第六百十六話
俺たち男子、即入院。
そしたらすぐに原因がわかった。
塩は致死性とまでは言えないんだけどかなり体に悪い汚染がされてたわけだ。
菌とかもあるんだけど、基本化学物質。
で、体内のナノマシンが汚染物質を検知。
食べたものを固めて外に出したわけである。
つまりトイレの住民。
ジェットでマッハだった……。
通ぶって焼き鳥を塩で食べたイソノたち男子に俺、それにきゅうりの漬物を食べたリコちの尊厳が犠牲になったわけである。
西条くんは嫁ちゃんの戦艦への帰還がキャンセル。
俺たちと同じ野郎グループの絆を再確認したのだった。
え? レオの野郎ぶっ殺す?
いや俺悪くないじゃん!
文句ならパーシオンに言って!
この件はクロノスで大々的に報道された。
カウントワンツースリーのクロノス支社社長が辞任。
しなくていいっつーの!
必死に引き留めたけど「国王様へ申し訳ないことを……」と言われてしまった。
クロノス国民ブチ切れで「パーシオンぶっ殺す……」という世論になってる。
さーて余波は各国にも及んだ。
太極国やラターニアではパーシオンとの取引を中止。
パーシオンくんの貿易会社がいくつも破綻した。
いや検査はしてたのよ!
ただここからわかるのは……パーシオンくん……あなた工業死んだのね……ってこと。
わざとやったっていう解釈もできるけど、おそらく作れなくなったのだ。
作れなくなるってもいろいろある。
技術が失われたとか、産業機械が輸入できなくなったとか、単に採算が合わなくなったとかである。
わりと多いのは個人商店が作ってて店主が引退後レシピが失われるというもの。
今回は製塩技術なので個人商店ではないだろう。
ただ製塩技術の細かいところ、そこは惑星ごとに違う。
海水や土壌の成分が違うからね。
それで、今回おそらくパーシオンくんは惑星ごとのレシピが失われたんだと思う。
全体主義国家だから……粛清されちゃったかな?
でー、検査をすり抜けて俺が食べちゃったと。
軍用ナノマシンがあれば死なない。結果的によかったと言えるだろう。
パーシオンくんの食材はすでに取引停止だったが、今回塩も禁輸と。
さーて、俺は毒の強制排出による脱水症状で点滴治療。
それは男子どもとリコちも同じ。
カサカサの肌になったイソノから連絡が来る。
暇持て余しやがったのだろう。
「死ね!」
「開口一番それぇッ!?」
「お前の能力が影響してるに決まってるだろ!」
「しかたないじゃん! 自分でコントロールできないんだから!」
そもそも帝国の超能力者の機関に測定してもらったんだけど。
あらゆる計器に測定されない能力で制御をあきらめたんだもんね!
「そうだけどよー! なんだよ下痢で全滅寸前って!?」
「ですよねー。病気じゃなかっただけ助かったということで」
すると病室のドアが開く。
「はーい、レオ。元気? イソノくんと通話してたんだ」
ケビンがやって来た。
「ケビン! このバカ怒ってくれ!」
イソノが訴えるがケビンはニコニコする。
「でもよかったよ、ボクたちで。ボクたちなら軍用ナノマシンがあるから死なないもの」
「でもケツからジェットだぞ!」
「なにそれ汚いな~。はいレオ、熱測って」
「は~い」
ケビンは外科医なんだけど、看護師でもある。
でも外科医としてはぺーぺーもいいところ。
看護師の方が経験がある。
そのせいで、おそらく俺含めたアホどもの子守を命じられたのだろう。
「まだ熱あるね。毒素の排出は腸に無理させるからしかたないね」
毒の排出も段階があるのだ。
マグネシウムで排出をうながすのが軽いコース。
今回は腸や筋肉を電気で直接動かしての強制排出なのだ。
エクストリームジェット排出。
副作用というか普通に傷ついて軽く熱が出るらしい。
「水戸の肛門様が限界突破……」
「はーい、元気ね」
スルーされた。
やはりケビン……下ネタ嫌いだな……。
「それで~。クロノスはなんだって?」
「パーシオンとの取引禁止だって」
「ですよね~、ふへ~……パイロットに戻りたい」
「はいはい。はいお尻出して」
「は?」
「注射するからお尻出して」
「なぜにケツ?」
「肛門の修復のためのナノマシンだから。だって切れ痔になってるもん」
「なんてことだ! そんなことが許されていいのか!」
痔とか言うな!
急に痛くなってくるだろ!
「うるさいなー! お互い裸だって見たことあるでしょ!」
「おま! ケビンが男の頃の話だろが!」
士官学校男子のシャワー室の話である。
そういやあの頃から生っ白い体してたな……。
今や健康的な巨乳ちゃんだ。
ずいぶん遠いとこまで来たもんだ。
「なにその目! いいから、ほれ!」
ぐるっとうつ伏せにされてズボンを脱がされる。
お尻ぷりりんこ。
ら、らめ!
「はい注射」
ぷすっとな。
「あん!」
あら痛くない。
あ、痛覚ないとこ。あ、はい。
でも、もうやだ! 恥ずかしい!
「はい終わり」
うつ伏せのまま腰を浮かせてパンツを元に戻しながら一言。
「あたい……もうお嫁に行けないわ……」
「あんた既婚者でしょが!」
パーン!
尻を叩かれた。
しくしくしくしく……。
「ぎゃひゃひゃひゃひゃ! ざまぁ!」
イソノがゲラ笑いしてる。
するとケビンが笑顔で一言。
「イソノくん、ハナコさん看護資格取ったよ」
「はい?」
「暇だから通信教育で取ったんだって」
「はい?」
ガラガラガラガラ。
イソノの病室のドアを開ける音がした。
「あなた~お注射のお時間ですよ~♪」
「え、ちょっとハナコさん。え、やだ、お尻? お尻らめええええええええええ!」
バカの叫び声がこだました。
こうして悪は滅びたのである。
なお西条くんは女性の夢を壊すなという謎の理由で男性の看護師に注射されたとのことである。
「はい痛み止め」
痛み止めを渡された。
「ナノマシンじゃダメなの?」
「経口薬ですむものは経口薬の方がいいの」
そういうもんか……。お薬を飲む。
許さねえぞパーシオン……。
この後、士官学校同期男子の中で「パーシオン殺す」が共通認識になった。
この恥辱……変な性癖に目覚めそうになったことを俺は許さない。
カワゴン許さない!




