第五百九十六話
レプシトールで暴動が起きた。
後に民主化戦争と呼ばれるそれは、穏当なデモから始まった。
レプシトールでは言論の自由はない。
企業に逆らうことは死刑になるほどの大罪である。アホか。
そんなどうでもいいところを摘発する余裕があるなら重大犯罪にリソース割けと。
封建制の我々クロノスですら言論の自由があるというのに……。
レプシトールはデモ隊を許さなかった。
戦車が容赦なく攻撃をくわえ、アーマードリキシがデモ隊を排除した。
それに激怒した市民はヤクザから奪った武器で反撃を開始した。
その武器がラターニアや太極国やクロノスの有名メーカー製の純正品だった事実はいったん置こう。
カレンさんの計画だ。
俺は関与してない。
市民は銃を手に取り……というか慣れてる人が混じってるな。
火炎瓶も……軍用のグレネードだわ。
軍事力の弱そうな会社の倉庫を襲撃して物資を奪っていく。
ソフトウェア産業なら暴動の影響を受けないと思われがちだが、データセンターを襲撃してサーバーを奪っていく。
中のデータもサーバー本体もね。
中古市場にサーバーが大量に流れる。
カミシログループでいただき!
はっはっは、市民の反乱は大罪だがそれも市民側が暴力で上回れないときの話。
普段は企業の仲間である警察すら市民側につく。
企業が持ってる軍は市民の敵だが、それもいつまでもつかな。
給料払えなくなれば市民側につくよねって話でしかない。
企業側は「なにもかもクロノスの陰謀です」というプロパガンダを開始。
市民は「いっそクロノスになるわ」という不穏なことを言い始めた。
なので現在クロノス出禁中の俺が声明発表。
「レプシトールとは友好関係を維持したく思います」
さーて、ここからがドミノ倒し。
企業の合議制政治があだになる。
地方企業、パーシオンとの国境地帯にある軍事企業『サイゴーズ』がパーシオンに侵略を開始。
レプシトールの法律的には許されている暴挙である。
水産物の輸出停止の余波を食らって航路の警備をしてたサイゴーズは経営破綻一歩手前に陥った。
レプシトールではそういった場合、伝統的に他の国へ略奪しにいくのだ。
こうして、双方「軍事費出したくない」という理由でいったん治まったパーシオンとの戦闘が再開された。
タカナシダインのメンツは丸つぶれ。
完全に政治体制のバグである。
パーシオン側もレプシトールの軍事挑発などではなく、ガチの侵略だと気づき応戦。
いままで数倍規模の艦隊を組織し、サイゴーズ艦隊を撃破した。
ここで終わり?
そんなわけがない。
パーシオン側も軍事費が超過した。
賠償を求めてもレプシトールは「サイゴーズが勝手にやったことだもん! アタイ知らないわ!」と拒否。
サイゴーズ社は会長一族が切腹。
会社はパーシオン側の手に渡ったが、あるのは大量の債務だけ。
戦艦などを手に入れても焼け石に水。
なぜなら普段の数倍の規模でフルボッコにしたせいで、完動品がゼロだったから。
そうレプシトールとの戦争は最後まで金の話を考えねばならないのである。
パーシオンはこのタチの悪すぎる行いに激怒。
「賠償しろ、さもなくばレプシトールに侵攻する」と脅した。
おかしい……パーシオンの言ってることがまともに思える……。
当然、命より金がモットーのレプシトールが賠償するはずもなく、全面戦争に突入した。
もう意味わかんないでしょ?
レプシトール四大財閥が艦隊を編成。
パーシオンと休戦交渉をしていたタカナシダインも戦争に参加する。
パーシオンの方が金に困ってるけど、レプシトールも中で反政府運動に火がついた。
なかなかの地獄である。
俺たちニンジャ隊は企業紛争専門のため一気に暇になる。
あっれー?
おかしいなー。
また暇になったぞ。
リコちと遊ぶのも限界だ。
そもそもね!
レプシトールは遊ぶとこ少ないのよ!
クラブくらいしかない。
なので暇を持て余した俺たちは自主的にニンジャ活動に入る。
「レオくーん、本当にここにサーバーあるの?」
「うん、妖精さんがここに大量のデータが送られてるって」
「ルナちゃんがそう言うならそうなのかな?」
そこは古びたビルである。
なんでここを襲撃するかって?
暇だから。
といっても見つからなきゃいいんだよ。要するに。
まずは配達員に扮して侵入。
おっとぉ、入り口は別に封鎖されてない。
地下に降りる。
電子錠のついた入り口がある。
監視カメラ付き。
入り口に痔の薬の入った袋を置いて一度外に出る。
ついでにAI制御の蜘蛛型ドローンを放って電子錠と監視カメラを停止する。
そしたらニンジャスーツになってリコちと侵入。
中は研究所だった。
「やはり研究所じゃん」
「なんの研究かな?」
「さあ?」
温度計で温度が高い部屋を探して、ケーブルを辿って……おっとダクトは使えない。
天井もすき間なし。
じゃあ、ケーブルの配管にドローン放って内側から解錠。
ほい、サーバールームに侵入。
「レオくんスパイ適性高すぎじゃない?」
「そうでもないヨ~」
サーバーのコネクターに合いそうなケーブルを……おっとラターニアの規格か。
サクッと刺して妖精さんのプログラムで侵入。
侵入検知プログラムなどをわからせて……っと。
データをクロノス太極国ラターニアと経由しながら銀河帝国に送っちゃう。
「はーい、妖精さん送ったよ」
「データ確認。解析しますね~」
これがクロノスなら妖精さんが直々に荒らしてくれるのだが、残念ながらここはレプシトール。
やれることは少ない。
妖精さんがやれることはね。
レプシトールのSNSに「サーバー見つけたぞい。一人占めじゃ!」って書込む。
あとは撤収、痔の薬を抱える研究員がいたけど締め落とす。
何事もなく外に出て暴徒の集団が施設になだれ込むのを眺めながら家に帰る。
家に到着して芋ジャージに着替えたあたりで妖精さんから連絡があった。
「レオくん! たいへん! 四大財閥とパーシオンは野生化した屍食鬼を知ってたみたい……極秘で除去薬の研究してたよ……」
「おっとぉ……」
レプシトールの反体制派に送信と。
はっはっはっは!
「結局……レオくんがいるだけで敵が滅ぶのね……」
リコち……そこまでの悪意はないのよ……。




