第五百八十九話
「大関横綱を素体にしたアーマードリキシを一瞬で……ハラショー!」
俺たちに胡散臭い称賛が送られる。
「ゴッチャンデス」
腰を落として腕を広げてからゆっくり体をあげてく不知火型の土俵入り。
リコちも調子に乗って右手を斜めにあげて左手を脇に当てる雲竜型の土俵入り。
リコち……気づいてないけど足見えてます。パンツ見えそうです。
「リキシ!」
割れんばかりの拍手。
ウケたのでヨシとする。
さーて、問題はどこが寄こした鉄砲玉かな?
即日潰しに行くけど。
レプシトールに来て実感したんだけど、この国は徹底的な弱肉強食である。
強ければなにをしても許されるし、弱者には人権などない。
ただし個人の戦闘力には限界があるから企業を作って群れの力で支配する。
ヤクザの組織を作る。
軍事力を誇示するには金が必要。
なので商売に専念する。
ヤクザの起業化である。
そして企業はヤクザやニンジャという暴力組織を内包することになった。
歪な資本主義の爆誕である。
だからレプシトールの起業家は例外なくヤクザである。
法と秩序を執拗に重んじる銀河帝国。
社会契約論を中身はさておき字面そのまま体現したラターニア。
弱肉強食暴力資本主義のレプシトール。
うーん……永遠の伝統主義である太極国のまともさが際立つ。
ま、いいか。
お話しすればきっとわかってくれるよ。肉体言語でね。
パーティーが終わる。
パーティーで出されたカリフォルニアロールをたくさんもらった。
アボカドみたいな実がたくさん採れるんだろうな。
……待てよ。
余ったアボカドみたいな実もたくさんもらう。
家に帰って……え? 移動?
なぜか一軒家に移動する。
リコちもついてきた。
「リコち、家に帰らなくていいの」
「ここだよ。私、レオくんの護衛だもん」
なんと一つ屋根の下!
だったら護衛は野郎にしとけばいいのに。
だが……いまの俺にはエロより大事なことがあった!
「料理してもいい?」
「どぞどぞ」
ふははははは!
アボカドである!
つまり、カミシロ家の味が再現できる!
薄焼きパン、トルティーヤを作ってっと。
タコミートも作って……。
生野菜を刻んで。
アボカドディップスもタコス用の味付けして。
トルティーヤにみんな乗っけてチーズも添えて……。
「カミシロ家タコス!」
金があるときタコスの完成!
実家に金ないときは野菜だけとか野草とかトルティーヤだけになる。
本当に金あるときは米買えるんだけどね!
「ほいリコち、味見」
「あ、お店の味!」
リコちに一つ渡して皿に盛って食卓へ。
昭和の丸テーブルというか、ちゃぶ台に置く。
お湯も沸かしてお茶も入れる。
カミシログループの紅茶である。
緑茶でもよかったんだけど合わんだろと。
カリフォルニアロールも出して夕食。
俺たち警備だから食べられなかったもんね。
「前々から思ってたんだけどレオくんって料理上手だよね」
「当番あるしみんなできるでしょ」
「できるのと上手なのは違うよ。レオくんの場合、煮物からタコスまでレパートリー多いし」
ただし俺は暴君なので自分が食べたい味しか作らない。
反乱起こされそうだからリクエストで地方の料理作るけどさ!
それにだ……嫁ちゃんに離婚されたら自分のスキルで食べて行かなければならない。
いまのところ夫婦円満だが、俺がとんでもない失敗をしたらわからない。
腕を磨いておけば飲食店への就職も可能かもしれない。
俺は調子に乗らないのだ。
ごはんを食べてゆったり。
レプシトールの放送はニュースもドラマもヤクザものばかりで面白くない。
音楽は歌謡曲、だけど俺たちの趣味とは違うものだ。
スポーツは野球が入ってきたばかりのようだ。
ちょうどできたばかりのプロ野球の中継を放送してた。
あまりレベルは高くない。
録画したのをイソノと中島に送ってやる。
「お風呂先入るね」
「うぃーっす」
野球が終わってニュース。
ヤクザの抗争のニュースしかないよねって思ったら、トップニュースは俺たちだった。
「マイク&ハマーのパーティーにアーマードリキシが乱入。ニンジャに蹴散らされました」
「ほう」
俺はちょっとだけ。
メインは両手で大きな力士の顔をギュッギュッするリコちだった。
さすがに女の子がアイアンクローからの合掌捻りで勝つとは思わないだろう。
リコちが風呂入っててよかった。
リコちの婚活への努力は無になるだろうから。
「レオくん! パパとママから鬼電が!」
リコちが下着姿で現われた。
「服着なさい!」
「はーい」
部屋着の芋ジャージに着替えたリコちがやって来た。
「それでご両親はなんだって?」
「銀河帝国にまでさっきの活躍が流れたらしく……」
あー……どうしようかね?
「が、がんばれ……」
「ふえええええええええん! また結婚が遠のく!」
ですよねー。
現在リコちは銀河帝国では伝説の戦士扱い。
鬼神国では漢の中の漢。
ラターニア、太極国では銀河帝国の守護神。
クロノスではスーパーヒーロー。
パーシオンでは地獄からの使者扱いだ。
少なくとも女性扱いはされてない。
これで結婚相手探すの難しいよね。
そもそも公爵が確約されてる伯爵家当主だもん。
最低でも伯爵家相当の子息じゃないと無理だよね。
ゾーク戦争当初なら売るほどいた伯爵家や侯爵家も滅亡してかなり減ったし……。
ゾークに滅ぼされたのと公爵会に味方して取り潰されたのと。
だから男子も女子も難しいんだよね。
もともと少数派である皇帝派と中立派の上位貴族の子弟子女には限りがあるし。
いったん公爵会についておいて日和見決めこんでた連中は嫁ちゃんが嫌ってるし。
「もういいのよ……リコちゃん……無理しないで……ってママにまで言われたー!」
「あきらめろ……」
「ふえええええええええええんッ!」
たとえばさー、女子でも元院生組でメカニックの中川さんとかは二十歳年上の子持ちの侯爵と白い結婚をした。
えっちなし契約婚。
血縁だけ得てあとはテキトーに愛人作って子どもできたら自分の領地だけ継がせるつもりだ。
でもリコちにそれ言ったら泣きながらマウントパンチされそうだし。
それ俺も嫁ちゃんと恋愛したい勢だから偉そうに言えないしね!
まだ死にたくないってのもある。
こうして俺たちのうれし恥ずかし同棲生活が始まった。
なお、えっちなリビドーはピクリとも感じない。




