第六百一話
なんで賞金首かかったのかな?
隊長に連絡するとゲラ笑いが返ってきた。
「ぎゃはははははは、こりゃ傑作だ! なあに賞金首になるのは優秀なニンジャである証拠だ」
「勘弁してくださいよ」
賞金首はよくあることのようだ。
で、アーマードリキシが力試しに来たわけだ。
……さてはレプシトール人……お前ら鬼神国人寄りの感性か?
しかたなくカレンさんに泣きつく。
「あははははは……無理かと……大公陛下は一目でただ者じゃないのがわかりますし……恐怖からの行動ですのであきらめるまでまで待つしかないかと」
ニンジャのお仕事に戻るしかないのか?
賞金首なのはムカつくのは事実だ。
うーん……。
とりあえず反政府組織に連絡。
「少し難しいミッションをこなしましょう」
報復開始。
真正面から乗り込み?
しないしない。
そんな面倒な事しない。
公立大学の連中を引き連れて企業本社前でデモ。
私立優遇やめろと叫ばせる。
薄々市民たちはおかしいと思ってたし、輸出の制限で世は緩やかに不景気になってきた。
そうなんだよねえ。
政府がある程度の経済政策を主導できる立場なら内需を重要視するんだよね。
でも輸出の方が儲かるし、儲からなくなれば技術放出しちゃう。
企業の立場が強すぎるとそうなっちゃう。
予想どおり、企業は採用縮減に黒字リストラをかました。
景気がいいときはそれでいいんだろうけど、すでにゲームのルールが変わったのだ。
やりたい放題やって雇い止めとか許されるはずもない。
権力には責任がついて回る。
責任からは逃げられないのだ。
学生はある程度騒いだら撤収。
その辺にいた暴徒が会社に火炎瓶を投げ込む。
はっはっは。
俺たちはそのどさくさに四大財閥の一つ、勝山コンツェルン本社ビルに乗り込む。
とは言っても勝山会長はここにはいない。
どうせいてもクローンだろう。
さー、本社にはなにがあるかなー。
なくてもデータだけもらえばいいもんね~。
サクサク不法侵入。
リコちとメリッサを連れてきた。
クレアとレンには学生たちを逃がしてもらう。
ビルメンテナンス会社の制服を着て、逃げ回る社員をかき分けて進む。
サーバールーム入りたい放題。
はっはっは、バカめ!
と思ったらニンジャに見つかった。
「サンギョスパイ!」
「リコち、メリッサ頼んだ」
「はーい!」
リコちとメリッサがニンジャをボコボコにしていく。
可哀想なくらい一方的にボコボコにされる。
上様ムーブする気も起きない。
で、会長室にはなにもないのがわかってるから回避。
地下に謎施設があるのがわかってるのでそっちに行く。
謎施設は医療施設だった。
なんかミコシ商事のときみたいな嫌な予感がする。
地下施設には檻に入れられたラターニア人が……。
しかも何人も。
おっとぉッ!?
「あー……ラターニア人?」
ラターニア語で女性に話しかける。
女性たちは手術着みたいなのを着用させられてた。
「ら、ラターニア語! み、味方なの!?」
「えーっと、自分クロノス軍カワゴン少尉であります!」
とっさに嘘をつく。
ラターニアでクロノス大公の顔は広く知られてるけど、警備員の制服着てる兄ちゃんが俺だとは思うまい!
いつもよりヤンキーっぽい感じにしてるし、ラターニア模様のイヤーカフつけてるし。
「クロノス……友好国だ! みんなクロノス軍が助けに来てくれたよ!」
こういうときはアレよね~。
「メリッサ、リコち。ラターニア銀行に連絡するから。ここは頼んだ」
「はーい」
ラターニア銀行に連絡する。
大使館はゴリゴリに盗聴されてるから銀行と通信なのである。
銀河帝国の秘匿回線でね。
「カワゴン様」
ラターニア外交部職員でもある支店長が出る。
本来は海賊ギルドのカワゴンという設定のはずだった。
「勝山本社の地下で囚われてるラターニア人を発見した。奴隷契約の確認頼みます」
ラターニアはいまだに奴隷制度がある。
だから地下にいるからといって違法ではない可能性もある。
だが基本的には奴隷制度そのものが形骸化してる。
だからないとは思うんだけどね。
「50年前を境にレプシトール在住の奴隷は確認されておりません」
「了解。どうする?」
「勝山本社に迎えを急がせます。どうかカワゴン様、同胞救出の手助けをお願いいたします」
「もちろん。クロノス公国の名においてラターニア政府の友好条約を履行します」
「では地上で」
さーて話がややこしくなってきたぞ。
これ……ラターニア人ブチギレ案件だわ。
レプシトールで違法な奴隷にされてたというね。
「メリッサ、ラターニアの人はなんて?」
「出稼ぎ労働で来たら捕まって人体実験されたみたい」
ガッデム。
うわぁ……ちょっと待って、パーシオンとレプシトールの戦争にブチ切れラターニアが参戦。
ラターニアはパーシオンとも仲が悪いから……地獄みたいな盤面になってきたぞ。
ラターニア人は法的に正当な奴隷は認めてるが、違法奴隷には厳しい。
全面戦争レベルだ。
どうしよう……金返さないだけで民族全滅させる連中だぞ……。
違法な奴隷なんて見つかったら絶対殺すってなるじゃん!
ラターアニアは奴隷解放のために国家作ったんだぞ!
どうすんのこれぇ!?
リコちもメリッサも「かわいそう。私が助けるからね!」って感じに受け取ってる。
そう……ここに来てとんでもねえ厄災カード引いてしまったことに気づいてるのは俺だけだった。
だから俺は同じくわかる人に泣きつく。
「くれあもーん! たしゅけて~!」
「私でも受け止めきれないよ!」
ですよねー。
ラターニアとレプシトールの絶滅戦争カード引くなんて思わないじゃん!
これさ、なにがヤバいって勝山は最後まで……いや滅ぼされても非を認めないだろう。
そして巻き込まれるのは庶民たち。
それがダメダメ企業支配の末路なのだ。
もう一人の同志にも連絡。
「カレンさん……たしゅけて~!」
「ららららら、ラターニアとの全面戦争ぉッ!? あわわわわ……あわわわわ!」
カレンさんが壊れた。
どさくさ紛れに外に出るとっすでにやって来てた。
隠す気もないラターニア軍の装甲車。
一分で着替えてきたラターニアのスパイたち。
その目は殺意に満ちあふれてた。
「えーっと保護をお願いします」
助けた二十人ほどのラターニア人を引き渡す。
丸太みたいな腕で顔に傷のあるおっさんと握手する。
「カワゴン殿……ラターニア人は受けた恩は忘れません」
「あ、はい。それは友好関係でなんとなく消化する感じで」
「絶対に忘れません。恨みも」
終わった……。
自分の国でもないのに終了のお知らせに悲しくなるのだった。




