第六百十二話
西条くんは嫁ちゃんとこの見習いだ。
皇帝直属の近衛騎士団の見習い騎士である。
超ウルトラエリートなのよ。
だけど……。
「レオ陛下、これから引き継ぎをいたします」
「あ、うん、はい」
今日は大正浪漫メイド服か。
優秀なのよ。
成績優秀者で飛び級してきたうちのクラスでも屈指の実力者なのよ。
ピゲットに見込まれて、カトリ先生からも印可の免状もらってる侍なのね。
カトリ先生門下最強の一人にして、古流館花流のメリッサと双璧の実力者。
士官学校卒業後は近衛騎士団に入団。
はっきり言って異例の出世だ。
将来の銀河帝国軍を背負って立つ逸材だ……だが女装だ。
しかも似合ってる。
「相変わらず女装似合ってるね」
嫌味ゼロであるし、向こうもわかってる。
その程度の信頼関係はある。
「努力しておりますのね」
むふーと胸を張られた。
うーん完成度高い。
これで婚約者いるんだぜ。
相手は主計局のユリちゃん。
主計局は妖精さんの子分である。
ただ会計やるだけじゃなくて、外国勢力の会計分析もする。
俺もレプシトールの会計を分析してもらった。
主計局の分析を元に攻略したのである。
レプシトールをほぼ無血で滅ぼしたといっても過言ではない。
俺が支援職兼肉盾ディフェンサー兼オフェンサーとすると、主計局はマップ兵器。
シナリオに介入してくるレベルの上位存在だ。
実際、今回は主計局に殊勲賞が与えられた。
そんなある意味猛者の集まりの主計局でも鬼と呼ばれる存在がユリちゃんである。
なんで鬼かというと、俺の無茶ぶりに応えて様々な謀略の片棒を担いできたから。
クロノスの正確な人口や経済力を暴いたり、レプシトールを滅ぼしたり……。
おそらく一番恐れられてる部署だ。
どのくらい恐れられてるかというとピゲットも主計局員には敬語だ。
俺たち船乗りはメシを作ってくれる給養員や主計局員には逆らわないという鉄の掟があるのだ。
恨み買ったら本当に殺されかねないからね。
なので力を持ちすぎてもまずいから士官学校だと給養員だけは当番制。
俺は趣味でメシ作ってるから番外編。
そんなユリちゃんとのパワーカップルである。
なんでもユリちゃんは女装に理解があるというか女装の原因を作った存在らしい。
末永く幸せに暮らしてほしい。
そんなパワーカップルの西条くんであるが、今回は俺の護衛である。
レプシトール反政府軍の勝利がほぼ確定したので、俺はクロノスに帰った。
一週間検査入院してクロノスの宮殿に帰ってきた。
そこで俺の近衛騎士に休暇を出したわけである。
で、その間の護衛はメリッサと西条くんが交代で行う。
メリッサだと暴走するが西条くんに迷惑かけたくないので大人しくする。
……仕事がない。
「西条くんゲームし……」
「勤務中です」
「でも少しくらい……」
「勤務中です♪」
美しいお顔で言われてしまった。
タチアナ、ワンオーワンにシーユンが暇かなと思ってシフトを確認。
ありゃま、三人とも太極国のお仕事だわ。
パクリ天下三分の計により太極国は孫権としてレプシトールの三分の一の財閥を束ねることになった。
と言っても今回の支配はラターニア以外は純粋に金の問題である。
悪意もへったくれもない。
現状財政破綻してて自分とこの商売に関係あるから再建しましょうという話でしかない。
まー、人権無視で工場やってたから、レプシトール製パーツって知らないところで使われてるんだよねえ……。
あと予想以上に通常の工業汚染が進んでて、それはやらかしには定評のある銀河帝国が浄化を担当する。
大型案件よ。
商社や各種メーカーがクロノスの子会社作ったのがここで効いてきた。
「ねえねえ西条くん。ユリちゃんにこれ回しといて」
即興で作った書類を渡す。
太極国との共同事業計画書ね。
用地の図面と工期の予定は出てるからまとめるだけ~。
あとは妖精さんとユリちゃんに見てもらってOK出たらクロノスの文官に具体的にまとめてもらう。
俺たちが浄化しないと土地なんて使えないんだから嫌とは言わんだろ。
「なんで自分を間に入れようとしてるんですか? 直接送ればいいじゃないですか」
「そう言わないでさ~。はいこれ」
今度オープンするクロノスの高級料理店のチケット~。
銀河帝国のVIPや商社の接待で使うお店~。
お酒様つきのプレオープンチケット。
「行ってきたら感想ヨロ! 俺こういう高級店、嫁ちゃんと結婚するまで行ったことなかったからよくわからんのよ」
「ありがとうございま……レオ陛下……あなた侯爵家のご出身ですよね?」
「うちの地元、飲食店すらほとんどなかったし」
「う、うん? ううん?」
西条くんが長いまつげのついた目をパチクリさせる。
普通は伯爵家級の惑星でも高級店あるもんね。
うちはないのよ。
さーて、ついでに曹操ことラターニアの分の計画書も作ろうっと。
……うーん。
「はっはっは、赤壁みたいな大惨事が起こったりして」
「ほんとやめてくれませんか。陛下のはシャレにならないんですよ」
「大丈夫よ~。まだパーシオン生きてるし」
はっはっは。
そのタイミングでレンが入ってくる。
「旦那様お茶にございま……浮気!」
はいお約束。
「西条くんは野郎だしピゲットの部下ですだ、つうか同級生でしょが!」
「だって同じメイドですよ! キャラがかぶってますよ!」
「いや片方は女装だから! だいたいレンは俺の妻でしょ!」
「それはそうなんですけどキャラ被りは許せません! それも大正浪漫メイドなんて!」
「レン先輩。このお店のをこう直して」
西条くんが端末をレンに見せる。
「なんと! そんな手が!」
「洋裁が苦手ならサイズデータを送ると調整してくれますよ。レン先輩ならビースト種を選んで……」
「な、なんと! 西条くん。いえ西条師匠!」
いきなりレンが西条くんの軍門に降った!
西条くん……恐ろしい子……。
「わたくし、西条師匠の元で女を磨きますわ!」
目をキラキラさせてる。
やだ……こんな興奮したレンはじめてみた。
だが騙されるな!
やつは男だ!
エディやイソノ、中島と同格の使い手だぞ!
仲間の中でも最強クラスの一人だからな!
「化粧品は……これとこれを」
「な、なんと!」
ま、いいか。
俺は考えるのをやめたのである。




