第五百九十話
リコちとの生活は楽である。
お互いよく知ってる仲間だし、生活力はある。
下着姿でのニアミスも……まー、軍隊だからね。
急な出動とかで間違って見ちゃうことあるよね。
多少はしかたない。
むしろそういうイベントは減ってるはずだ。
……減るはずなのだ。普通は。
どてらを羽織ってタオル地の腹巻きしてコタツで眠るリコち。
普段隠れてる目が見えてて幸せそうだ。
どうやら俺はリコちの中で野郎に含まれないようだ。
コタツの上に乗ってるのは夕飯の鍋。
カニである。
こういうのも俺の仕事だ。
料理じゃなくて空気感、つまり市民の生活を知ることが仕事なのだ。
その中には各種物価を知るというのもある。
データだけじゃわからないのさー。
このカニ……正確にはカニじゃなくてコシオリエビみたいなんだけど、とにかくカニ。
それがさー、安いのよ。
本当にバカ安いの。
なんかさー、完全養殖できるみたい。
銀河帝国でも技術自体はあるんだけど、結局高くつくんだよね~。
いやほら、カニとかエビって生まれたときプランクトン状態なのね。バカスカ死ぬから面倒なのよ。
ま、細かいことはどうでもいい。
カニカマより安いカニは正義だ。
ゾーク戦争中はカニなんて一生食べたくねえと思ってたが……いまは食べたい。
なので個人のお小遣いからカニを買いまくる。
このたび領地経営順調につき、俺と同じお小遣い制になったリコちもカニを買いあさる。
なんで高級寿司でカニカマサラダ軍艦巻き出してるかわかった。
カニの方が安いのだ。
そしてさきほどの晩ご飯の話になる。
まずは塩ゆで。醤油とマヨネーズは用意した。
リコちも俺も食欲を暴走させる。
本命はかにしゃぶ……というか鍋。
つゆにテキトーに野菜をぶち込みカニをイン!
「ふへへへへへ~」
顔が緩みまくるリコち。
そこにブツをドーン。
「そ、それは……!」
「少しなら飲んでもいいって」
お酒様である。
俺たちはケガが多かった。
なので痛み止めの効果が悪くなるのを避けるためにアルコール禁止だったのである。
それがケビン先生と複数のお医者様の見解で解禁になったのだ。
ヒャッハー!
ということでドーン!
「お高いお酒さまー!」
初心者なので甘いやつもドーン!
「カクテルー!」
「レオくんナイス!」
「スルメ焼く?」
「ないすぅッ!」
「ちょっと換気するベ」
「へいへい」
窓を開けてスルメを炙って七味に醤油にマヨネーズ。
裂いて出す。
「ふへへへ……」
「ふへへへ……」
色気?
そんなものはない。
純粋な食い気だ。
ニンジャ隊は普段はイベントの警備が多い。
つまり……まかないがカリフォルニアロールである。
いや嫌いじゃないんだけどさー、飽きるのよ。
だからこういう変わったのものが食べたくなる。
実際、俺が個人的に展開してるテイクアウト店。
いなり寿司の店だが……。アホみたいに繁盛してる。
さてはカリフォルニアロールに飽きてたな。キミら。
カニしゃぶというかカニ鍋にスルメにお酒様……。
俺はちびちび飲んでる。
お酒がすごく好きなわけではないからね。
どちらかというと、うちの一族は甘党なのである。
だけどヤバいのはリコちである。
ハイスピードで飲み始めた。
「リコち! 速すぎるから! ちょっとストップ!」
「ぎゃはははははは!」
止めようとするとリコちがキレはじめる。
「おいレオ、そこに座れ」
「あ、はい」
正座。
当方に服たたんで土下座の用意あり!
「どうしてキミはハーレムを拡大するのかね?」
「なりゆきでごぜえますお代官さま」
なんでこうなったんだろうね?
「なのにどうして私の旦那は見つからない!」
「本当になんでだろうね?」
条件自体はいいのにね。
ただ最強の一角なだけで。
面白い子だし。
……壊滅的に色気がないくらいで。
「結婚したい結婚したい結婚したい~!」
ジタバタする。
どうやら酔ってはいるがリバースの兆候はなさそうだ。
本当に盾役だけあって頑丈よね。
「でもさ~、リコちさ~、なんで結婚したいのよ?」
「専業主婦になりたいから」
「そういうとこやぞ」
嫁ちゃんとかクレアみたいに「しゅきしゅき~」ってしてくれるとかさー。
メリッサとかレンみたいに俺の前だけベタなれとかそういうのがほしいわけじゃん。
「だって~! クレアちゃんもメリッサちゃんもレンちゃんも! すっごくきれいになったじゃん!」
「お、おう、みんな最初から美人だぞ」
「ホントそういうとこやぞレオくん! うらやましー! そうだからケビンくんまで美人になっちゃってさー」
「待て、やめろ! それは葛藤が解決してねえから! ほんと考えると頭痛くなるからやめろ!」
「最近のケビンくんさー、モテるんだよ~。美女で巨乳で明るくて優しいもんね」
たしかにそうなんだけどさー!
モテるのわかるんだけどさー!
「うらやましい……嫉妬だけで人が殺せそう……そう……関係ないレオくんを」
「俺かよ!」
「クレアちゃんもメリッサちゃんもレンちゃんも……みんな急にあか抜けて……女子憧れの存在になったんだよ……」
「お、おう」
「この美女製造機があああああああああ!」
「俺、何一つ悪くないよね!」
ぐびっと酒を飲む。
どうしよう……こいつ……酒癖悪い。
「もうね! 結婚できなかったらレオくん責任取ってね! 約束だよ!」
「片方の同意がないのを約束って言わないと思うのよ」
そしてリコちは「少しだけよ」って言ったはずのレモン味でストロングなやつを一気飲み。
そのまま目をグルグル回して眠りはじめた。
なにこのカオス。
寝ゲロされたら嫌だなと思ったけど、普通に寝息立ててた。
俺は残りのスルメと鍋を食べながら、お家に帰りたいと思うのだった。
やっぱりスルメ美味しいな。
レプシトールだとイカもタコもクッソ安いんだよね。
完全養殖できるから。
……次はたこ焼き作ろう。
すると現在、俺の端末に常駐してないはずの妖精さんからメッセージが入る。
なによ?
確認するとサムズアップのスタンプが送られてきてた。
「どういう意味?」
「ヴェロニカちゃんに報告しときますね」
どういう意味よ?
リコち腹出して……タオル地の腹巻きしてるのね。偉い。




