第五百八十七話
ドモ。
内緒だって言ったのに二時間後には隊長に裏切られてたカワゴンです。
ムカついたけどしかたない。
監査官として振る舞う。
「コニチワー、テイクアウト寿司一丁!」
役員室に乗り込む。
するとあらかじめ話を聞いてた役員たちが声を上げる。
「へ、へへへへへ、大公陛下!」
「シ、拙者は本社監査官のカワゴン。寿司タベル?」
寿司バーのキッチン借りて握った寿司だ。
包丁研いて切り身半分渡すって言ったらタダで貸してくれた。
全員分用意した。
我がカミシログループの技術力を知れ!
あとあの寿司ダイニングをあとで買収しようと思う。
アジトとして使うにはいいサイズだ。
寿司を配ってお話スタート。
レプシトールの翻訳機をオン。
いやさ、レプシトール語って発音が特殊すぎて一朝一夕に憶えられないのよ。
プローン語と違って気合さえあれば習得可能みたいなんだけどさ。
「という設定でお願いします」
「まったく話がわかりません」
ですよねー。
「えーっと、まずは私の研修生活から。入社式に出ようとしたら殴り込みのニンジャと勘違いされて参加。ミコシ商事支社長逮捕。夜、アパートに帰ったところ報復の襲撃を受けました。周辺住民を巻き込んでミサイルを撃とうとしたので全員返り討ちに。そのまま流れでミコシ商事を壊滅。吸収合併いたしました。それを隊長に嗅ぎつけられ、監査官と嘘ついたら秒で拡散されました。隊長許さない」
「どうしてこうなった……」
役員たちが頭を抱える。
俺もわからない。
「カレン最高執行責任者によると、私はレプシトール人にとって本能的恐怖を感じるようです。なにかの体質でしょうね」
「それは違いますな……」
老人がぽつりとつぶやいた。
「大公様を見て我々の胸の内にわくものは恐怖ではなく畏怖にございます。若造は畏怖を理解できず、ここで殺さねば滅ぼされると思ってしまうのでしょう」
えっと……レンがよく言う「旦那様って本当にビースト種じゃないんですか?」ってのと同じか。
ビースト種からすると彼らの群れのボスの雰囲気があるそうで。
そんなこと言われてもよくわからない。
「つまり俺にビビリ散らかして自滅したと……」
「端的に言うとその通りでございます。若さゆえに判断を誤ったということでしょう」
なんで俺だけ狙ってきたのかわかった。
なんとなくだけどわかってきた。
レプシトールは野生を完全に捨てた社会なのだ。
いや捨てたと誤解してる社会だ。
実際は法律なんかない力こそ正義暴力ヒャッハーの世界なのに。
それゆえに本能的に避けるべきものを滅ぼそうとしてしまう。
鬼神国くらい野蛮さを隠そうとしない方が幸せだったのかもしれない。
「大公陛下はどうお考えでしょうか?」
「なにが?」
「我らは巨大な財閥の一つを吸収しました。このままレプシトールを支配することも可能かと」
あ、これ、最初に「レオの暴走を止めるために社会を教えよう」って言い出したやつが怒られるパターンだ。
お前だ。イソノ!
「支配は……その……持ちかえって判断します」
「御意にございます」
さーて困ったぞ。
アパートに逃げ帰って嫁ちゃんに連絡。
「びえーん! レプシトールの支配しましょうとか言われちゃったよう!」
「もう手に入れてしまえ!」
「びえーん! 嫁ちゃんとの子ども欲しいのに~!」
「おう、望むところじゃ! 来い!」
おっしゃ!
「でででで、では。子どもをツクルでゴザル!」
「そうじゃな。銀河帝国の次代皇帝にクロノスの大公、レプシトールの支配者も必要じゃな。三人は作るぞ」
「いきなりぽんぽんが痛くなってゴザル……もうちょっとその……政治じゃなくて愛とか恋とかの文法でオナシャス……」
「馬鹿者! 皇族にとって子作りは政治じゃ!」
「びえーん!」
俺、カナシイ。
愛を語りたい。
「それはそれとしてじゃな……ちょうどいいからレプシトールを引っかき回してこい。婿殿が自由に動けばいいじゃろ」
「またもや単身赴任!」
「もうこうなったら銀河の覇王として君臨してしまえ!」
「ぎゃあああああああああああああッ!」
「それと婿殿の護衛を送る」
「レン?」
「楽しみにしてるのじゃ」
嫌な予感しかしない。
そして次の日。
「レオくーん、います~」
もう声を聞いただけで嫌な予感が現実になったと知った。
アパートのドアを開けるとそこにいたのはリコちだった。
めずらしく私服である。
「レオくんの護衛だって」
「破壊王襲来!」
「失礼すぎるよ!」
「リコちは作戦の目的聞いてる?」
「レオくんが空気吸ってるだけで敵が殺しに来るから守れって」
カナシイ。
間違ってないのがなおカナシイ。
「あー、うん、寿司食べに行く?」
買収した寿司バーに行く。
カミシログループが経営にゴリゴリ参加した。
誰でも作れるように業務用寿司マシーンを設置。
銀河帝国風の寿司を売る店になってる。
わりとウケは良い。
カリフォルニアロールが飛ぶように売れ……待て、お前だけは駆逐できないのか!
「ボス!」
店に入るとマイク&ハマー社から派遣されたマネージャーに声をかけられる。
「うっす、今日は友だち連れてるから。おまかせでお願い」
「了解ッス」
やたら濃い笑顔で返事された。
「冷凍じゃないお寿司久しぶり~」
「俺しか作らんからな」
そうなのである。
ケビンもニーナさんも、他の連中も……和食を作らないのである。
いや前は味噌汁は作ってくれたんだけど……味噌の種類でもめて俺に投げられた。
食の地域紛争は俺に丸投げなのである。
ケミカルようかんやケミカルゼリー付き刺身、栗ご飯におせち料理。
なぜか俺の担当なのである。
あとお雑煮問題とかね。
まったく……アホどもめ!
赤味噌&アオサの味噌汁が配膳された。
この店は完全に俺の趣味できている。
光り物……圧倒的に光り物!
くっくっくっくっく。
「あ、カリフォルニアロールください!」
「あいよー!」
大将が渋い声で返事する。
「なぜだー!」
コハダと芽ねぎの寿司で幸せいっぱいな俺に浴びせられるカリフォルニアロール。
なぜ貴様は俺に立ちはだかるのだ!
「だって美味しいじゃん!」
「美味しいんだけどさ!」
「カニサラダの軍艦くださーい!」
「あいよ」
なじぇだー!
「レオくんは燻し銀すぎるのよ」
それはそう!
こうして俺とリコちは合流したのである。




