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第六百十九話

 ラターニアはラターニア人奴隷の地下組織が起源である。

 奴隷同士で助け合い、国家を樹立した。

 すべてのラターニア人の解放を目的とする国家である。

 一見すると美しい話に思えるが実態は血で血を洗うウルトラバイオレンスな歴史である。

 周辺国すべて敵に回して殺し合いを何百年も継続したのだ。

 それゆえ内部も社会契約論レベル999の全体主義社会になっている。

 一人は国家のために、国家は一人のため。

 これを本当でやるヤバい国家なのである。

 そりゃ外国でのラターニア人への事件くらいじゃ動かない。

 よくあることだからだ。

 ただ殺人くらいになると「今後のために」って怖い顔で資料を要求される。

 不正があれば大問題になる。

 そのくらい怖い国家なのに、集落を焼くバカが出た。


「それ、ラターニア人じゃなくてラターニア系パーシオン人でしょ?」


 こんな寝言をラターニア人が許すはずもない。

 ラターニア系はすべてラターニア人なのだ。

 逆に我々からするとラターニア人はとてもつき合いやすい文明だ。

 事前にルールは開示されてる。

 ルールの理由はわかりやすい。

 因習村ルールはなし。

 交渉の余地あり。

 貸し借りの概念があり、ある程度空気を読んでくれる。

 ただし、なめてかかっていい相手ではない。

 太極国との戦いでは戦力の相性が悪く不覚を取ったのは事実だ。

 だが実態は豊富な物量でミサイルバカスカ撃ってくる超物量主義戦略国だ。

 あんなのと戦ってられない。

 どうやっても大量の犠牲は避けられない。

 だったら辛抱強く交渉する方がはるかにマシである。

 ラターニア人との交渉はコストかかるって考え方もあるけどね。

 でもウチらも法の支配を受けてるめんどうくさい方の国家なので文官コストは安い方だ。

 だから主義主張が違う国家とでも手を取り合って協力プレーに持ち込む。

 結局協力プレーしないと生きてけないのよね。

 うーん、世の中ってよくできてるよね。

 そんなラターニアにまずは遺体の回収をしたいと言われた。

 たとえ遺体になった人質でも身代金を払うタイプの国家だ。

 当然、俺たちもラターニア教の受け入れと聖女タチアナの出動を約束する。

 この時点で俺は常時タマヒュン状態だ。

 ラターニア教に遺体の回収計画の書類を提出。

 教義的に正しいものか判断してもらう。

 幸い「異教徒は穢れてるから遺体に触るな」みたいな条項はない。

 遺跡の発掘や修理を専門にしてる会社に頼む。

 労働者はラターニア人多めで配置。

 現場監督もラターニア人。

 この状態で作業してもらった。

 遺体はすぐに見つかった。

 森の中に不自然に囲まれた壁があった。

 集落を雑に埋めただけだったのだ。

 雑に土被せただけで建物の基礎や瓦礫が地表に出ていた。

 周囲は立ち入り禁止だったらしい。

 知事が若い頃に肝試しとして不法侵入が相次いだ。

 それで周囲を壁で囲ったようだ。

 現在七十歳の知事ですらその程度の記憶しかない。

 さらに古老に聞き取り調査するが、その年代になると……ラターニア人を言葉をしゃべる家畜程度にしか思ってない。


「ラターニア人を殺して何が悪い?」


 そう真顔で言われた。

 知事はまだマシな年代なわけである。


「最近の政府の連中はなっとらん。ラターニア人の頭数制限をしないから国など作りおって!」


 老人はそう鼻息を荒くした。

 もう会話するのも嫌になってくる。

 ラターニアができたのはもう何百年も前だというのに。

 このじじいより前から存在するぞ。

 俺らが知らないだけでこの銀河には相当な闇があるようだ。


「んで、半分ボケたジジイを逮捕します?」


 俺はラターニアの現地調査の責任者に聞いた。


「動かぬ証拠があれば仕方ありません……」


「ですよねー。ただ刑務所入れても一年生きられるかどうか」


 それじゃただの介護施設だ。

 ラターニア人の血税でやることじゃない。


「ラターニア王の判断を仰ぎたいと思います」


 ですよねー。

 あー……難しい!

