第五百九十三話
13番を投与。
他の解毒剤は自動だけど、13番はそうじゃない。
単に後から開発した試作品だからだ。
13番はゾークや屍食鬼用。
特にゾークの肉に存在する毒に強い解毒作用を持つ。
え……あのカニ……ゾークなの?
食べたの少し前……あ、そうか蓄積するのか。
というかレプシトールの海産物ほとんどがアウトってことか。
ニンジャ隊に合流。
タイチョサンに接触する。
「タイチョサン」
「監査官、普通にしゃべってください」
隊長の野郎……俺の扱いがだんだん雑になってきたな。
「隊長、毒の反応が出た。ゾーク毒だ」
「な、なんだと!」
「焦るな。蓄積するタイプの毒だ。明日ラボで検査する。ニンジャ隊はラボで検査するように。社員も緊急健康診断をする」
嫌な予感ちゃん。
直感ちゃんがビシバシ指摘してくるのよね。
その……太極国の屍食鬼汚染や、クロノスのイナゴテロ。
それが一気に繋がりそうな気がするのよ。
俺とリコちはいったんラボに運ばれる。
そこで精密検査。
……たいへんなことになった。
ゾークの毒に屍食鬼に……フルコンボ状態。
解毒薬とタチアナの結界があるから治療は簡単なんだけどさ……。
それでカレンさんも検査。
はい、キャリア!
どうやらレプシトール人はある程度の耐性があるようだ。
簡易検査じゃ陽性が出なかったのだ。
まだ検査方法すらこの精度なのである。
つまり……。
「感染源はカリフォルニアロール」
「生魚の方でしょが」
リコちに突っ込まれる。
でだ、なぜ我々にだけ症状が出たのか?
カニの食べすぎである。
あれゾークの遺伝子を使ったカニだったみたい!
どうも銀河帝国人はゾーク毒への耐性が低いようである。
俺とリコちは肝臓の数値がヤバいことになった。
しばらくお酒は禁止である。
軍用のナノマシンが浄化してくれたので助かったというわけである。
さて……ここからが恐ろしい話だ。
レプシトールの海産物であるが広く流通してた。
検査はしてたんだけどさ……まさかゾークと屍食鬼が検出できるかできないかくらいでブレンドされてるなんて!
カミシログループも銀河帝国への輸出を考えていたが緊急で冷凍品の製造を停止した。
廃棄する前に研究用のサンプルとして研究される。
ケビンは外科だったのでセーフ。
他の科の患者の面倒も見なきゃいけない程度で許された。
内科と食品衛生の元院生組は阿鼻叫喚のデスマーチ地獄に突入。
タチアナも走り回る。
ところで俺になぜ派手な症状が出たのか……。
「光り物じゃない?」
小魚、青魚……つまり生物濃縮である。
ネギじゃなかった!
ネギは許された!
なんでレプシトール人がカリフォルニアロールばかり食べてるかわかった。
まだ安全なのだ。
本能的に安全なものを見分けていたのだ。
さらに言えば、我々のいなり寿司。
完全に安全な食べ物だ。
そりゃ人気爆発するわ!
さらに言うとレプシトール人すら食べないパーシオン料理……。
どう考えてもヤバいブツぞ……。
太極国は即時輸入停止。
ラターニアも現在約束した分は納入、次のロットから輸入禁止にした。
クロノスも一旦停止。
と言ってもほとんど自前で賄えていた。
ただ国民に検査を訴えかける。
鬼神国は遠すぎたせいで許された。
つきあい自体がない。
いつも得だよね。キミら。運のパラメーター高すぎるよね?
ニンジャ隊を含めたマイク&ハマー社はラターニア製の冷凍食品に切りかえ。
さて……
『クロノス公国という大国の元首である大公が身内の罰ゲームで他国へ潜入。カニを食べすぎて食中毒を起こした』
という情けないニュースをどうするか。
それが問題だった。
隠蔽せねば。
とりあえず食中毒のニュースは流すとして、どこで食中毒を起こしたのか、なにを食べたのかについては言及しなかった。
だが、レプシトール産海産物の緊急輸入停止と全国民への検査の訴えが、なにが起こったのかをこれ以上ないほど物語っていた。
俺については本気で不死身だと思われてるせいか心配されてない。
それはそれで悲しいがパニック起こされるよりはマシだ。
ただ……。
「嫁ちゃん……そろそろ許して……」
「嫌じゃ!」
嫁ちゃんでしょ。
「だいたいね! レオは食い意地張りすぎてるの!」
クレアでしょ。
「あははははー! レプシトール行く話が出たときからなにかやらかすとは思ってた!」
ゲラ笑いのメリッサでしょ。
「旦那様。だから私が御一緒しますとあれほど……」
レンもヨヨヨ……とわざとらしく嘆く。
「レンはクロノス宮殿の仕事があるじゃろが!」
「だって旦那様と旅行したかったんだもん!」
という感じで全方面から怒られた。
イソノも男子たちにお説教。
「いやだから新入社員研修のはずだったんだって! ニンジャになってカニ食って食中毒になるとか予想できねえだろ!」
それはそう!
なにも予想できない。
しかもだ。
俺……しばらくクロノス入国禁止になっちゃった。
ほら……ゾークと屍食鬼のコラボだし。
検疫的に……。
治るまでクロノス出禁。
とりあえずお説教されまくった後で入院はなしに決まった。
経過観察である。
家に簡易結界を作る。
これで屍食鬼は死ぬはずだ。
すっかりやさぐれたリコちがコタツに足突っ込んで寝てる。
「レオくん……冷凍食品しか食べちゃダメだって……」
「インスタントラーメンとフリーズドライのやつは食べてもいいってよ」
「カニ……」
「ゾークの遺伝子つきだぜ……」
とはいえ俺たちは遺伝子組み換え食物にはなれている。
それほど忌避感はない。
ゾークや屍食鬼じゃなければね。
「お酒飲みたい……」
「肝臓の修復終わるまで禁止だって」
「刺身」
「絶対やめろ。ベジタブル寿司も衛生状態を保証できないからやめろって……うどんでも食う?」
クロノスから輸入した麺だ。
「食べる……」
水も水道水禁止。
カミシログループのミネラルウォーターである。
うどんを鍋焼きにして。
それと安全なのがわかってる冷凍油揚げを乗せてっと。
リコちと鍋焼ききつねうどんを食べるのだった。
これがレプシトールの動乱の幕開けだったなんて……普通わからないよね?




