第六百七話
「ザイチェン教授の総回診です!」
ツッコみは拒否する。
ザイチェン教授軍団がマイク&ハマー社に乗り込む。
そうだレプシトールの入管についてだ。
はっきり言って機能してない。
そりゃ武器が市場にあふれてる状態だ。
登録制度もない。
基本的に入管職員に手数料という名目で賄賂を払えば入りたい放題だ。
麻薬も武器も無制限に持ち込み可能。
無制限ってことは自分の武器とお薬だけ。
他は貨物船で堂々と持ち込む。
どう考えても海賊ギルドよりも悪質だ。
じゃあ海賊ギルドはレプシトールに進出しないの?
当然の疑問だ。
答えは簡単。
寿司バーやえっちなお店程度ならいつでもどうぞ。
ただし複数店舗になってレプシトールのチェーン店と競合した瞬間に殺し屋が来る。
つまり進出は自由だが利益上限は限りなく低い。
だったらクロノスに品を密輸したり、海賊として貨物をいただいた方がマシである。
企業のやりたい放題を認めてる割には近視眼的で視野が狭い。
絶対に損を取らないからね。
結局、政治は政治家がやった方がまだマシなのだ。
ザイチェン教授のグループが資料を漁る。
資料が妖精さんのデータになっていく。
分析された資料が示すのは……。
「債務不履行です」
「ですよねー」
そもそも警察も国軍もほぼ停止してるのだ。
企業が持っている私営の軍だけだ。
治安は最悪、夜警すらまともにできてない。
「そもそも旧四大財閥はどれも破綻状態です。債務不履行を避けるために債権者を暴力で制圧してます」
もう意味わかんないよね。
つまりだ……。
金ないわけよ、この国。
商人ばかりのくせに。
自分の利益だけを優先した結果がこれ。
マイク&ハマー本社でカレンさんと兵隊より怖いザイチェン軍団、リモートでラターニア銀行総裁にラターニア王、当然シーユンとお兄ちゃん、そして利害関係がないので調整役として嫁ちゃんを交えて会議する。
あと距離的に遠くて難を逃れそうなサリアもついでに参加させた。
だって俺が利害関係者なの理不尽すぎるじゃない。
「婿殿、説明せい」
「説明って言っても信用創造の限界に挑戦してるだけだよ。四大財閥が死ぬほど金を作ってるだけ。その実態が世に出たら異常なインフレで死ぬだけで」
デジタル化されたお金を発行するのは銀河帝国でも行われてる。
でもそこは妖精さんとそのサブシステムがいい感じに調整してるわけだ。
レプシトールには妖精さんはいないし、通貨発行を調整する仕組みも存在しない。
無法が横行し、表面だけを繕った社会はもうとっくに崩壊していたのだ。
というわけで会議はお通夜状態で進行。
無事なのは撤退準備してたラターニア銀行くらいか。
ラターニア人の経済奴隷は確定……ってほどじゃないけど借金返済の日々になるよね。
クロノスはつきあいのある企業の大半が倒産するかなって予想されてる。
公金入れてもいいけどいっそ潰してしまった方があとあと楽かなと。
ほとんどが特許とか技術持ってる会社じゃないし。
技術系の会社は公金とファンドで再編かな?
太極国も同じくかなりの企業が存続危機が予想される。
両国とも食べもの系は汚染問題で回避できたんだけどねえ……。
シーユンも渋い顔をしてる。
せっかく復興がうまくいってたのにね。
そう経済大国なのが問題だった。
汚染やり放題、労働法なんて存在しないし人件費安すぎ、安全基準という概念が存在しない。
経済的に使いやすい制度の国なのが最大の問題なのだ。
そりゃ使うよね。安いんだから。
商人に愛国心を期待する方が間違ってる。
太極国とクロノスに実質クロノス領土のマゼランとオーゼンに新たな試練が降りかかった。
鬼神国も笑いごとではなくかなりのダメージが予想された。
他人事でいられるのは嫁ちゃんくらいだろうか。
「婿殿……そのもうちょっと手加減とか……」
「いや今回は俺の能力じゃないから! ずうっと前から隠してた問題が表に出ちゃっただけだから!」
「その問題を掘り起こしたのは婿殿じゃろが!」
ですよねー。
そもそも俺がニンジャ隊の列に間違えて並ばなきゃ……って原因作ったのイソノだよね。
「すべて悪いのはイソノだと思うの」
「責任転嫁しはじめた!」
「いっそクロノスに併合してもらえば……」
壊れたカレンさんがブツブツなにか言ってる。
嫌でゴザル。
「カレンさん聞いて。広すぎる領土を持っててもいいことなんてありません」
にっこり。
後の世に分裂と内戦、独立からの戦国時代に繋がるだけである。
ラターニア王が俺を見つめる。
「クロノス大公殿……貴殿は国家で一番重要なのはなんだと思う?」
経済、軍事、外交……違うね。
「秩序かと」
最終的には仕組みが整った箱を用意して、メンテナンスしながらうまく動作させる。
法を敷き、夜警をして、民を法律的に平等に扱う。
それが理想だし秩序ってそういうものだよね。
するとその場にいた王様たち。
サリアも嫁ちゃんも大きくため息をついた。
ザイチェン教授たちも満面の笑顔。
シーユンのお兄ちゃんもヤレヤレって表情だ。
シーユンと俺だけが目が点になってた。
「え? なに? どうしたの?」
「満点です。レオ陛下」
ザイチェン教授たちはほくほく顔。
え、なに?
「混沌から生まれ出でた存在が秩序を欲するか。ま、いいじゃろ。婿殿、今後クロノス王を名乗るがいい」
「え、なに……離婚は嫌よ」
「なにを言っておるか! 今後、政治的にも妾と対等じゃ。もうクロノスは銀河帝国の保護国ではない」
「我らラターニアもレオ陛下の王への昇格とクロノス王室をラターニア王室の親戚として扱うことにします」
「た、太極国もクロノス王室を親戚として扱います……その少ししたら家族になりますし(ぼそっ)」
なんか不穏なセリフが聞こえたような気がする。
「えーっと……どういうこと?」
「婿殿、レプシトールを飲み込め」
野に放たれ勝手に繁殖したザリガニだったはずなのに……。
とうとう本当に王様になってしまった。
ザイチェン教授はニコニコしてる。
あ、はい。
クロノスの会計も見たい。
どぞどぞ、マザーAIの監査受けてます。はい。
あ、軍事費が肥大してる件はゼン神族に文句言ってください。
チラッと斜め読みすると一言。
「王室の予算が少なすぎでは? 特にレオ陛下の生活費が……」
「婿殿は贅沢しないからのう……」
あれ……空気が変わった。
これ俺がお金使わない件での小言のターンだ。
俺は笑顔を作って逃亡……だが回り込まれた!
「だってぇ……俺、軍の給料だけで生活できるもん!」
「婿殿、王のあり方について話し合おうぞ」
「ふえええええええん!」
王様になってもこんなもんよ。