 それもラターニア人の判断だよね。

 ただジジババを収監すると現地勢力が蜂起する可能性がある。

 それでラターニア軍が皆殺しにして俺たちが悪者になるのは避けたい。

 そういうイメージ戦略じゃないのよ。クロノスは。

 連日の短い仮眠だけの生活に脳がバグり始めてきた。

 イモ食いたい……おイモ……おイモ……。

 炭水化物……。


「どうした隊長? ひげも剃らないで」


 食堂で食べものを漁るメリッサと遭遇した午前2時。


「オレ……イモ……食ベタイ……炭水化物」


「おー、甘いもの食べたいときはたいていタンパク質不足だな。センサー見てみ」


 ステータスセンサーを確認。

 タンパク質不足の警告表示が出てる。

 逆に炭水化物は過剰の表示が出てる。

 そういや数時間前にポテト食べたな。


「ほれプロテインバー」


 メリッサがプロテインバーをくれた。

 バナナミルク味。

 美味しいやつ。

 もぎゅもぎゅ。

 頭がはっきりしてきた。


「メリッサ、なんか作る?」


「ホットケーキ食べたい!」


 くくく……夜中のホットケーキとは罪深い。

 作ってると腹減り軍団がやってくる。


「いいにおいなのじゃ……」


 嫁ちゃん。


「うーん夜食?」


 クレア。


「お手伝いします~」


 レン。

 なおすでにワンオーワンは席に着いてた。

 そしたらケビンもやってくる。


「手術終わった~……手伝う~」


 重機がコケて作業員が大怪我したらしい。

 アシスタントで手術の手伝いしてたみたい。

 医者はたいへんだな……。

 男子どもがやってくる頃には、顔に美顔シートを貼ったニーナさんが手伝ってくれるようになった。

 あと五分取れないそうで。

 で、ホットケーキ焼いたら、それだけじゃ足りない腹減りどもにプロテイン入りのカップ麺を配る。

 すると目をキラキラさせてワンオーワンが俺を見る。


「生クリーム欲しいかね?」


「欲しいであります!」


 はーい生クリームといちごジャムのっけ。

 最後にシーユンとお兄ちゃん、それとラターニア教の追悼儀式を終えたタチアナがやって来た。

 今回一番ハードなのはタチアナである。

 夜中まで我々で言うところのお経、ラターニア教では死者に捧げる歌を歌っていた。

 歌と言ってもオペラみたいに筋肉を全力で使うやつではなくお経だよねって感じのだ。

 タチアナはラターニア教にクロノス教に鬼神国教の歌を習得してた。

 いまは太極国の歌を習得してるところだ。

 太極国は節が独特で難しいらしい。

 ワンオーワンも一緒に習ってる。

 その成果が身を結んだ形である。

 タチアナは疲れ切っていた。


「つーかーれーたー……」


「お疲れ~。夕飯は?」


「弁当食べた……。パーシオンの食材は信用できないから冷凍のやつ」


 あー……うん。

 見た目重視で松花堂弁当かな?


「カップメンも食べる?」


「食べる!」


 ほいほい。

 こうして……なんにもしてないのに我らはすり減っていったのである。

 笑いが足りない!

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― 新着の感想 ―
ラターニア「人」って言ってるだけましなのかな? 外国人の聞き取りだから若干言葉を和らげてて パーシオン人だけの間だと「ラタ公」とか「ラット」みたいな 蔑称使ってそうな気がする
そうだ、爺は宦官にしよう(術後の生死は問わないものとする)
ジェスター的に笑いが足りないのは実によろしくないな……
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