼寝。
このまま仕事もなくダラダラすごせたらいいのに……。
なんて思ってたのにたたき起こされる。
「陛下! お迎えに上がりました!」
近衛騎士団の若い隊員が来た。
若いって言っても俺より一つ年上である。
「タメ口でいいよ」って言ったら「先輩の目がありますので!」と線を引かれた。
カナシイ。
「なにがあったの?」
「パーシオンに動きがありました」
「やだ怖い」
執務室に行くと嫁ちゃんたちがいた。
「婿殿、パーシオンの大艦隊がレプシトールに向かっておる」
「いまのうちにレプシトール征服しちゃおうって感じ」
「ある程度領土を削れればいいと考えておるのじゃろう。長期戦を見据えた戦略じゃ」
「だろうね」
ある程度予想してたうちの一つ。
そのシナリオをやらかした。
「パーシオンも俺たちが侵攻を予想してるのはわかってるはず……だと思うんだよね」
「じゃろうな」
「レプシトール軍は?」
財閥の持ってる兵器は取り上げて軍に回したはずだ。
さらに海賊ギルドの工場で軍艦の修理もした。
最低限の装備は持ってるはずだ。
「戦闘員の人数が足りないのじゃ」
「それなー……」
そうなのである。
問題はレプシトールの戦闘員比率にある。
レプシトールは外からの侵攻に対する兵力が極端に少ない。
ニンジャやヤクザ、アーマードリキシなどの企業間戦争のユニットばかりなのだ。
対して外国との戦闘では軍艦と人型戦闘機が主体である。
銀河帝国前皇帝の麻呂みたいなアホでもわかってる事実だ。
そういう意味じゃラターニアや太極国。それにクロノスって国としてやるべきことはやってたのね……。
鬼神国やプローンですらもわかってることができてないのだ。
この銀河……どんどんひどい国がでてくるな……。
なので俺は中古の軍艦で数だけはそろえたわけだ。
屍食鬼が中古軍艦を買わなくなった分を俺が買ってるという構造になってる。
ただ戦艦乗りの育成は間に合わない。
戦艦のクルーは専門職なのだ。
民間船の船乗りじゃ火器管制システムが違いすぎるしね。
護衛用のものとガチの戦闘用の違いだ。
人型戦闘機に至っては専門じゃないと無理だ。
レプシトール人乗組員を育てるのに数年はかかるよね。
士官学校生だっただけで最新の専用機乗りこなしてるカトリ先生が異常なだけだからね!
結局は利害関係国のクロノス軍にラターニア軍に太極国軍が駐留してる状態だ。
と考えると、首都じゃなくて国境地帯の警備の薄い場所狙いと予想できる。
「こう、侵攻されそうな場所まで予想されてるのに自信満々に侵攻してくるって……なに考えてんのかな?」
「レプシトールの内部情報も漏れてるし、自分たちの方が有利と判断したんじゃろ」
「でも自覚してない二重スパイじゃん」
そうなのである。
レプシトール人が金で情報漏らすのはわかってる。
だったら偽情報つかませればいい。
それを信じる方がバカなのである。
「あれかー、近々俺たちが撤退するって情報信じちゃったのかな?」
「じゃろうな」
「情報分析官がポンコツすぎる!」
「おそらく情報分析官は疑問符をつけたのじゃろうが、上司が聞かなかったのじゃろう。上が無能だと滅びる典型じゃの。妾も気をつけねばな……」
完全に自分のせいで国が滅びるの怖すぎる!
俺も気をつけよう!
完全服従型の組織ダメ、絶対!
ということで次の相手はパーシオンくんか。
血を流さずに戦争終結できる相手ならいいんだけどね。




