第六百十五話
さて、レプシトールで太極国がどう思われてるかを最初に語ろう。
その……宦官制度がね。
評判が大変悪くてですね。
はい、レプシトール人が子どもを怒るとき、特に男の子は「太極国で宦官にしてチ●チン取るわよ!」ってよく使うフレーズだそうで。
レプシトール人、特に男の子にとって太極国とは恐怖の対象なんだって……。
シーユンが宦官制度廃止したのに……。
もし太極国がレプシトールを統治するとなったら、高齢者を中心として命の続くかぎり抵抗すると予想されている。
なおシーユンがそう言ってたのでかなりガチの案件である。
ラターニアはガチギレ、太極国は怖い、となるとクロノスがいいんだってさ!
でもクロノスは無理なんだな~。
文官足りないもん。
反政府軍の優秀な学生と軍の事務職だけで大丈夫かな?
とりあえず外国法を学んでもらってる。
法律だけじゃ足りないんだけどね。
なんで法律がそうなってるかまで知らないとね~。
ということで他人事気分で高みの見物。
うちは併合しないもんねー。
とりあえずパーティーを楽しもう。
「速報です。クロノス併合党……支持率55%」
「げふッ!」
むせた。
なんで?
ねえなんで?
こちら蛮族だぞ!
「クロノス併合党の演説に人が押し寄せてます」
「レオ陛下万歳! レオ陛下万歳! レオ陛下万歳!」
「なして?」
なんで俺、そこまで人気なの?
聴衆にインタビューが行われた。
「宦官にされてチ●チン取られたくありません!」
「ぶっ!」
シーユンがむせた。
「宦官廃止したのに!」
とはいえこれはしかたない。
企業再建のために太極国が送り込んだのは宦官だ。
いや宦官の制度は廃止したんだけど、もう取っちゃった人を解雇するわけにいかないでしょ。
文官も武官も侍従もしてるんだから。
だから企業経営に詳しいベテランの文官となると宦官になる。
宦官を見たレプシトール人、特に男性は内股になって震えた。
いやインテリ層はそこまでビビってないわけ。
でも中間から下はかなりの確率でガクブルなのである。
伝説の魔物を見たレベルで震えてる。
肉体労働者は相次ぎ退職。
管理職ですら辞世の句を書く始末だ。
内定辞退が相次ぎ、太極国は釈明に追われた。
だからもう廃止したって言ってんだろ!
太極国人も怒り心頭だが、それは恐怖でパニックになるものには届かない。
チ●チン切り落とされる恐怖に成人男性はもちろん、子育て中の母親、さらには幼児までもガクブルしていた。
「ふえええええええええええん! いい子になるからチ●チン切り落とさないで~!」
幼児ぎゃん泣きが中継される。
「もう廃止したって言ってんだろ!」
とうとうシーユンがキレた。
そこで俺たちは気づいた。
本当に絶滅レベルの問題であるラターニアは元奴隷とバカにして軽く扱ってる。
なのに太極国にはビビリ散らかしてる……。デマなのに……。
その……レプシトール人……危機感バグってね?
最終的に我々クロノスが最も自分たちの利益になると踏んでるのは正しいんだけどさ。
「あは! あははははははは! なにそれぇ!」
それを見てメリッサが腹を抱えて笑う。
ツボに入ったようだ。
床に転げて足をばたつかせてる。
レンも笑ってる。
嫁ちゃんとケビン、それにワンオーワンとタチアナも笑ってる。
シーユンのお兄ちゃんはシーユンに気づかれないように笑いを堪えてる。
男子たちは笑いながらも内股。
リコちはモキュモキュスルメ食べてた。
キミ、マイペースね。
なお一番面白いのは西条くんが内股。
ユリちゃんはそれを見てニヤニヤしてる。
幸せにおなり……。
リコちは今度は冷やしたキュウリの一本漬けを食べる。
結構食べるんだよねリコち。
「……レオくんが作ってくれたやつの方が美味しい」
「え?」
俺もキュウリを注文。
あ、塩分弱い。
「あー、塩分弱すぎだ」
どうせ俺がオーナーの会社である。
すぐに上層部に連絡。
「れ、レオ様!」
「あのさー、きゅうりの漬物塩分弱いみたい。あとスルメもなんか微妙でさ」
するとマネージャーが吹っ飛んできた。
「怒ってない、怒ってないから」
そう言って味を確認してもらう。
「あれ?」
「ですよねー」
俺の調理はこういうお店、要するに道の駅のフードコート味である。
なので味は似たり寄ったり。
なんだろうねって話をしてた。
本部からも社員が大慌てで来た。
俺が王様だからっていうより俺や士官学校同期の舌が信用されてるようだ。
調理もマニュアルどおり。
きゅうりは店内調理みたい。
マニュアルは守ってた。
首をかしげながら倉庫に行ったら理由がわかった。
パーシオン産の塩。
いやただの塩だし、問題が起きたことないし、そもそもクロノスじゃ結界あるから屍食鬼は死ぬ。
それにパーシオンはだいぶアレな印象だけど、それでも大国なのよ。
こういうよくわからん所に名前出るくらいには大国なのである。
ためしに塩をなめてみる。
ペロ……薄い。
自分の舌がバカになってるかもしれないのでケビンを呼ぶ。
ケビンに簡易測定してもらう。
「特にモニターに異常出てないよ」
神経の異常なし。
「えーっと比較対象あります?」
クロノスの塩。
ちょっとお高い。
ペロ……普通に塩辛い。
「……えっと本社に報告。パーシオン産ヤバそうだから使用禁止で」
「は! すぐに通達します」
なんだろこれ?
塩に混ぜ物って……パーシオンくん……末期症状になってない?
大丈夫そ?
戻るとストロングなチューハイ飲んだリコちがウザ絡みしてくる。
「はーいれおきゅん! こんやくしゃですよ~!」
「はいはいそうですね」
「れおきゅんはスゴイのに! 私はもぶでしゅ!」
はいはい。
背中ぽんぽん。
「婿殿……レプシトールいたときもそうじゃったのか?」
嫁ちゃんが目を丸くしてる。
「うん、ストロング飲むと毎回こんな感じ。リコち頑丈だからリバースしないし。しばらくウザ絡みしたら寝るから大丈夫」
「きいてましゅか!」
「はーい」
背中ぽんぽん。
さーて、これでわかったのはレプシトールの政権崩壊とわけわからん勢力の拡大。
それとパーシオンの内部崩壊ね。
あと塩の分析待ちかな~。
あ、塩は誰に使った?
今日が最初、俺たちだけ。
よかったわー。
リコール出さなくてすんでよかったわー。
あ、料理廃棄で。
みんな~料理食べた?
あ、男子とリコちだけ。
それはよかった。よか……ぽんぽん痛い!
なんか急にぽんぽんが!
男子も次々倒れる。
すぐに通報。
男子、西条くん含めて男子全員が救急車で運ばれた。
あとリコち。
女子はまだスナック菓子しか食べてないからセーフだったんだって!
なんでじゃああああああああああああ!




