第六百十七話
目を血走らせた男子たちが人型戦闘機に乗り込む。
その顔はまるで親の仇を打ち倒さんとする漢の眼差しだった。
皆無言だった。
お尻からのマッハジェットを経験した同士の絆。
言葉は必要なかった。
そこにはパーシオンへの怒りだけがあった。
パーシオンはレプシトールと違い計画経済だ。
しかも工場労働者が多い。
野放図なレプシトール経済とは違い、外圧にとんでもなく強い。
だからこそ侵攻する。
今まで放置してきたが、そろそろぶち殺す。
クロノスの人型戦闘機がオーゼン側パーシオンの惑星に降り立つ。
高官である俺たちは最後に惑星に降下した。
先行部隊によりすでに防空システムは無効化。
俺たちは苦労することもなくパーシオンの大地に着地した。
「パーシオン軍はどこじゃあああああああああああああ!」
思い出し怒りで俺は怒鳴る。
「どりゃああああああああああああああああああああッ!」
リコちも咆吼した。
その辺の建物の壁をゲシゲシ蹴る。
おそらく軍事施設だったであろう大きな建物の壁に穴が空いた。
「あははははは! リコち八つ当たりやめなよ~♪」
マッハジェットを体験してないメリッサがゲラ笑いしてた。
タチアナも着地。
専用機ラブリーキャットが結界を設置する。
リコちのうさぴょんはその辺の電柱引っこ抜いてブンブン振り回してる。
あらま……周辺が停電してるわ。
「死ねえええええええええ!」
リコちが基地に電柱を投げた。
電柱が基地に刺さる。
「うおおおおおおおおおおおおおッ! パーシオンぶち殺す!」
イソノが薙刀を振り回す。
「殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ!」
中島は今回は大斧。
そんな男子とリコちを見て女子たちはどん引きしてた。
この盛り上がり、バーニングファイアな熱狂に包まれた会場はさながらフェスの様相をていしていた……。
「陛下。地元行政府と地方軍が降伏しました」
「はい?」
まだ何もしてないけど。
「リコ様が暴れ回ってるのを見て恐れをなしたようです」
「あ……うん。リコちナイス!」
リコちはフラストレーションを建物にぶつけてた。
すでに太極国軍が周辺宙域を制圧してた。
冷静に考えれば当たり前の結果である。
中央と切り離された地方政府なんてなんの権限もないもんね!
国軍がいれば別だけど、もともとオーゼンやマゼランと貿易してたような場所だ。
サクッと降伏してマゼランあたりの有力者に泣きつけば悪いようにされないと思ってるのだろう。
実際そうなので行動パターンを読まれてる感がある。
惑星行政府のトップである知事がやって来た。
「ど、どうか私の首は差し出します! 男衆を太極国に渡して宦官にするのだけはご容赦ください!」
それは心からの叫びだった。
なんでも大昔、太極国は大きな戦争した。
戦争によって文官足りなくなって支配地域から宦官を強制徴用したんだって。
その恐怖は代々語り継がれ神話化されて今に至ると……。
知事はガクブルしてる。
年寄りはだいたいこういう反応みたい。
「ど、どうにか! 私の首でご勘弁を!」
「えーっと、シーユン」
シーユンと通信。
「だからああああああああああ! もう、宦官は廃止したんですって!」
シーユンが叫んだ。
前は感情を抑圧しておすまししてたが、最近は同年代と生活することで面白い感じの仕上がりになってる。
ワンオーワンとタチアナのストッパー。三人組のツッコミ担当としてがんばってほしい。
「で、では……無差別に切断すると!? それはあまりにむごい……」
「しません!」
「ほ、本当に?」
「しません! そもそも占領政策はレオ・カミシロ・クロノス国王陛下が主導いたします」
あれ……?
やっぱり俺なの?
「とりあえず知事におかれましては汚染の実態をまとめてください」
「それが……」
「なにか?」
「実は半年以上前から配給も途絶えておりまして……。中央の技官も撤退し、なんとか工場の維持はしてましたが……」
「あー、はい。そのレベルっすか」
思ったより深刻だぞ。
レシピが失われてるってレベルじゃなくて現場監督がいなくなっちゃったのね。
「すると品質維持部門は」
「機能しておりません」
検査もしてないと。
このどこまでも受け身の姿勢。
資本主義のうちらからは理解できないじゃん。
うちらならレシピ発掘して同じ工業機械使ってるんだから同じクオリティーのもの作って、勝手に商売するじゃん。
中央がアテにならないんだから。
だけど中央集権の全体主義で、労働者は自分の仕事しか知らない。
他はやらなくていいっていう社会だとこうなるのよ……。
品質を維持する人がいなくなったら、すぐにこれ。
中央が完全に機能停止して闇市ができはじめると改善するんだけどね。
最終的な製品に対する責任が発生するようになるから。
全体主義も善し悪しではある。
その点ラターニアは良くやってる方だとは思う。
太極国は経済は自由主義なので製品の品質は高い。
広い領域をどうやって回すかとか様々な条件があるから、一長一短なんだけどね。
今回はパーシオンの弱いところが出ちゃったのである。
「とりあえず生産中止! はいお休み!」
「ははー!」
とりあえず仕事休ませよう。
変なもの作られても困る。
クロノスの会社から品質管理部門を呼ばねば……。
ふへー。仕事が増えるぞ……。
かと言って失業者だらけにすると治安が悪くなる。
とりあえず「宦官制度はございません」と広報車でアナウンスしてパンフ配るか。
印刷会社は地元の工場にした。
住民は太極国にビビリ散らかす住民が男児を外に出さないようにしてた。
いやお前ら、太極国とも貿易してるだろが!
あ、こういうシチュエーションは初めてなのか……。
このことにパーシオンはなぜか国営放送で「侵略者に抗議する」と声明を発表した。
「抗議はいいんだけどさ、なぜ直接言って来ないのよ?」
すると静かに激怒してる西条くんが答えた。
「陛下を恐れてるからでは?」
「まさかー!」
「陛下に関わった国はたいてい滅ぶかトップが変わってますが」
「……お、おう」
そういや銀河帝国の麻呂も殺されたな。
もしかして俺……国家クラッシャー?




