第五百八十二話
あちこちから警報が入る。
カメラで撮影できたものを検証すると数体の人型戦闘機が領域侵犯していた。
それだけならいいんだけどさ。
いきなり消えたと思ったら、クロノスの首都星に近づいたところに出現した。
同じ機体だ。
「30分後に首都星に到達してしまう予想です」
「とりあえず全チャンネルで呼びかけて」
「警告いたします!」
「警告……いや……果たし状作戦で行くわ。場所を指定してあげて。殺戮の夜で出動するから」
「婿殿!」
「嫁ちゃんは待機ね。俺の勝利を祈って。えっとメリッサは……」
「おー、行くぜ!」
「クレアはお疲れさんだからいいか。リコち呼び出して。あと暇してるカトリ先生と……プロレス関係ないエディか? あとそれぞれの騎士団ね」
「旦那様、私も向かいます!」
レンも行くようだ。
すると妖精さんが会場に呼びかける。
「鬼神国のみなしゃーん。プロレス大会ぶち壊そうとする陰謀が近づいてま~す。パイロットのかたはぜひ喧嘩に参加してくださ~い。機体はこちら持ち。報酬はカミシログループから払われますよ~。ぜひお友だちも誘ってご参くださ~い♪」
「うおおおおおおおおおおおおおッ!」
プロレス観戦を完全に忘れた鬼神国人が喧嘩にエントリー。
「特別試合、レオ・カミシロ・クロノス陛下と愉快な仲間たちVSテロリストの中継をいたします。売店ではペイパービューのチケットを販売してます。購入特典はレオ陛下監修の人型戦闘機写真集です」
商売してる!
しかも出版社が調子こいて増刷しまくった在庫の山の処分まで!
妖精さん……恐ろしい子!
出撃前に俺はタチアナに連絡する。
「タチアナ、シーユンとワンオーワン、それにルーちゃん頼むわ」
「アタシっすか?」
「お前が一番しっかりしてる」
「えへへへへへ~。しかたないな~!」
なぜかタチアナに喜ばれた。
さて喧嘩の呼び出しに応じるかは五分五分ってところかな?
パイロットが実を取れば俺たちを無視してクロノスを攻撃する。
名誉を取れば俺たちと戦うってわけ。
実を取っても嫁ちゃんの戦艦にイソノに中島、クレアもいる。
さらに隠し球のエッジにアリッサにタチアナが控えてる。
フルボッコにされると思うけどね。
となると、向こうは名誉を取ったと思わせて俺との決闘をしかけるんじゃないかな。
俺さえ殺せば任務完了なわけだし。
相手からはそのくらいの自意識は感じるわけ。
そうじゃなければ警報鳴らしまくりながらこっちに来るわけないしね。
嫁ちゃんはタチアナ、シーユン、ワンオーワンにルーちゃん親子を連れて戦艦に乗船。
世界で一番安全なところである。
イソノたちは会場の護衛。
エッジたちは自己判断で動いてもらう。
さあ、どうなることやら。
あとは敵の反応を見て出たとこ勝負である!
「敵から通信です! 繋ぎます!」
繋いでくれるとレプシトール語なまりのラターニア語が聞こえてくる。
「クロノス大公よ。一騎打ちを所望する」
ですよねー!
それしかありませんよねー!
完全に予定通り。
こうして戦うことになったのだ。
会場は近くの宙域。
敵は20体ほど。
ここに集まってくれたのは簡単。
だまし討ちなんかしないからだ。
その証拠にカメラを入れてライブ中継である。
「はーい、そちらさんの主張は?」
「クロノスは侵略をやめよ! 我々は拡大主義に反対する」
「うん! じゃあ攻めてこないでね。クロノス大公だって10年くらいしてイナゴテロが歴史に変わったら適当に政権交代するでしょ。はい終わり。解散!」
なんだ話し合いで片付く案件じゃん。
帰ろ帰ろ。
俺が後ろを向くとカトリ先生の機体に思いっきり尻を蹴られた。
「ぎゃふんッ!」
「なあレオ。そうも行かねえってのはわかってんだろ? お前も職業軍人なんだからよ。上の命令は絶対だろ?」
「うぇ、うぇーい……」
俺のやる気が半分以下になった。
「じゃあ、いきましゅよ~。つっても全員相手にするの面倒なんで代表出してよ。他はカトリ先生と愉快な仲間たちにお願いするとして」
「ではそれがしが」
あちゃー。
俺は額に手を当てた。
ハズレ引いた。
たぶん一番強い人だ。
「レオ・カミシロ・クロノスでーす。そちらさんは?」
「それがしはミコシ商事戦闘隊長、オズマです。ミコシ商事の最新機種でお相手いたす。では尋常に勝負!」
あー、ネタばらししてきた。
おそらく消えるのはミコシ商事の技術だろう。
わざと言ったんだろうね。
プライド高いわ。
と相手の立場でメタ分析してたら姿が消えた。
次の瞬間、後ろに出現し刀を振るう。
避けて……消え! まずい!
回避したその背後に敵機が出現。
斬りかかってきた。
俺はわざと背中で敵機に当たりに行く。
鉄山なんとか?
違う!
単に接近して間合いつぶしただけ!
でもゴンっとぶつかった。
……けど次の瞬間手応えがなくなって……真正面に出現!
剣を振るってきた。こちらも刀でブロッキング!
またもや手応えがなく空振り。
敵は消失。と思ったら横に出現、蹴りを入れてきた。
食らった瞬間だけバーニアをオフ!
宇宙空間の格闘戦ならヘタに抵抗しなきゃダメージは最小限だ。
キリモミしながら減速して……背後に出現!
だけどキリモミしてた俺の方が速い。
今度は俺が蹴る。
ブロッキングされた。
待てよ……ブロッキングだと!?
そのまま俺は突進。
組み付き……消えた。
俺は減速するのをあきらめた。
おそらくスピードが乗った状態の方が安全だ。
銃を構えた敵が前に出現……回避!
パルスライフルを避ける! 避ける! 避ける!
三半規管がダメになりそう!
つうか、遠心力で手足と顔に血か集まりすぎてる!
まだ毛細血管が破裂するほどじゃないけどね!
耳鳴りがしてきたらヤバいはず!
だけど我慢するもん!
俺はもう方向を見失いながら拳銃を抜く。
間髪入れず射撃。
拳銃が最速だ。
一発が敵を捕らえた……が、消失。
「あは♪」
俺は笑みを浮かべた。
そこじゃああああああああああッ!
俺はなにもない空間を撃つ。
だけどそこに敵機が出現した。
俺の拳銃のビームが敵の胸を貫いた。
「な、なぜ……ミコシ商事の最新鋭ワープが破れるなんて……」
ワープだったのか。
ってことはミコシ商事、というかレプシトールは安全なワープ技術を持ってるってことか。
ぜひ欲しいな。
それはいったん置いてネタばらし。
「あーた、正確すぎたんすよ。恐ろしいまで正確に俺の死角を狙い続けた。だから俺はわざと隙を作って揺動したってわけです」
「それがしの負けにござる……」
ふへー。勝った。
ふう、バレてない。
ちょっと遠心力かけすぎて耳から血が出たのよ。結構ドバドバ。
ヒャッハー!
パイロットの方の限界が近かったぜ!
こりゃ単距離ワープの推測プログラムが必要だぞ。
俺が勝利するとカトリ先生の期待がバーニア全開。
「ぐはははははは! そういうことか! 行くぞお前ら! こいつらを倒せばもっと強くなれるぞ!」
「ヒャッハー!」
蛮族の群れが敵に襲いかかった。




