第六百二話
ラターニア大使館にお呼ばれする。
お供はリコちとクレア。
いや、ニンジャ隊の事務所に来るって提案されたけど断って俺が行くことにした。
大使館はあまり大きな建物ではない。
ラターニアはパーシオンやレプシトールとは大使館設置できる程度にはつきあいがあるけど、内情を探れるほどがっつり進出できてない感じらしい。
お茶菓子とお茶を出された。
お高いやつ。
なおラターニア大使も治療済み。
クロノスに感謝状が贈られてきた。
「レオ陛下と奥方様はお酒は……」
大使閣下がラターニアのお高いお酒様を出してきた。
大使閣下は俺の顔を知ってるようだ。
「任務中ですんで」
でも断るしかない。
まだ仕事中なのよ……。
リコちが露骨に不満そうな顔してる。
ダメと言ったらダメ。
クレアは無表情。クレアは甘いお酒が好きみたい。
度数が高くて謎の香りのラターニアのお酒はまだ難しい。
その代わりお菓子はもらおうと思う。
月餅みたいなやつ。お高いやつ。
パイナップルのドライフルーツみたいなのが練り込まれてるやつ。
ドライココナッツが上にかかってる甘いやつ。
ラターニアのお菓子なので謎の香辛料入り。
刺激は少ない上品な味。
これで我々の味覚でも美味しいのだから、世の中は不思議である。
「そ、その……イヤーカフについておたずねしても?」
「え? ラターニア人に変装したいって言ったらラターニア銀行が貸してくれたやつですけど」
「レオ大公陛下。ここだけの話ですが……それはラターニア王族とその親戚や友人に送られる身分を証明するものでありまして……その高位の官僚や侍従は知ってるというものです。ラターニア王族を現す文様になっておりまして、はい」
そういうことか。
ラターニア銀行がラターニア王に報告して王宮が送ってくれたのね。
つまり知らぬところでラターニア王族並みの特権を与えられてたと。
……さすがラターニア……そつがない。
たぶん一番恐いのがラターニアだと思うの。
常に危険にさらされてきた民族だから。
友好国だし常にラターニア人を理解しようと努力してるから俺たちは許されてるだけで。
「いままでと同じような扱いでお願いします。銀河帝国とクロノスは法と秩序を重んじる国家ですので」
にっこり。
厚意に感謝しつつ、特権は使わない。
要するにラターニア人救出という貸しはあるけど、借りはないってこと。
イヤーカフの貸与には感謝の言葉を表しておく。
ちゃんとお礼を言うのは重要である。
あとで俺個人の名前で感謝状贈っとこ。
これが外交よね。
とは言ってもラターニア側ばかりに貸しがたまるのもよくない。
ラターニア人はそういうのを気にするタイプだからね。
商売やりながら持ちつ持たれつで仲良くしようと思う。
「それで……その大公陛下には事前にお知らせいたしますが……」
「宣戦布告ですね」
ラターニアとしては他の選択肢ないよねって話ではある。
「やはりお気づきでしたか……」
つきあいが長いラターニアの行動パターンは読めてる。
世論云々とかじゃない。
『ラターニア人を奴隷にするものに死を』
建国以来の国民と国家の約束である。
ここまで徹底してるんだったら自国の奴隷制度やめればいいのに!
実際は事故や殺人の賠償から逃げたやつを奴隷落ちするためにしか使われてないらしいけどね!
国内世論的な問題があるんだろうけどさ!
「わかりました。クロノス人に避難勧告しておきます」
俺が責任あるのはクロノス人と銀河帝国人の身柄である。
ラターニア大使との要件は終了。
「このたびは同胞の救出、まことに感謝いたします」
「ラターニア、銀河帝国、クロノスの友好関係がこの先も続くことを祈っております」
さーて、こんな形式のかぎりみたいな話で終了。
でもさー、ラターニア大使さん……。
奥歯ギリギリ鳴らして殺意満面の顔してたわ……。
うーん、ラターニアとレプシトールの戦争終わらせることを考えようっと。
やーね。
いったん、レプシトールのお家に帰る。
お水飲んでトイレ行って……気合を入れる。
反政府勢力リーダーに連絡。
「ラターニアと戦争が始まる」
「え? どういう……」
「マイク&ハマー社の部隊が勝山本社ビルからラターニア人の奴隷を救出した」
「……はい?」
「ラターニア大使館ブチギレ。あの国の法律は複雑怪奇だから詳細は省くけど、今日の夜には議会が戒厳令とラターニア王への全権委任を発動。ラターニア王が明日にも宣戦布告する予定だ」
「う、嘘……」
この意味であるが「全面戦争じゃワレえええええええええぇッ!」である。
「そりゃレプシトールなら勝てるかもしれないけど、双方大量に死人が出るね」
「は、話し合いで」
「無理。ラターニアの歴史は知ってるだろ。殺すまでやめない」
「か、勝山の首を差し出せば……」
「それで許してもらえるならね。四大財閥会長と一族郎党の首で和平交渉の席についてもらえるレベルだと思った方がいい」
「なんてことだ! いますぐ政府を倒さねば」
「ということでカレンさん、お願いします」
カレンさんと回線を繋ぐ。
「反政府組織の皆さん……もう終わりです……我々の積み上げた資本はなくなります」
カレンさんも小さくなってる。
反政府組織のリーダーも顔が真っ青だ。
「もうマイク&ハマー社も手段を選びません。あなたがた反政府組織を全力で支援します」
「滅亡したくなければ頼むわ」
俺が言うとリーダーがあわてる。
「そ、それならマイク&ハマー社が……」
「それじゃラターニアが許すはずないわけよ。最低ラインは四大財閥は解体。企業独裁から民主制への移行。法の支配。が最低条件じゃないかな?」
別に王制でもいいけど、財閥が貴族になるのは避けたいとラターニアも思うはずだ。
あとね……たぶんだけどラターニアは四大財閥を解体したらクロノス所属の外資系にしたいんじゃないかな?
勝てたらだけどね……。
「ど、どうすれば」
リーダーくんも頭を抱える。
大丈夫だ。俺だってどうすればいいかわからないもの。
でさー、悪いことって重なるんだよね。
最近影の薄かったパーシオンくん……。
例のラターニア奴隷の件にがっつり関わってたんだよね。
どうしてそうダメな方に思い切りがいいの!




