第六百九話
気の早い拙者のぽんぽんはすでに痛くなっていた。
トイレにダッシュ!
「レオくん……お腹壊すならもう壊れてるよ~。そもそも帝国軍人は過酷な環境でも生きられるようにお腹のナノマシンがどうにかしてくれるって士官学校で習ったじゃん」
リコちに言われるが俺の腹はすでにギュルギュル鳴っているのだ。
「兄貴……帝国軍人は泥水飲んでも大丈夫って新兵募集のときに言われたぞ」
タチアナの声が聞こえる。
「ぽんぽん痛いもん!」
「急に子どもになるなって!」
メリッサのツッコミ。
だが俺のぽんぽんはイタタタなのである。
「あのね……みんな……レオは食べものだけには異常なくらい神経質だから……」
クレアがため息をつく。
「旦那様は意外に繊細ですから……」
繊細……そうなのか?
結局気のせいでござった。
胃腸になんの問題もなかった。
そんなほほ笑ましいやりとりから数日、証拠固めをしまくってから国民に事実を突きつけた。
『国民は未処理の水を飲まされていた。死亡者は推計年間二十万人か!?』
『行政からの委託事業手抜きが横行。下水を川に垂れ流しか?』
『財閥系企業。ゴミを山に投棄か』
というわけでマイク&ハマー社はすでにクロノス基準の事業の監視をしてたので難を逃れた。
他の企業はフルボッコ。
これまでのように企業は私兵にヤクザにニンジャにアーマードリキシを出して市民を脅そうとした。
だけど今回はそううまく行かない。
警察と国軍が市民を守る。
企業の兵とにらみ合いを続けた。
当然、企業側は警察のお偉いさんを暗殺すればいいやって発想になる。
なるよねー。
首を晒してやればビビるだろうって発想。
だから先回りして国軍で財閥のニンジャやヤクザをボコボコにしてやった。
マイク&ハマー社のニンジャ部隊の諜報能力なめるなよ。
で俺もニンジャのとこに乗り込む。
「ぐ、貴様がマイク&ハマー社最強のニンジャ、カワゴンか!」
財閥の元一位、スカガワ財閥の上忍。
タイガーハトゥーリをふん縛る。
なおニンジャはリコちがボコボコにした。
というかガトリングガン乱射しながら疲れて動けなくなるまで追いかけた。
疲れて動けなくなったやつからニンジャ隊が捕縛。
「スカガワもこれで戦力半減ってこと。つうかさ~。寝返りなよ。給料安いんだろ?」
もうね、財務も丸裸。
ニンジャ隊もたいした給料払われてない。
だからさー、軍事の人件費ケチるなよ。
法律とかの制約あるならわかるけどさー。
「だが伝統が!」
あー、現状食えてるからこれでいいやーってやつだ。
「はいこれ」
印刷した紙を渡す。
「な、なんだこれは……」
「スカガワ財閥の財務。帳簿マジックでごまかしてるけど、実際は10年連続で債務超過。というか創業以来粉飾決算しかしてないよね?」
「はい?」
「だからすでに倒産状態。今ごろどう倒産回避するか話し合ってるんじゃない?」
反政府軍側は債権者による倒産申し立てなども検討してる。
倒産処理のない世界は経済が低迷するってレイモンドさんの言ってたとおりだ。
膿はちゃんと出して経済を新陳代謝させないと致命傷になる。
そこにヘタな同情は不要。
結局、大手でも不正をしたら退場してもらうのが一番いいのね。
技術があるなら他の企業に売却。
コモディティ化が進んで儲からなくなれば、地方の惑星や外国で生産。
それしかない。
あとは繁栄と衰退は運命でしかない。
最適解を選び続けても衰退期は必ず来るのだってこと。
なんか海賊ギルドが飛躍しそうな話だな。
「俺たちの提案はシンプル。君ら公務員になりなさい。企業のためじゃなくて国のために働きなさい。せっかくパーシオンと戦ってるんだし」
タイガーは困った顔をした。
「だ、だが……パーシオンは……」
「途中まで八百長だったのは知ってるよ」
「!!!」
タイガーが口をあんぐりと開ける。
「なにびっくりしてるの? パーシオンとレプシトールはゼン神族の植民地……スカガワ財閥、それに序列2位のマスダグループ。どちらもゼン神族の会社でしょ?」
「な、なぜ……それを……」
「なぜって言うほど隠してないじゃん。それでさ……屍食鬼の言ってたメインランドってどこよ?」
タイガーは苦笑いする。
「辞世の句と切腹の用意をしろ」
「俺そういうの嫌いなんだけど。死んで逃げるのは無責任じゃね?」
「そういう意味ではない。儂の脳には屍食鬼が埋め込まれてる。そろそろ目覚めるだろう。屍食鬼になる前に処理するのだよ……クロノス王よ」
「知ってたのか?」
「あまりにも鮮やかな国家転覆……隠せるわけなかろう」
そりゃそうね。
「クロノス王よ……我が一族のものは許してほしい」
「レオ・カミシロ・クロノスの名において約束しよう」
もともと全員許すつもりで来たんだけどね。
結局、武装勢力は国軍や警察に組み込んじゃえばいいのだ。
「……感謝する。メインランドはイェータ帝国にある」
するとタイガーはヨロヨロとした足どりで和室へ向かう。
「半蔵。介錯を頼む。儂の首を持って国軍に合流せよ」
最期くらい邪魔しないでやろう。
俺たちは撤退する。
だからさー。
ジェスターが具合悪くなる展開やめろよ!
って待てよ……。
「ちょっと待ってくだストップ!」
和室に乗り込んで切腹しようとする脇差しを一刀両断。
半蔵の刀もついでに切断。
「ふへー……間に合った」
「な、なにをするクロノス王!」
「屍食鬼……もう無効化してる」
タイガー爺さん、ヨロヨロしてたから忘れてたわ。
「は?」
「もうこの惑星に結界設置した」
そうなのである。
マイク&ハマー社の敷地に結界装置をいくつも設置済みだ。
すでに屍食鬼は駆除済みなのだ。
問題は食べものや飲み物が普通に汚染されてることなんだよね。
おまけに公共施設というか社会インフラも死んでるわけだ。
肉体労働者が軽視されすぎてエンジニアも少なすぎるし。
身分証ピッってやる人だけで社会回そうとするのやめてくれない?
俺ちゃんヘソ曲げちゃうよ。ホント怒るよ。
とにかくレプシトールの支配は七割ってところか。
あとはパーシオンくんだよね。
大人しくして誤魔化そうとしてるけど……逃がさないよ。(にっこり)
俺は優しく笑うのだった。
「あ、レオがまた悪い顔してる……」
悪くないヨ。




