第六百二十四話
「カレンさんどうしましょうか?」
「……私も暫定大統領にされそうなのですが?」
「カレンさんは自由主義党では?」
選挙で勝利したのはクロノス併合党のはずだ。
自由主義党なんて四百議席のうち十議席しかない。
「誰のせいだと思ってるんですか! 選挙中にクロノス王の配下だとリークされたんです!」
「いやだってそれ公開情報でしょ。マイク&ハマー社はカミシログループですし」
「財閥の内情なんてレプシトールの庶民には関係ないんです! それがいまやゴシップのネタですよ! 私も陛下の愛人だとか好き放題言われてます」
「俺、妻帯者なんで。ごめんなさい……」
「なんで私が告白したみたいになってるんですか!」
「違うの?」
「違います! とにかく私がレプシトールの指導者にならないように工作してください!」
「もう遅いんじゃないかな?」
「いいから! クロノスに亡命させてください!」
「もう大統領になっちゃえば? 大統領になってクロノス編入だけは避ける感じで……」
「国民が納得するわけないでしょ! ただでさえ財閥の支配から解放されたって喜んでるんですから」
「えー……財閥なくせばオールハッピーって……その発想、健全じゃない。財閥のやりたい放題許すシステムがダメなんであって財閥なくせばいいってわけじゃねえわけでな……」
公爵会だって同じだ。
嫁ちゃんは次の公爵会の発生を防ぐため様々な政策を施行した。
警察と軍、それに司法を切り離し、軍や領地の監査を強めたのだ。
貴族は領地の刑事民事の裁判権を失った。
いまや警察も裁判所も帝国の所属だ。
もう好き勝手に圧政をすることはできない。
なお、まともな貴族の大半は負担する仕事が大幅に減ることを素直に喜んだ。
だって帝都がクソ面倒な警察業務も裁判所もやってくれるんだよ!
責任取らなくていいんだよ!
税金の取り立てもしなくていいの!
地方は軍含めた本来の仕事に専念できるようになったのだ!
結局……過ぎたる権力は己自身にも負担でしかないわけである。
つうわけで、重要なのは箱の仕組みよ。……いやゲームのルールか。
現在レプシトールは絶賛SAN値直葬バッドENDしかないクソゲーである。
財閥を潰すよりクソゲーたる要因を変えた方がいい。
この場合だと財閥ナーフして庶民の協力プレイのゲームポジションを増やせばいい。
経済犯罪専門の警察キャラとかね。
はいはい、デスゲームの運営運営っと。
「というわけで泣き言は置いて、こんなんどうでしょう?」
財閥のナーフ案と庶民の強化案を出す。
とりあえず暴力犯罪はサクサク取り締まりと。
「ヤクザに命が狙われますが?」
「ヤクザを潰しましょう」
「警察自体が買収されてますが……」
「全員逮捕しましょう」
俺は笑顔で当たり前のことを言った。
「どうやって?」
「太極国を入れます」
「は?」
「ヤクザで使えそうなのは切り落として宦官にします」
「はああああああああああああああああ!」
カレンさん完全に目が蛇になってた。
それほどの暴挙なのだろう。
「冗談です。でもレプシトールは太極国にも借金あるんで協力してもらいましょう」
終わった……。
カレンさんの目がレプシトール完全終了のお知らせ状態になっていた。
そもそもさー、武装組織の横行なんてさ、義務教育と新卒就職率が終わってるから起きるんでな。
あと【地元のパイセン】という謎の上位存在を少年時代に徹底的に取り締まりする必要もね!
どんなアホでも社会の歯車にするの。そういうの銀河帝国得意だから!
そういうとこはパーシオンくんとすらわかりあえると思うのよ。
「とにかくクロノスの一部になろうなんて早まらないでください!」
「は、はあ……」
なんか覇気のない返事だ。
もう初対面のころのスキあらばディール仕掛けてこようみたいな雰囲気はない。
半分抜け殻みたいになっていた。
後日、治安維持名目で太極国の軍を駐留させた。
もちろんクロノス軍もね!
その頃には事態が動いた。
嫁ちゃんやクレアたちとカレンさんの中継を見る。
「カレン大統領が選出されました」
死んだ魚のような目である。
ヨシ、そのまま「財政再建をします。独立国のままです」って言うのだ!
「我が国は……財政再建をし、将来的にクロノスの一部になることを目指します」
はあ?
「レオ・カミシロ・クロノス陛下の臣民となり偉大なるクロノス王国の歴史に名を刻みましょう!」
「あああああああああ! やりやがったな!」
「レオ陛下はお約束されました。誰も宦官にしないと!」
「うおおおおおおおおおおおおおッ!」と民がわいた。
誰も宦官にしない。その言葉に民は歓喜した。
「あ、てめええええええええええええええええええッ!」
俺は悔しさのあまり叫んだ。
裏切りやがった!
パーフェクトに裏切りやがった!
国の位置的にクロノスが断れないの見越してやりやがった!
クロノスがやるしかないのをわかっててやりやがった!
すると中継を一緒に見てた嫁ちゃんが一言。
「婿殿、銀河の覇王誕生おめでとうじゃ!」
するとクレアも。
「大国を飲み込んだから今度はクロノス帝国にクラスチェンジかな」
やーめーてー!
「もうさこのまま銀河統一しちゃえば?」
メリッサまで。
「やはり……旦那様はαオスです」
レンはわけのわからないことを言ってる。
「あーあ……レオ……あきらめるしかないよ……」
ケビンは同情してる。
「うーん運命なんじゃないかな?」
リコちまで!
「陛下……。僭越でございますが、最初に一人戦艦に残り私たちをお救いくださったときにすでに運命は決していたかと」
西条くんまでぇ!
「ま、いいんじゃねえの。兄貴だし。なあワン?」
「陛下は最強なのであります!」
「レオ様……とても素敵です」
タチアナ、ワンオーワン、シーユンまで……。
その憧れの部活のパイセン見るような目やめてー!
こうして最近王国になったばかりのクロノスの悪名が銀河に轟いたのである。
あと俺の悪名も。
どぼじで~!
ぽくは嫁ちゃんたちとダラダラすごしたいだけなのに~!
みんなは「銀河の覇王誕生おめでとうパーティー」をはじめた。
男子たちもやって来る。
俺は一人真っ白になって食堂の片隅で燃え尽きていた。




