第五百九十九話
さーて、まずは公立医学部の話だ。
公立の学校は金がなくて校舎が汚くて学生も貧乏だ。
入学難度も低いとされている。
卒業後も私立大学医学部出身者は金持ち用の美容整形や高額医療クリニックへ就職する。
セレブのお胸に豊胸パックを入れたり、お顔の改造手術をする生活だ。
それに比べて公立学校出身の医師は奨学金の返済のために総合病院で奴隷労働させられる。
学者のレベルは公立の方がはるかに上だが、圧倒的に割に合わない。
医学部すらこれなので他の文系理系も地獄である。
当然、彼らは国家体制に怒りを持っている。
シノさんはいいとろこのお嬢なのでこの辺の状況を知らなかったようだ。
俺はマイク&ハマー社というかニンジャ隊からコンタクトを取る。
ニンジャ隊の親戚の学生から教授陣の知り合いになる。
菓子折と酒持ってお話を聞く。
「なんか困ってないッスか?」
「窓ガラスを直す金もなく……」
「了解ッス!」
カミシログループとマイク&ハマーが研究のパトロンになる。
他の企業は警戒しないかって?
しないしない。彼らは技術を奪うだけ。
金なんて出さない。
だから俺たちで金を出す。
大丈夫大丈夫、安すぎて俺の個人資産でも問題ないレベル。
結局さ、搾取って社会の脆弱性、セキュリティーホールになるのよ。
お酒様大量に持っていって、安全な鍋料理みんなで囲んで酒盛りすれば顔パスだもの。
反政府運動の手伝い?
それは自由意志。パンフは渡すけど強制しない。
いいのいいの。
「大学にご迷惑をおかけするかもしれません」って言っておけば。
ここは人間関係でゴリ押し。
卒業生はマイク&ハマーに大量雇用。
退官された先生の雇用もする。
学閥作れるくらいに受け入れまくる。
はっはっは。すでに私学学閥はいくつもある。
新しい勢力作って社内をかき回してくれる!
そもそもこれだけの国家の大企業で家族と親戚しか信用できない……部下は学閥で固めて相互監視……なんてやる方がおかしいわけでな。
こういうのは風通し良くした方が管理が楽なの!
というわけで国立大学は次々と我らの仲間になっていったのだ。
タダみたいな金額でインテリ雇えるのになにやってんだ?
支配階級固定しすぎて資本主義の利点潰してやんの!
そんな俺も現在入院中。
結界内で数日虫除けだって。
カナシイ……。
三日ほど経つと嫁ちゃんがやってきた。
「婿殿!」
「嫁ちゃん!」
ハグをする。
「寂しかったのじゃ~」
背中ぽんぽん。
単身赴任長すぎるのよ。
いやホント。
「よ!」
メリッサはいつもどおりアッサリ。
クレアはほほ笑む。
「レオ……あなたなにしてきたの?」
ゴゴゴゴゴゴゴゴ……と音がしたような気がする。
「えっと……なんか知らない間にニンジャ隊と反政府団体で幹部に祭り上げられそうに……」
レンがお茶を入れてくれる。
「さすが数多の国を傘下に置く征服王の旦那様です」
「レン……その言葉……心に効く……」
おかしい……なぜこうなった!
「ま、旦那様はたいへん面倒見がいいので当然の結果かと」
「え?」
クレアが驚いたと声をあげる。
「自覚なかったの!?」
「ええええええええ……」
驚いてると病室のドアが開く。
「兄貴来たぞ~」
「来たであります!」
「どうも~」
タチアナにワンオーワンにシーユンも来た。
「アタシたちのいないとこでカニ食って倒れたんだって!」
タチアナにぷぎゃーされた。
ワンオーワンもニコニコする。
「自分もカニ食べたいであります!」
シーユンもほほ笑む。
「私はレオ様に会えただけでもうれしいです」
「シーユンはいい子だなあ……見ろ二人とも!」
「え……カニ……」
「そもそも輸入禁止ですぅ!」
「じゃあこっちのカニで作って!」
「まだ入院中ですぅ!」
醜い言い争いをするとクレアが果物をむいてくれた。
当然、タチアナとワンオーワンに強奪されるわけだが。
「シーユンも食べなね~」
シーユンには喜んで食べさせる。
「それで、これからどうするの?」
「レプシトール引っかき回してこようかなと」
「兄貴、アタシも行く?」
タチアナが聞いてくる。
「いや。リコちと二人が一番動きやすいかな?」
たしかにタチアナがいれば心強い。
だけどタチアナを守り切れないのだけは避けたい。
とキリッとしてたらクレアが俺に衝撃の話を語った。
「うーん。あのねレオ。レイブンさんがね、怒ってたよ」
「はい?」
「カミシロ本家を潰すつもりかって。イソノくんも男子たちに怒られて逆さ吊りにされてたし」
「なんてこった……」
「ということでさ、みんなで行こうよ。マイク&ハマー本社のニンジャ隊ってことで」
あれ……なんか動悸が止まらない。
レプシトール滅亡するんじゃないかな?
あれれ?
「あとさー……」
「はいな」
「リコちゃんとどうなったのか聞かせてね」
おいどん……動悸と冷や汗が止まりませぬ。
なにも起きてない。
なにも起きなかったのだ。
でも……もうそういう空気なのだ。
「え? みんなそういう計画……だったりする?」
「そうじゃが何か?」
「なぜに?」
「なぜにって憲兵総隊長で、カミシロ隊最強格、婿殿と相性も良く、性格も悪くなく、野心もない。しかも婿殿の奇行に体力的について行ける優良物件じゃぞ。どう考えても婿殿の女にしてしまった方がいいじゃろ」
みんな目が笑ってない。
え、なんでキミら、俺の奥さん増えることに抵抗ないの?
「き、聞いてない」
「言ってないからの」
「もっとさー、愛とか恋で語ろうよ」
「婿殿……愛してる」
「お、おう。嫁ちゃん愛してる」
「ならば愛とか恋の話は終わりじゃ」
「アッサリしすぎてる!」
「ええい、やかましい! 婿殿は生きてる間支配領域を拡大する生き物なのじゃ! 血統を増やさねばならん!」
「ふええええええええええん!」
こうして嫁たちとレプシトールに乗り込むことになったのだ。
ドキドキ新入社員編終了。
リコちとの生活は大学生の同棲みたいで楽しかったな……。
向こうでなに食べようか……。
変なもの食べさせるわけにはいかないし……。
ニンジャカワゴン。
まだ修行が足りないようである。
ニンニン!




