第五百八十一話
プロレス大会は大盛況。
そう……大盛況だ。
規模が大きくなりすぎた。
タンク先生たちの営業で全宇宙で中継である。
宗教国家のいくつかがキレ散らかして抗議声明を送ってきた。
リングガールと女子レスラーの衣装に文句つけてる。
知らんがな!
鬼神国と同じく脳筋国家からはプロレスについてやり方を教えてほしいと熱量のこもったお手紙を頂いた。
いいぜ……派遣するぜ……元プロをな。
クロノスには観光客が殺到。
経済効果はアホみたいに高い。
どうも日系人特有の「いろんな国の料理食べたいもん!」がハマったようだ。
クロノスには屋台含めていろんな国の料理店が大量に出店してる。
銀河帝国の兵が食べ歩きするからね。
クロノス人も「王様がそう言うの好きなら試してみるか」と各国の料理を食べるようになった。
セルバンテスでは外国弁当フェアを定期的に開催。
労働者もいろんな国の料理を楽しむようになった。
さらにカミシログループは鉄道や陸上車両のサービスエリアでもその地方の料理の弁当を販売。
異常なくらいウケてる。
文化の保護をエンタメに落とし込んだ結果くらいの意識なんだけどね。
というわけで前は少なかったグルメフェス目当ての観光客もドバーッと押し寄せた。
観光公害と言うほど抵抗はない。
優先順位は商売かなって感じだ。
問題は、もう入管でテロリストを排除するのが無理になったことだろう。
武器の持ち込みはさせなかったけど……武器を輸入するのは難しくないからね。
クロノスも地方惑星では危険な生物がたくさんいる。
首都星だって首都より離れた山なんかだと危険な生物が出現する。
武器の禁止なんてムリムリ。
武器の規制なんて安全なところにいる中央文官の発想だよね。
と言うわけで最大限警戒。
たださー直感ちゃんに思うのよ~。
俺を暗殺するのはアリだと思うけどさ、プロレスの試合を中止させたら全宇宙の敵になるけどいいの?
レプシトールもパーシオンもさ。
冷静になろうよ。
俺は嫁ちゃんと護衛をゾロゾロ引き連れて、各国の大使に挨拶しに行く。
ルーちゃんは抱っこする。
初戦がやってる間にサッと挨拶だけする。
大使に「挨拶しに来い」なんて言わない。
嫁ちゃんはこの銀河からすればよそ者だし、俺には権威などない。
あと直々に挨拶しに行くと向こうが恐縮しまくるので面白いのもある。
「はいルーちゃんご挨拶」
「こんにちわー♪」
ルーちゃんの事情はみんな知ってるし、俺がかわいがってるのも公開情報だ。
各国の大使は俺を見て驚き、ルーちゃんを見て笑顔で対応してくれた。
「婿殿も人が悪いのう♪」
嫁ちゃんと「ウシシ」と悪い顔で笑いあう。
はっはっは!
やはり新鮮なリアクションは楽しいものだ。
人柄チェックも兼ねている。
ここでなめた態度に出たら遠ざけるだけ。
ルーちゃんを軽く扱っても同じだ。
崇拝しろなんて言わないが、それなりの敬意を払えって話だ。
あと子どもには優しくしろ。
それができない外交官を送ってきたら……どうなるかわかるね?
顔も名前もちゃんと頭に入れてるもんね~。
挨拶回りして貴賓席に戻る。
今のところ襲撃なし。
警備隊長から報告が入る。
酒飲んで暴れた連中を逮捕。
かなり多いのでクロノス軍の営倉も使っていいよっと。
リコちたち憲兵も別枠で警備してる。
リコちに勝負を挑んで秒殺される鬼神国人多数。
レオくんチャレンジに加えて、鬼神国女性戦士のリコちチャレンジも発生してる模様。
カトリ先生も巡回してる。
カトリ先生に挑んだ連中は、特別稽古に強制参加させられる。
途中の休憩時にやるみたいよ。
戻ると女子の第二戦の前に男性アイドルのライブが行われてた。
ラターニア人、太極国人、クロノス人のアイドルグループだ。
鬼神国人には著しくウケが悪い。
他の国じゃ人気者なのに。
なのでこのライブの最中に鬼神国人は酒の屋台に殺到。
ビールと日本酒にクロノス伝統のどぶろく(みたいなやつ)が売れまくる。
この勘も直感ちゃんは警報を鳴らしまくる。
一応、直感ちゃんが騒いでるのは報告済み。
警備盛り盛りで対応してる。
装甲車と消防車、それに人型戦闘機も待機してる。
殺戮の夜ちゃんもスタンバイ。
あと嫁ちゃん脱出用の輸送機もね。
殴り込み警戒用に駆逐艦、巡洋艦が宙域を警戒。
戦艦は宇宙港でスタンバイしてる。
海賊ギルドの民間警備会社も全力でお仕事中。
座敷童ちゃんと神籬ちゃんの警備には末松隊とクロノス教の僧兵団がついている。
「そういや劇場で暗殺された元プロ格闘家のリンカーン大統領ってのが……」
「婿殿の不謹慎ネタはシャレにならないのじゃ……」
嫁ちゃんに本気で心配された。
うーん、ギャグが空振りした。
よくない流れだ。
考えてるとメリッサがやって来る。
「おーっす、屋台でテキトーに買ってきたよ。ほい、ルーちゃんはこれ」
ココナッツミルクにフルーツを浮かべたものをルーちゃんに渡す。
「ありがとう! メリッサお姉ちゃん♪」
メリッサは直属の侍部隊を率いて巡回してる。
本人は屋台での買い出し担当と言い張ってるけどね。
「ヴェロニカちゃんはクレープ。隊長はたこ焼きね。ポテトとポップコーンもかっておいたから」
「オレ……イモ……スキ……」
「知ってる」
スルーされた!
ギャグがダダ滑りしてる!
「ねえ嫁ちゃん、さっきからギャグがダダ滑りしてる。なにか起きてるかも」
「婿殿以外が言ったら正気を疑われるセリフじゃな。『婿殿の直感が警報を発してる。巡回を強化せよ!』」
嫁ちゃんが兵に指令を出した。
「あははははは! 相変わらず隊長の予言は面白いね!」
「予言じゃなくて直感」
このラインだけは死守したい。
「なにを言ってるのじゃ。ほぼ予言級じゃろ。たしかに専門は未来予知ではないという見解じゃが……」
「勘弁してよ……」
そして……曲が終わった瞬間、やって来てしまったのだ。
「警報! 領域内に所属不明の人型戦闘機が出現!」
軍から通信が入る。
おいおい勘弁してよ!
「場所は!?」
「我が国の領域の端です……消えた!」
消えた!?
「警報! 所属不明の人型戦闘機が……」
またもや警報。
今度は別の場所。
え? なにが起こってるの?




