第五百八十話
「やっほー!」
ケイコちゃんとミライちゃんとハイタッチ。
二人とも元おっさんの女性型ゾークだ。
彼女らは開き直ってその美貌を生かして警備業をしながら副業でアイドルをしている。
ふざけてるように思えるが、二人とも俺が直々にスカウトするくらいの腕利きだ。
「大公陛下。護衛任務完了いたしました」
敬礼する委員長系巨乳ロリの未来ちゃんが高い声だが渋い口調で言った。
その横にはケイコちゃん、こっちは元気なツインテール巨乳ロリだ。
両名とも40代後半のおっさんだったが女性ゾーク化した。
ゾーク化ガチャでケビン・ワンオーワン型を引いてしまったせいでこの姿に……。
二人はカレンさんを連れて来てくれたようだ。
目がぐるぐるしてる。
大丈夫、その反応は正常だ。
俺もたまに頭の中がバグる。
「お疲れのようですね。まずは疲れを取ってください」
「え、ええ……情報が多すぎて……混乱しているだけですので……」
とりあえず女官さんに来客用の部屋に案内してもらう。
聴取は後でいいや。
カレンさんが退室するとレプシトールとのホットラインに鬼のように連絡が来た。
「こちらクロノス公国レオ・カミシロ・クロノスです」
相手はウロコおじさん。
「宣戦布告のつもりか!」
「いえいえ、民間企業がラターニアの保険会社の業務を執行したと報告を受けております」
「ら、ラターニアの保険!? か、カレンめ!」
文句言われるのはわかってる。
だから同じく資本主義の化け物をぶつける。
化け物には化け物をぶつけるんだよ!
「アマダ警備には行政指導をする予定です」
従わなくても罰則ないけどね!
みんなわかってるやつである。
そもそも俺が攻め込んだっていう証拠はないわけ。
もちろんそれで戦争ふっかけてくることは可能なんだけど、だとしたらこちらも応戦するだけである。
そもそもイナゴテロの最有力容疑者はパーシオンだが、レプシトールが犯人の可能性だってある。
別にそれでインネンつけてもいいんですよ。こちらは。
俺の評判? 知らねえよそんなもん。
俺はクロノス国民の安全さえ確保できればそれでいい。
カレンさんの救出だって交渉相手として一番まともな人を確保するって狙いだ……。
と言いたいけど……ほぼ直感だ。
俺の直感ちゃん……がんばって……。
さて……レプシトールには怒られたけど、いまはプロレス大会に専念する。
さあ会場行くベ。
こっちは楽しいお仕事。
つっても俺がするのは挨拶だけだけどね~。
「……お、おう」
チケットが一瞬で売り切れになったのは聞いていた。
野外のとんでもなく大きな会場なのに!
クレアの報告だとスポンサーが山ほどついてそこに芸能事務所がタレントをゴリ押し。
合間合間にコンサートをする形式になったようだ。
……ま、いいか。
こっちじゃまだ芸能文化自体が未発達。
来るタレントもまだ洗練されてないはずだ……って思うじゃん。
「キャアアアアアアアアアアアアアアッ!」
会場から黄色い声援が飛ぶ。
プロレスファンだけじゃない。
タレントのファンも大量に来ていた。
最初に歌うのはケイコちゃんとミライちゃん。
待って、聞いてない。
いつの間にそんな話になったの!?
俺は貴賓席で横にいる嫁ちゃんを見ながらパクパクする。
言葉が出てこねえよ。
「あー……婿殿な。カミシログループの芸能部門な。差別解消も兼ねて女性型ゾークのタレント化に力を入れてての。その中で最初の大型デビューがあの二人なのじゃ」
さらにパクパク。
「言いたいことがわかるがの。ケビンが拒否したからの。二人に白羽の矢がたったのじゃ」
さらにパクパク。
「二人は人気があっての~」
指さしながらパクパク。
「そうなのじゃ。おっさんなのは公開しておるのだがな。『おっさんだからこそカワイイを熟知してる』と謎の評価がされてての……」
カオスじゃ……カオスが世界に侵食してきた。
仕掛け花火がシュワーッと火花を上げる。
「みんなー♪ 応援ありがとう!」
アイドルジャンプ。
どかーんと花火が打ち上がった。
ライブが始まる。
なにこのカオス!
ステージは完璧だった。
カワイイと余すことなく表現……。
いや待って元おっさん二人で完璧ってナニソレェッ!?
ツッコミが追いつかない。
嫁ちゃんが慈愛に満ちた優しい顔をする。
「婿殿……もうあきらめて楽しむのじゃ」
「あー、うん。そうする」
二人の歌が終わったらプロレス。
俺の頭はバグったままだが観客は楽しんでた。
まあいいか。楽しんでくれるなら。
半分あきらめたところで貴賓席にルーちゃんがやって来た。
「お兄ちゃん!」
「はーい、ルーちゃん♪」
抱っこする。
ルーちゃんの肉体年齢ならまだ抱っこしても許される……と思う。
ルーちゃんママもカメラと一緒にやって来た。
怒られないのでセーフ。
「どうも~、ルーちゃんママ」
「陛下いつもすみません。取材させていただきます」
「はーい♪」
関係国の友好とか口からでまかせを語る。
いや友好は嘘ではない。
いましゃべってる内容がテキトーということだ。
「レプシトールのマイク&ハマー社カレン会長が亡命を希望してるとのことですが」
「レプシトールは企業間の抗争が激しいらしく、カレン会長も売国を疑われ暗殺されそうになったそうです。そういう文化とはいえ悲しいものです。我が国では亡命者の受け入れをしており……」
なんて話をする。
あとでテキトーに要約されるだろう。
要するにレプシトールを責めないけど、カレンさんと組織はいただくよってこと。
アホが!
こちとら資本主義国出身だぞ!
大きな会社丸ごといただき!
データからノウハウから人材までな!
レプシトールはここから徐々に崩していくつもりだ。
と言っても表向きは敵対状態じゃないから内部の情報頂くだけね。
相手が何考えてるかわかればメタ分析できる。
なんて思ってたらクレアさんがリングガールやってた。
さすがにクロノス大公妃なので水着とかじゃない。
アイドルレスラー風の衣装だった。
やはりお顔が良い。似合うわ~。
「なしてぇ?」
「頼まれたらしいぞ」
結構ノリノリである。
いや違うな……あれは恥ずかしすぎてヤケになってるという表情だ。
会場からは「お妃さまだ!」と驚きの声が上がる。
「止めなくていいの?」
「クレアが望んだことじゃ」
ま、いいか。
俺は「カワイイッス」のサムズアップ。
鬼神国とクロノスの選手がリングに上がる。
初戦はシングルマッチだ。
ところでさ、ずっと直感ちゃんが警報鳴らしてるんだけど……。
なんだろうね?




