第五百九十四話
さーてクロノス出禁の件であるが、あまりにも真相が情けないためか表に出なかった。
「罰ゲームで新人研修させようとしたら、なぜかニンジャになって暴れ回ったけど食中毒でダウン」なんて誰が信じるだろうか?
自分で言ってて意味わからないんだもん。
そりゃ無理だわ。
どこかで俺が食中毒で倒れて、その原因がレプシトール産海産物だったことにされた。
で、銀河帝国含むグループで輸入停止。
そしたら数社が倒産した。
マイク&ハマー社で買収。
これは経済的合理性などではない。
情報収集のためである。
サンプルを提出してもらい銀河帝国、クロノス、太極国、ラターニアで検査。
幸い我ら陣営はゾークや屍食鬼の研究に関してかなり進んでる。
おそらく作り出したゼン神族よりもね。
創造主だからって創り出した物を理解しているわけじゃないのだ。
それでわかったのは……あのカニ……。
ゾークの遺伝子が発見された。
ここ十数年で開発された品種らしい。
さらにわかったのは火を通すことでレプシトール人には無害……くらいに毒がなくなるようだ。
この場合の『無害』は死なないって意味だ。
大量に食べれば死ぬ。
というか、スシ食べて高頻度でおなか壊してたんじゃないかな。
カリフォルニアロールに使われてたサーモンらしき魚は、陸封型のマス。
完全養殖で安全性が高い。
やはりカリフォルニアロールは安全だから食べていたわけだ。
でだ、ここからがシャレにならない。
えーっと、屍食鬼。
野生化してました。
シーフード全般に寄生してた。
アニサキス的な何かだと思ってたのを解析したら知能を失った屍食鬼だった。
これを発表するかさんざん迷ったんだけど、マイク&ハマー社を通じて水産業界の重鎮にコンタクトを取った。
もみ消したら暴露するつもりだった。
だけど水産業組合が緊急会見を開き謝罪。
我々からすればこれで終わりかなって思ってた。
しばらく食べられないだけだよねって。
暴動発生したよ。うん。
病気による出勤停止でリコちとコタツでふて寝してたのよ。
酒も飲めないし、美味しいものも食べられない。
だからマンガとアニメ見ながらゲームしてダラダラしてた。
「リコちの番」
「ほーい。あ! スリのシルバー!」
ボードゲームでリコちの手持ち資金がゼロになる。
とはいえ俺も貧乏ゴッドを背負ってる身。
我々はNPCがいるのに最下位争いをしていた。
「ジョージョジョの40巻ある~?」
「その辺の山に置いてるはずですよ~」
やはりコタツに入ってるときは紙の本。
もぞもぞ動いてマンガを取る。
アニメの続きをと端末を見ると「緊急警報」と書かれていた。
クロノスや銀河帝国じゃなくて、レプシトールの民間向けニュースの警報である。
はて?
「リコち、緊急警報だって」
「へ~……え?」
お休みモードの頭がハッキリしてくる。
はい通信。
「嫁ちゃん! レプシトールで緊急警報! なんか記者会見するみたい。そっちも同時視聴設定する!」
「お、おう……なんじゃ?」
ジャージ姿の嫁ちゃんが眠そうに目をこすった。
向こうはまだ夜中か。
すぐに会見が始まった。
「サカモト財閥が企業体政府に宣戦布告しました。サカモト財閥はトーサ県を不法に軍事占拠。国軍と戦闘状態になっています」
「はい? ……婿殿……なにかしたか?」
「リコちとこたつでぬくぬくしてマンガとアニメ見ながらゲームやってただけだけど……」
「最高の休日じゃの……」
なお、なに一つエロいイベントは発生してない。
毒の効果かお互いそんな気力はなし。
「そうじゃなくての……政治工作は?」
「なにも。毒の件を公表するか委ねたくらい。公表しなきゃマイク&ハマー社で記者会見する予定だっただけ。って嫁ちゃんも許可出したでしょ」
「サカモト財閥は……えーっと……」
「水産業というか食品産業の一番大きい財閥だよ。レトルトから業務用まで。すし店のほとんどが取引あるんじゃないかな?」
サカモト財閥は汚染の件で政府を批判し、独立を強行したようである。
「ほう……それで勝算は?」
「軍需産業のストライク社が本腰入れるかによって変わるかな? 軍の弾とか装備握ってるのがストライク、食糧握ってるのがサカモト財閥。でも経済効率考えたら戦争自体避けそうな気がする、企業的にはサカモトが別の国でもかまわないし」
いかにストライクが強くても食糧がなきゃ維持できない。
結局、企業に軍事力持たせるのが間違いだよねって話だ。
でも最終的には鎮圧されるよね。
「それにしては報道がおかしいようじゃ……ほれ見よ」
「え?」
あっれー?
本格的な艦隊戦が開始されてる。
それもなあなあじゃない。
バカスカ撃ち合ってバンバン人が亡くなってる。
「なしてぇ?」
報道もおかしかった。
どのニュースもサカモト財閥を支持してる。
「兄上が父上を葬ったのと同じじゃ。このままでは国が滅びる。サカモト財閥はそれを感じ取ったのじゃ」
「うっわー……」
ここまでは他人事だった。
嫁ちゃんは続けた。
「婿殿、獲れ」
「はい?」
「マイク&ハマー社を使って天下を取れ。いまこそ好機じゃ」
嘘だろ……。
リコちを見る。
寝癖つきまくりでボケまくってた顔が一気に真顔になる。
「リコち、正義のためとか言わないでね」
「私たちの安全のためにでしょ。レオくんってさそういうところ強情だよね」
「俺たちは外国人だからね。そこは一線引かないと」
ただ俺は嫌な予感がしていた。
だってさ、野生化した屍食鬼はわかるけどさ……どこから来たのって話だよね。
それにはレプシトールを牛耳ってる巨大企業の全貌を暴く必要があるのだ。
「リコち……俺ニンジャに戻るわ」
「了解」
こうしてニンジャとして悪を暴く……って言いたいところだけど、実際はタマネギを一枚一枚むくみたいな作業だよね……。
こうしてうれし恥ずかし同棲生活。
実際はうれしくも恥ずかしくもなく、ひたすらダラダラしてただけの生活から、スパイ活動に身を投じるのだった。
「最後にお菓子を」
リコちが袋を開けようとするが裂けて中身を下にぶちまけた。
「いきなり幸先悪いのやめて」
「えへへへへへ」
いきなり不安である。




