第五百九十五話
さーてニンジャ隊に戻る。
「監査官殿!」
隊長がもみ手で現われる。
なんか露骨すぎてムカつくな。
「サカモト財閥は?」
「偵察隊によると善戦してるようです」
「サカモトはなんて言ってるの?」
「トーサ県は魚介類の生産地の惑星が集まってる地域なんですが、商売が成り立たないと激怒してます」
そりゃねー。
うちら側の国は輸入しなくなったしね。
野生化した屍食鬼はシャレにならんわ。
たしかにタチアナに協力してもらったおかげで屍食鬼を除去する技術はすでに開発済み。
さすがに聖女結界は無理だけど、身に電気流しつつ、例の鉱石に一定の信号を送ると蓄積されるエネルギーを身に照射する。
こんなんでも屍食鬼対策効果は高い。
エネルギー照射で弱ったところに電気でトドメ。
これが大ヒット。
鬼神国にラターニアに太極国にクロノスの各地で売れまくった。
さらに照射装置単品の派生商品として空気清浄機に我々だと仏壇や神棚に相当する祭壇の浄化用具も売れた。
工場用の大型のものも受注してる。
排気用の電気集塵式のに照射する方式。
なお科学的根拠はゼロである。
なのになぜかアレルギー症状の緩和が報告されてる。
科学的根拠ゼロとちゃんと説明してるのに。
そもそも都市ごと聖女結界設置してるから意味ないだろと思うんだけどね。
だけど除去装置があるとしても、もうレプシトール産海産物は売れないだろう。
そういうイメージついちゃったもの。
だからサカモトの反乱は中央ではどうしようもない案件なのである。
なのでマイク&ハマーでコンタクトする。
サカモトの会長と会談する。
代表取締役のカレンさんがサカモト会長と会談する。
俺はダークスーツに猿の仮面をつけて背中にニンジャソード背負って状態でカレンさんの後ろに控える。
リコちは秘書風のスーツで小面の能面をつけてた。
サカモト会長の後ろにもライフル持った連獅子風鎧武者がいるので絵面はおかしいが正常である。
和太鼓っぽいのになんか違うやつが鳴らされ会議が始まった。
カレンさんは相変わらず胸を強調したスーツ。
サカモトの会長さんはスリーピーススーツに赤いネクタイ……で某証券会社風オールバック。
胡散臭い。
というか太鼓の係はなんの意味がある?
ねえ、気になってしかたないんだけど。
ドンドドン! ぼえ~!
ホラ貝……キミもいるのか……。
琵琶法師はいないな!
いないよな!
いなかった……セーフセーフ。
「サカモト会長今日は会談の席をもうけていただきありがとうございます」
俺たちもお辞儀。
会長と連獅子もお辞儀。
今さら言うけど、レプシトールのサイバーパンクジャパンな世界。
なんだろうね、これ。
「カレン会長もお元気そうでなりより」
「クロノス大公陛下に拾っていただきましたので」
「ではクロノスの先兵と考えてよろしいですかな?」
「そう思ってもらってかまいません。カミシログループからの投資で経営再建中なのは事実ですし、直接指令を受けてないことを証明する手段はございません」
後ろのニンジャがカミシログループとマイク&ハマー社のオーナーなんですけどね!
「ずいぶん正直ですな」
「本物の化け物を見ましたので。私ごときが大物ぶって取引を持ちかけても笑いものになるだけだと気づかされました」
「化け物とはレオ・カミシロ大公陛下でしょうか?」
「ええ。大公陛下は……その……なにを考えてるか私ごときには理解が及ばず……ですが結果はついてくる……恐ろしいお方です」
それ嫌味ですよね。
振り回されっぱなしなので怒ってますよね。
「我々の蜂起すらも大公陛下の計画の一部ということでしょうか」
いいえ違います。
クソびっくりしてます。
完全に予想外です。
リコちがこっち見てる。
やめて……俺悪くないから!
「さあ私では大公陛下の深謀遠慮など理解が及びません」
ザッツノープラン!
ミーはなにも考えておりません!
状況から一番良さそうな選択肢を勘で選んでるだけです!
いままで一番効くお説教状態で冷や汗を流しまくる俺。
「我々もミコシ商事のような末路を辿る……ということでしょうか」
絶対違う。
敵対しなきゃなにもならんっての!
「わかりかねます。ですが大公陛下は最悪の未来を回避しようとしているはずです」
いやカレンさん……なにも考えてないだけです。
いやね! レプシトール来てから判断までの猶予時間が短いでしょ!
俺の食中毒だってカニ食った結果だし。
レプシトールの内戦なんて予想できないよ!
「パーシオンについてはどうお考えでしょうか?」
そりゃメインランドの謎を……って半分答えは出てるか。
パーシオン人は料理店を中心に屍食鬼の感染者を増やしてる。
パーシオン国内が屍食鬼に乗っ取られてることは容易に想像できる。
これにはラターニアや太極国がブチ切れてる。
本気で国民がキレてる。
クロノスはもうとっくに殺す準備ができてる状態だ。
パーシオンの未来はどっちだ!
「長くはないでしょう」
俺は断言しないよ。
未来がどうなるかなんてわからないもの。
あのゾークだって俺たち殺し損なったせいで滅んだわけだし。
プローンが滅びかかってたのなんて誰も知らなかったわけだし。
パーシオンがどう出るかなんてわからない。
とんでもない兵器を用意してる可能性だってある。
警戒は怠らない。
「カレン代表はどう考えられておりますかな?」
「ラターニア、太極国、クロノスと連携してパーシオンを討伐する」
「それは我がレプシトールの亡国に繋がるのでは?」
「どの国も広大なレプシトールとパーシオンを統治する人的リソースはございません。銀河帝国もクロノスを抱え込んだこと自体がイレギュラーとの認識です。企業からレプシトール政治を切り離せば国が滅びることはないでしょう」
それは本当。
もう無理よ。
俺も嫁ちゃんも、拡大なんかしたくないんだって!
「なるほど……そのために必要なのは……」
「四大財閥の統合、または政治的権力の剥奪です」
聞いてない話が出た。
いや敵対さえしなければ自由にしていいのよ。
するとサカモト会長がむせび泣いた。
「そう……それこそ我らがサカモトの悲願。我らは同じ目的を持つ友だ! クロノス大公にもご報告をお願い申し上げます」
「もちろん」
お、おう……。
なんかよくわからんがレプシトールは財閥支配からの脱却を目指すようだ。
どうしよう……三国志の一番アツい場面みたいな展開なのに蚊帳の外。
別に企業が統治しててもいいのよ。
そこがセキュリティーホールなんだからそこから引っかき回すだけで。
こうしてレプシトールは企業支配政治からの脱却を目指すのだった。
なおこの会談は俺の手柄みたいに言われるが、強く否定させてもらう。




