第五百八十八話
リコちがドレスを着てる。
さすがに胸元が開いてたりはしてないが、高そうなやつである。
髪型もなんか気合が入ってる。
婚活と勘違いしてないか?
「キレイダネ」
名状できない不安にさいなまれたがほめる。
俺は黒のスーツ。
うーん、新入社員通り越してヤクザなビジュアル。
忍者隊上忍の証である金の腕時計もヤクザ感を醸し出してる。
リコちはブランドバッグについてる時計が忍者隊の証明書である。
いま俺たちがいるのはミコシ商事グループのマイク&ハマー社への吸収合併記念パーティーである。
巨大財閥の合併である。
企業による統治をしてるレプシトールは大騒ぎになっている。
しかもマイク&ハマーは一度壊滅してクロノス企業として復活。そこからミコシ商事を飲み込んだ。
カレンさんの華麗な復活をメディアは大きく報道していた。
カレンさんもマイク&ハマーを若くして率いてた女傑。
俺がバックにいることをしれっと隠してインタビューに答えてた。
そんなわけで、レプシトールでいま一番注目されてるのがマイク&ハマーというわけである。
その会社の戦勝記念パーティーである。
メディアも多数来ていた。
カレンさんが壇上で挨拶する。
俺たちニンジャ隊はカレンさんの護衛だ。
カレンさんは胸元の大きく空いたドレスだ。すげえ胸。
……ということは……隠してるのに主張しまくるケビンやワンオーワンの胸は……考えるのはやめておこう。
「コニチワー」
ゲス顔の隊長に挨拶される。
「俺を売りましたね?」
翻訳機を通したきれいなレプシトール語で言ってやる。
「あ、おま、やっぱりちゃんとした翻訳機持ってるじゃねえか!」
「知ーりーまーせーん! とにかく役員全員にバレて大変だったんですからね!」
隊長に監査官だと名乗った二時間後には社内SNSに俺の情報が流れてた。
裏切者はコイツしかいない。
「そう言わずに~監査官どのぉ~」
ぶっ殺すぞこの野郎。
「ところで監査官殿。そこの女性は」
「私の部下のリコです」
「リコです♪」
しなを作るな!
するとリコちが俺にヒソヒソ話しかけてきた。
「も~、やだ~! 隊長さん絶対私のこと好きですよ~」
「違う」
「レオくんも嫉妬して~やだ~!」
「それも違う」
真顔で突っ込むとリコちが鬼の表情になる。
「レオくん、婚約者どころかお見合いの相手すら見つからないのは私だけなんですよ……」
「お、おう……」
「パパもママも『あ、うん、リコちゃんは無理しなくていいぞ。家督は弟が継ぐからな。リコちゃんは自由にしなさい。リコちゃんの領地も弟の子どもに継がせればいいから……』って優しい目で言うんです……」
おっと地雷踏んだ。
隊長に助けを求めるアイコンタクト。
すると隊長は親指を上げて「がんばれよ♪」と退散。
違う、そうじゃない!
リコちは首をかくんと曲げる。
「いいですか……私には時間がないんです。そろそろ婿を見つけないと実家に居場所がなくなるんです……」
怖いから!
悩んでるのわかったから!
でもリコちを紹介できる伝手もない。
「えっと……嫁ちゃんに連絡するね……えっと嫁ちゃん……リコちが結婚したいって」
すると嫁ちゃんから返事が来る。
「もう婿殿がもらってやれ。妾にもどうしようもない!」
うっわぁ……リコち……なにかやらかしたな。
嫁ちゃんも怒ってる。
「わかった……こっちで紹介する……アマダきゅんに頼めば……」
「もうやった」
「絶望的じゃないですか!」
と、ここまでが茶番。
嫁ちゃんに通信を切られたので二人でパーティーの警備。
俺らは職業軍人。
しかもリコちは憲兵。
こういうのは得意である。
しばらく警備して交代。
休憩じゃなくて入り口に移動。
受付を守る。
しばらく警備してると体の大きなレプシトール人がやって来る。
レプシトール人は大柄な人が多いが、その中でも屈指の大きさだろう。
縦も横も大きい。
三メートルあるかも?
付き人たちも連れてるけど彼らも大きい。
「レプシトール相撲の大関さんとのことです」
「ごっちゃんです」
大関は俺たちにまで挨拶する。
あー、この人、ちゃんとした人だわ。
すぐわかっちゃう。
受付のお姉さんが対応して中に入っていく。
そして今度は後ろから別の力士が来る。
「今度は横綱さんです」
俺たちに視線すら向けない。
なるほど……。これが普通の態度か。
ちょっとイタズラしようかな。
軽く殺気を送る。
「ぬうッ!」
キョロキョロしてる。
あらま。強いわこの人。
付き人たちは「横綱どうしたんスカ?」と聞いてる。
だめだこいつら。
「レオくんイタズラしちゃだめでしょ。めっ!」
リコちに怒られた。
横綱は釈然としない顔で受付をすませて中に入っていく。
さらにもう二組。
大関と横綱が来た。
まだなにもしてないのに二人とも俺をにらみつける。
「お疲れッス」
「アリガトゴザイマス」
深々と頭を下げて返事した。
挨拶されてしまった。
うーん、こっちはできすぎ。
武道家じゃなくて暗殺者か軍人だな。
力士が会場に入ったのを確認してから隊長に連絡。
「隊長、最後に入ってきた力士があやしいです。俺に気づきました」
「どういう判別のしかたですか……」
でも間違ってないと思うのよ。
「わかりました。こちらでマークしますので監査官殿は大人しくしててください」
「はーい」
するとドアがバーンっと吹っ飛んだ。
「な、なに!?」
リコちも困惑してる。
俺たちが中に入るとさきほどの横綱と大関が暴れていた。
ただしその身体は機械に改造されていた。
「アーマードリキシだ! ロケットランチャー持って来い!」
隊長が叫ぶ。
おいおい、大げさな。
「リコち、大関頼む」
「はーい」
俺は暴れる力士どもの前に出る。
最初の挨拶してくれた大関は攻撃されたらしく床で倒れてた。
「お客様。他のお客様の迷惑は……」
「ハケヨイ!」
聞きゃしねえ。
背中からバーニアが突き出した横綱が俺に突っこんできた。
俺は真っ正面から受け止めた。
「ぬううううううううううう!」
ぼくビクともしないもんね~。
「ほら横綱。もっと気合入れろ」
「ぬううううううううううん!」
ぽいッ!
普通に足払い。
一回転させて頭から落としてやる。
横綱が床に突き刺さった。
後ろを向くとリコちが合掌捻り……というか両手アイアンクローで失神した大関を捻ってぶん投げてた。
「あ、あいつら化け物か……」
仲間にまでひどい言葉を浴びせられる。
……帰っていいかな?




