第五百九十一話
海賊ギルドとミコシ商事吸収合併の会議をする。
要するにスパイの方針を決める。
俺の知ってるニンジャの業務だ……。
本来の業務はスパイだよな。
海賊ギルドの幹部を連れていく。
元から船の販売をしていた商人寄りの男である。
部下たちも太極国の服を着た商人風だ。
イーエンズ爺さんの元部下かなと思ったら違うグループのようだ。
なにが言いたいかというと、彼らは屍食鬼とかプローンに武器を叩き売ってた連中なのである。
俺が苦戦した原因を作ったシゴデキ集団である。
仲間にしたら……まー……頼りがいあるわ……。
海賊ギルドって下はアホアホなんだけど上澄みは政争で負けて落ち延びた上流階級なんだよね。
落ち延びて海賊やってられるんだから超有能なのだ。
「カワゴン様、この部門は軍艦の設計販売メンテナンスなどを行ってました。ですがミコシ商事吸収後、開発責任者がエンジニアと出奔、現在行方不明にございます」
「レプシトールは銀河帝国やクロノスよりも技術力が上だからね。銀河帝国とクロノスの技術者入れて解析して」
「かしこまりました」
短距離ワープの技術も盗んだはいいが、検証も解析も間に合ってない。
ハードウェアはレプシトールの勝ち。
うちらの知らない技術がかなりある。
これは認めねばならない。
とはいえ、絶望的に不利ということはない。
そもそも俺たちは高度な技術を持つ文明のテクノロジーを次々獲得してる文明なのだ。
結局うちらって筋力でジャイアントキリングしまくりの蛮族なのよ……。
ゾークからは生命医学のテクノロジーを、ラターニアからはミサイルの技術を、太極国からは強力な大型戦艦の技術を得てる。
クロノスからは生活の技術全般である。
征服したものだけじゃなく、お金や技術の交換、ときには産業スパイからも技術情報を獲得してる。
と言ってもラターニアも太極国も銀河帝国の技術盗んでるからね。
ラターニアにはお菓子のレシピを無償で提供したし。
太極国ではゾークテクノロジーの研究が盛んみたいだし。
こういうのはお互い様だよね。
むしろクリーンでいる方がおかしいわけで。
ただ制御も含めたソフトウェアは銀河帝国の圧倒的勝利ではある。
だってうちには妖精さんがいるもん。
センサーとかも銀河帝国の方が進んでるようだ。
実は各国からマザーAI、つまり妖精さんの製法について問い合わせが来てる。
当然、スパイも大量に来てるだろう。
「過去の非人道な実験による偶然の産物のため詳細は秘匿します」で納得してもらってるけど、それもいつまで保つか……。
そういうわけで「せっかくレプシトールの中にいるし、技術盗んでみよう」である。
とりあえず一ヵ月ほど暮らしてわかったんだけど、建築技術は銀河帝国やクロノス公国の圧倒的勝利。
魚の養殖なんかの技術は圧倒的にレプシトールの勝ち。
うちらは養殖できるけど海水魚はコストが高いままなのだ。
結局淡水魚の方が安いよねっていうのが実情である。
個人的には一番欲しい。
だからミコシ商事の水産部門を捜索。
我々は食べ物へのあくなき欲を抱えている。
「水産部門のスタッフはそろっております」
「ではクロノスに事業拡大して」
「かしこまりました」
これで美味しい魚貝の目処が立った。
……プローンの遺伝子組み込んだとかの恐ろしい話じゃないよね?
絶対違うよね?
「あのね……プローン」
「至急調査いたします」
ギルドの人も眉をピクピクさせていた。
おそらく同じ事を考えたのだろう。
それだけはやめてね。
「あとゾークと屍食鬼も」
「最優先で調査いたします」
やりかねないのが怖い。
リコちと食べたカニが……やめとこ。
さて会議も終わったのでニンジャのお仕事。
イカ買うでしょ、酒買うでしょ……。
カリフォルニアロールはさけて、いなり寿司を買う。
こんにゃく稲荷もあるじゃん!
買おう。
で、ニンジャの詰め所に戻る。
「みんな昼飯買ってきたぞい」
「あざっーす、カワゴン!」
ニンジャ部隊は当初、俺が監査官であるという事実に驚いたが……飯と酒で懐柔した。
「夜勤の人たちはこれね。酒飲みすぎるなよ」
「あざっす!」
もうすっかりお友だちである。
「……人間力が高すぎる」
リコちがつぶやいた。
先日のアーマードリキシ事件で俺は方針を転換。
カオスをもたらして敵の政治をグダグダにするいつもの手を封印。
それよりもニンジャ部隊を使って他の財閥の下っ端とコンタクトを取った。
報告が必要な買収とかじゃない。
同じ業種の人の交流会名目で人脈を作らせまくった。
脅迫なんてしないしない。
これこそがレプシトールの弱点なのだ。
レプシトールは企業による民衆圧政国家。
つまりなにもかも企業の都合で動いている。
SNSなんかもそうだ。
帝国のアホアホ大喜利SNSなんてレプシトールにはない。
あるのは採用活動や人材募集SNSのみ。
クソつまらない。
だけどいきなり銀河帝国流のエンタメを入れても受け入れられない。
企業が潰すだろう。
だから業界交流会のていで楽しい社交クラブを作る。
遊びはスポーツやボードゲームでいい。
銀河帝国には無限にコンテンツがある。
そこからギャンブルにご案内。
海賊ギルド主催の秘密の賭場である。
それって最終的に脅迫だろって?
違う違う。
生かさず殺さず。
少し勝たせるくらいでいい。
そうね。
賭場はギャンブルで儲けなくていい。
交流クラブから賭場がある施設の飲食やリゾートの収益でとんとんくらい。
海賊への給料払えればいいくらいで調整。
短期には情報収集。
長期には依存してもらう。
そうだな。
選ばれた紳士の社交場くらいの優越感を持ってもらう。
ここで重要なのはレプシトールではギャンブルは合法。
ただしレプシトールに存在するのはケツの毛までむしり取る系しかない。
ちょろっと遊ぶ施設はない。
スポーツも相撲はあるが伝統とか学問扱いだ。
選択肢が極端に狭い。
ダーツやビリヤードくらいでも頭バカになるくらい楽しいようだ。
こういうのはカウントワンツースリーが得意だ。
友だちも作ってもらう。
とにかく生活の一部として秘密のクラブに依存してもらうのだ。
するとまあ不思議、各種産業の生データがほぼ無料で手に入る。
結局、適度に下品な文化って社会に必要なのねっと。
酒と女と教養だけの社会は弱いのさっと。
「ふ、ふへへへへ」
「ふ、フレンドリーな悪魔が本気出した」
なんすかリコち?
文句あるなら直接言いなさい。




