第六百六話
勝山会長のクローンを百人ほど捕獲。
家にいて家族と住んでた方が一番。糖尿と心臓疾患持ち。会社を動かしてたのはこいつ。
長い関係の愛人と住んでた方が二番。糖尿病性網膜症と重度の脂肪肝。
首都星の離島で王様みたいに君臨してたのが三番。健康体。
真面目な市役所務めで四十代で年下のシングルマザーと結婚して、二人の連れ子と一人の実子を育て上げ、コツコツ投資で成功後アーリーリタイアして街の食堂を経営してる普通のおっさんが四番……。孫四人。数年前に前立腺癌の治療済みと。
四番が本物のような気がする……。
ジェスターの直感がオリジナルが四番だとささやいてる。
というか四番は許してあげなさい。
勝山財閥には関わってないみたいだし。
あ、拘束してない。さすがにかわいそう。
もうさ~、なんか理由もなく腹立つ三番が本物でいいや。
さーて勝山を手に入れたマイク&ハマー社であるが、ここで問題が!
おっとぉ!
必殺! 給料天引き強制ストックオプションの術だー!
社員が細かく株を持ってる。しかも退職しても売れない地獄チケット!
労働法の概念のないクソ社会にしかできない暴挙。
そこにシビれぬアコガれぬー!
マイク&ハマーで買うよって言ったらみんな喜んで売ってくれた。
ただの圧政であって社員の忠誠心など存在しなかったのだ!
これだけでも銀河帝国ってマシな国なんだなって思う。
まだ表面取り繕うし、嫁ちゃんになってからは法の支配が機能してるもん。
ラターニアは俺たちの感覚では理解が及ばない。
でもアリかナシかっていったらアリの政治体制だ。
鬼神国も同じだよね~。
クロノスはだいぶ銀河帝国に近い感じだし、太極国も王制国家として理解が及ぶ範囲だ。
だけどさー、レプシトールはわけわかんないよ!
なんでこんなになるまで放置したの!
俺、クロノスの大公ならいいけど、レプシトールの統治したくないもん!
海賊ギルドより民度の低い首脳陣をどうするかだよね。
なんにせよ、これでマイク&ハマー社がレプシトールで一番大きな会社になったのだ。
ということで反政府組織に連絡。
「リーダー、初代首相になりませんか?」
「絶対嫌です」
……断られた。
「カワゴン様……いえ、レオ・カミシロ・クロノス大公陛下! いっそクロノスに併合を!」
「え、やだ。ダメな理由が複数ありましてね。宗教が違う、民族が違う、食べ物が違う……ということで誰も駐留したくないんですわ。それにクロノスは植民地を持たない方針ですし。そりゃ一時期は金にはなるんでしょうけど。後の世に強大な敵が立ち塞がるとか勘弁してくれってのが本音です」
「で、ですが……我々には難しく」
無理なの理解してるのは優秀。
そうなんだよね~。
だから俺は今度はカレンさんに連絡する。
「カレンさん、レプシトールの首相になってみませんか?」
「もし断ったら?」
「最悪滅びますね。それをわかってるから誰も立候補しません」
「クロノスの植民地には……」
「したくないですね。我々はゼン神族の問題さえ解決できればいいんです」
そこまでガツガツする必要ねえのよ。
拡大主義の末路は崩壊からの破滅しかない。
反ゼン神族の仲間増やしてダラダラ商売できればいいよねっていうのが本音だ。
「……わかりました。私がやりましょう。ただし! クロノスはラターニアの停戦を、さらにラターニアと太極国の支援を約束してくださいね!」
「もう準備できてますよ。ただし主要財閥は捜査して責任者の逮捕と解体で。ラターニア人奴隷の件は完全解決とラターニアへの犯人引き渡しを約束してください」
ラターニアだってけじめさえつければ文句はない。
そりゃさー、「犯人がみんな死んじゃったんで事件追えないよ~」ってのはありだ。
ラターニアだってできないことまで要求するわけじゃない。
ただし「犯人っぽいけど証拠がないやつリスト」を作成してラターニアの暗殺部隊を見て見ぬふりしてねって話だ。
やだー! いくら権力者でも逃げられるわけないじゃん!
国家が戦争するくらい怒ってるんだから、その時点で詰んでるんだって!
いくら権力者でもお前ら損切りした方がコスト安いのよ。
勝山だって解体対象だよ。
マイク&ハマーもいくつかに分社する予定だ。
あとは法律作成だよね~。
あ、やべ。忘れてた。
カレンさんと通信終了して本命に通信。
もう話は行ってるはずだけどね。
「お久しぶりです。レイモンドさん」
「悪魔が来たああああああああああッ!」
レイモンドさんひどい!
「帝都の大学の法学部総出……どころか裁判所や軍まで総出で六法……憲法に刑法に民法に商法に刑事訴訟法に民事訴訟法まで作ってるんだからね!」
要するにほぼ作り直しという意味である。
カスみたいな社会制度だったのだ。
つまり社会というパッケージの箱が壊れてたわけである。
「その節はたいへんご迷惑をおかけして……」
「なんなのこのポンコツ社会! どの法律も企業に有利で機能してないじゃないか! 政治学者に政変後の組織作りも回したからね!」
そう、文系学者総出で法律を作ってる。
これが完成したらラターニアと太極国にも渡して会議する予定だ。
「たいへん申し訳なく……」
「ふええええええええええん! 比較文化学の学者にも謝っておいてね! 徹夜でレプシトールの文化を分析してるんだからね!」
「あ、はい。クロノス大公の名で謝礼と感謝状を用意してます」
「……それとこれは真面目な話なんだけどね。財政学と税法の担当が異常を見つけた。専門的すぎてぼくでもわからないから注意して。経済学のザイチェン教授のグループがそちらに向かうって」
「あー……やっぱり……」
財政は家計簿じゃないから帳簿マジックでごまかせる。
ある程度はね。
でもそもそも破綻してたとしたら……。
「あらあらまあまあ……」
あらあら系になるしかなかった。
ラターニア王にも教えてやろうっと。
レイモンドさんが送ってきた翻訳された資料を送信。
太極国にもね。
文系だから同じ理論じゃないけど言ってることはわかるだろって感じだ。
あとは教授たちのスケジュールを組む。
ラターニアと太極国の財政担当者にも会ってもらおうっと。




