第五百九十二話
カミシログループもレプシトールに商標を貸し出すていで営業開始。
同じ名前で同じサービスだけど資本関係なしの会社だ。
テクノロジーとして見落としがちだが、こういう法律をこねくり回すのは銀河帝国人の得意分野だ。
内紛と宮廷政治が横行してた銀河帝国は法律のこねくり回しにおいて他の文明に対して数百年分先を行ってる。
ラターニア人と仲良くできるのはこういうとこなのである。
ラウンドワンツースリーを全土に展開。
それを見てリコちが呆れた声を出す。
「また文化侵略……」
「ちがいますー。我が国の文化を知ってもらうんです~」
そもそも俺らが露骨なプロパガンダに及んだことはない。
するとしても「安全で美味しいもの食べたいよねえ」とか「みんなと仲良く」とか「米を粗末にするものは許さない……絶対に……絶対にだ!」とかくらいか。
逆に言えば我々はそのくらいしか主張はない。
カリフォルニアロールだって永遠に続かなければ問題ない。
それしかないから問題なわけでな。
あとフライド寿司。
なぜに天ぷらじゃなくフライなのか……。
食べないけど、存在しても文句は言わない。
というわけであと少しで帰れるかな。
俺じゃなくてもいいし。
現在、ミコシ商事を吸収した我々のレプシトール支配率は10%くらい。
マイク&ハマー社の弱体化を考えるとできすぎくらいである。
あまりやりすぎてもよくないからね。
なんでもそうだけど欲をかきすぎるのはよくない。
このまま政治的影響力を残しつつアーマードリキシ問題さえ解決すればいいと思う。
で、パーシオンに嫌がらせしつつクロノスへの敵対感情を抑える。
パーシオンも残して三カ国で睨み合いしながら安定というのが目標だ。
銀河三分の計とでも名付けようか。
ゼン神族のメインランドもこれさえしてしまえば封殺できる。
だって来れないもの。
緩衝地帯のオーゼンとマゼランには悲惨な時代だけどね。
俺たちの子孫がそのうちなんとかするでしょ。
完璧すぎる。
なんて思ってたら事態が動くのであった。
パーシオンである。
ちょっと時間を与えすぎたかもしれない。
明らかにゼン神族がバックにいるのだろう。
レプシトールを牛耳る大グループ。
タカナシダイングループに接触したとの報告があった。
タカナシダイングループは機械化手術と宇宙産業の一大グループである。
当然、アーマードリキシ事件の有力な容疑者でもある。
そことパーシオンが接触したのである。
まずいなって話になるのでニンジャで情報収集する。
どうやって?
社交クラブで情報交換。
機密なんかいらん。
欲しいのは食料の情報だ。
パーシオン人は寿司を食べない。
塩にハーブに胡椒。そして香辛料。
パーシオン料理店からなにを食べたか聞けばいい。
そうだな、名目は経営難の寿司レストランがパーシオン料理店に業態変更したいって話はどうだろう?
「はは、ウケないと思うよ。キミ、クロノス人だろ? 我が国の食事場を知らなすぎるよ」
リコちと社交場に潜入。
相手はパーシオン料理の有名店の事務職員。
「わかるかい?」
ラターニアの黒のスーツに黄色のシャツ。
一見すると水商売風にしてみた。
靴や時計はラターニアの高級ブランド。
若いくせに水商売で少々成功した人生なめ腐ってる経営者という役だ。
リコちはその女。
今日は目隠れ禁止。
若いキャバ嬢風にしあげた。
眼鏡をかけた中年男が笑う。
「そりゃウロコないし。パーシオン人かい?」
「オーゼンさ」
「あーなるほどね。あそこから逃げてきた人は多いよ」
俺と中年男性、どちらの発現も嘘である。
俺はオーゼン人じゃないし、レプシトールはオーゼン人の受け入れを渋りまくった。
いるのは不法滞在者だ。
「それでパーシオン料理だっけ? たしかにうちはパーシオン料理店だけど……なぜわかった?」
「スパイスの懐かしい香りがしてね」
「なるほどね。それで……やっぱり寿司店は経営厳しいのかい?」
向こうも情報が欲しいようだ。
はっはっは、寿司店が経営厳しいってのはこちらが意図的に流すデマなんだけどね!
俺だけじゃない。
ニンジャたちが雑談を装ってデマを流してる。
「マイク&ハマー社のテイクアウト寿司に負けてね。寿司バーの限界が見えてきたよ」
「ああ、それか……最近よく聞くね」
例のいなり寿司の店である。
「でもパーシオン料理はやめておいた方がいい。うちも外国のお偉いさんが来るからなんとかなってるだけだしね」
「そうかい。やはり飲食は厳しいな」
はい有力な容疑者を発見。
あとでドローンやゴミ箱漁りで情報丸裸にしてやろうっと。
「ま、どの業種も甘くはないってことさ。ところで彼女……すごい美人だけど」
「ああ、うちのかみさん」
リコちは顔にウロコを貼り付けてる。
目はコンタクトレンズを入れてる。
特徴的な背の高さは再現できないから完全なレプシトール人には見えないけど。
それでもレプシトール人の血を引き継いでるようには見える。
「これは失礼。大事にしなよ」
おっと、紳士だな。
口は軽いけど職場スタッフとしては現場の空気を悪くしない優しいタイプ。
引き抜こうっと。
うちは優秀で空気を悪くするタイプより、こういう人を優先する。
男性と別れてリコちと腕を組む。
「ふふ、デートみたい」
「残念ながらお仕事なのよね」
「ねえ、お酒」
「加減できるようになってからね。ジュースで我慢しなさい」
リコちは飲みすぎてダウンした。
しばらくお酒は禁止。
「それにしてもレオくん……ホスト風似合うね……」
「リコちもキレイだよ」
「そういうとこやぞ!」
あれ……選択肢ミスった?
なじぇ?
「ところでさ、思ったこと言っていい?」
「なんだか怖いのだが」
「怖くないって、ただの感想だから。レオくんってさ……こういうのも得意なんだね」
「スパイにならなくてよかったよ。帝都学校にいたら本当に全滅だっただろうし」
スパイというか情報分析系の将校を養成する士官学校はゾークの帝都襲撃で壊滅。
生徒は皆殺しだ。
そっちにいたら俺も死んでただろう。
「生き残ったらから言える話だよね……婚活も」
あら……おかしい。
リコちの口からまともな発言が出るとは……。
嫌な予感がする。
あれ……汗が……。
「レオくんすごい汗。大丈夫」
「い、いや、ただの冷や汗……」
「それ違うよ。今すぐナノマシンのステータス確認して」
「え?」
ナノマシンのステータスを確認する。
え……生物毒?
どういうこと?
「り、リコち、今すぐ13番のアンプル投与……」
俺はナノマシンのメニューから13番を投与する。
解毒薬だ。
「あ、うん! 13番!」
盛られた?
いや……でもいつ?
俺は混乱するのだった。
「食あたりかな?」
あ……。




