第六百三話
パーシオンくんの陰謀が発覚する少し前。
俺たちはごはんを食べていた。
タチアナがいるから屍食鬼への感染は心配ない。
だけど残念ながらそれ以外の安全基準も信用できない。
なのでカミシログループ提供の食材とミネラルウォーターで調理する。
お高いやつ。
でー、せっかくの出張だからとラーメン作ってる。
「お味噌食べたいであります!」
「はいは~い」
ワンオーワンの希望で味噌ラーメンに決定。
野菜炒めてバターも乗っける。
コーンは缶詰で。
タチアナもニッコリ。
タチアナ……まずいものも文句言わず食べるけど……美味しいもののときは表情が違う!
ニッコニッコである。
ラーメン食べながらみんなでダイニングの大型端末でニュースを見てたわけだ。
俺とメリッサとリコちは戦闘員扱いでカロリーブロックを摂取。
ぼけーっとポリポリ食べてたわけだ。
サブスクリプションで契約してるラターニア国営放送を見る。
みんなラターニア語がわかるので字幕なし。
『ラターニア人誘拐についての続報です。ラターニアは今朝レプシトール政府に宣戦布告しました』
「全面戦争だねえ」
俺は他人ごとのようにつぶやいた。
いや他人事じゃないんだけどさ。
まさかさー、ラターニア人を誘拐して人体実験してるとか思わないじゃん。
ってことはルーちゃんも元はラターニア人かな?
いまは女性型ゾークの体だからなんとも言えないけど。
生態パーツ間の魂の移動であるが、ゾークくらい強くないと耐えられないそうである。
つまり妖精さんの体もゾークになるわけか。
それはそれとして、我々は「ラターニアに喧嘩売るとかいい度胸してんな」という感想を抱きがちである。
だがこの銀河においてはラターニア人は差別されてる民族である。
貸金やってるから嫌われてるとか、金返さないと殺しに来るなどのもっともらしい俗説はあるが、一番は永らく奴隷だったことが大きいだろう。
パーシオンやレプシトールでは未だに下に見てる人が多い。
老人を中心としてだけどね。
カレンさんくらいの世代だとプローン皆殺しにしたゴリゴリの武闘派のイメージが強い。
最近では、銀河帝国にクロノスという法律にやたらこだわるクソ面倒くさい国と友好を結んでブイブイ言わせてるとの認識である。
そう……我々銀河帝国は法律と契約に異常なこだわりを持つクソ面倒くさい蛮族と思われてるのだ。
なお戦争であるが、ラターニアはクロノス、マゼラン、旧オーゼンの通行を要求。
別に断る理由もないので素通りさせてる。
むしろ補給もする。
だってレプシトールともパーシオンとも友好条約結んでないもの。
『我が軍の精鋭艦隊は現在クロノスで補給をしてます』
「戦争が始まるねー」
「そうだねえ」
メリッサも他人ごとだ。
レンがお茶を入れてくれた。
「旦那様。いかがいたします?」
「もう俺の介入できる話じゃないし。放っておくしかないよ」
中途半端に介入してラターニアを怒らせる方が嫌である。
それならレプシトールの反政府組織を育てる方がいい。
だとしたら四大財閥に嫌がらせしまくればいいや。
なんて思ってたわけである。
すると速報が入った。
『パーシオン政府の施設からラターニア人を奪還』
「はい?」
「たぶん知ってたんだね」
クレアがつぶやいた。
「えーっと……」
俺が聞くとクレアが教えてくれる。
「たぶん具体的な犯行まではわからないけど。パーシオンやレプシトールでラターニア人が行方不明になってるってとこまでは把握してたんじゃないかな? レプシトールやパーシオンを刺激しないように内定捜査をしてたところ、レオが動かぬ証拠見つけたんだと思う」
「つまり俺は許された!」
よし、俺は悪くない。
レプシトールの状況は必然だった。
「レオ……脇役ぶってるけど……たぶん事件の中心にいるからね……」
「なんてことだ……」
「クロノスはどうするの? 軍はラターニアと共同作戦する気だよ」
「できれば関わりたくないでゴザル……」
するとメリッサが笑う。
「ほら、長屋に住んでた頃にさー、レオの家の近所に住んでたキョウのじっちゃんいたじゃん」
キョウの爺様は長屋に住んでたときのご近所さんである。
テロのときにたまたまラターニア銀行にいたおかげで生き残った人だ。
「最近、意識不明になったんだけどさ~」
「待って、初耳」
「あ、大丈夫。レオの妻としてお見舞いしといたから」
「お、おう……それはありがとう……それで?」
「うん、そしたらさー、爺ちゃん意識ない状態でさー、『パーシオン殺さなきゃ、パーシオン殺さなきゃ……』ってうわごと繰り返しててさー」
たしかに現在のクロノス世論を端的に表している。
テロの首謀者はパーシオンだとみんな思ってるのだ。
だがブラックジョークすぎる!
「息子さん家族に『武妃さま……誠に申し訳ありません』って謝られちゃってさ」
メリッサはクロノスでは『武妃』と呼ばれてる。
クレアはクロノス大公妃、というか皇后にしてマゼラン・オーゼンの女王。
実際は総督なのに……。『賢妃』なんて呼ぶ人もいる。
レンは宮殿を束ねる『淑妃』と呼ばれてる。
この辺は自分で名乗ってるわけじゃない。テキトーね。
俺はあまり権威付けしたくないんだけどな……。
次代に面倒になるから。
なお嫁ちゃんは俺より偉い『銀河帝国皇帝陛下』である。
それはいいとして……。
「つまりクロノスはどうやっても戦争に巻き込まれるのね!」
「巻き込まれるっていうか積極的に参戦かな?」
「ですよねー!」
心配しまくってたらやはりというか……。
妖精さんによるデータサルベージの結果が出たのだ。
「レオくん……冷静に聞いてね……」
いきなり怖いやつ。
「ラターニア人へ屍食鬼を感染させる実験が行われてるみたい」
「レプシトールが?」
「それがさ~……レプシトール四大財閥とパーシオンが裏で繋がってた」
思わず真顔になる。
「これからの展開、ラターニアブチ切れしかないじゃん!」
「うん……がんばって……レプシトール政府倒して」
その日……ラターニア艦隊とパーシオン、レプシトール合同艦隊が激突したのであった。




