第五百七十八話
夜会を行う。
地方の領主も集まる大きなものだ。
贅沢? 違う違う。
いろんな団体や領主、財界人が集まって仕事の話をするのよ。
そりゃ食べ物やアルコールの代金は半端ないけど、その効果は計り知れない。
料理で使われる野菜や果物は地方惑星の最新品種。
酒は地方の製造元の賞を取ったお酒がずらり。
肉や魚も地方の生産者が自信を持って出した品だ。
来てるのは外食産業の経営者に食品会社にホテルなどの観光業にスーパーに……。
生産者団体の人も来てて、あちこちで商談してる。
我がセルバンテスも銀河帝国産商品のサンプルなどを提供しまくってる。
軍需産業ブース……ブース? ま、いいや。
そこでは携行食糧や水に民間へ供給してるサバイバルキットなどが展示されている。
完全に見本市状態である。
ところで「大公印の焼きそば」ってなんだ?
冷凍食品のサンプル配ってるんだけど。
聞いてないけど、販売元はカミシログループ。
お、おう……。
あとリコち、婚約者募集の釣書こんなところに置くな。
なんで写真フルアーマーなんだよ!
あまりに意味不明すぎてだれも持ちかえらねえぞ。
邪魔だから撤去な。
俺は近衛に命じて撤去させた。
さて、今回は『各種競技大会の成功を祝い、プロレス大会の成功を願う』という名目である。
実際は各惑星の領主や財界人を集めるための名目でしかない。
マゼランの高官も来て寄付や投資を呼びかけてた……やり方が悪いのよ。
もうちょっと楽しそうな感じをだね……。
寄付や投資をすると暫定政府発行の資格証明書や勲章が授与されて自慢できるとかさ。
こう……金持ちの「金だけじゃなくて文化人にもなって尊敬されたい」っていう欲望を刺激するような仕組みがだな……。
まあ、いいか。
クロノスが直接関係ある話じゃないし。
あと寄付に頼り過ぎると国が歪んじゃうし。
ただ一同が集まったので注意喚起はする。
パーシオンとレプシトールの戦争に首都のテロ警戒に……。
地方の人たちも現在の首都星で巡回する装甲車や対空砲に人型戦闘機を見て、事態の深刻さを思い知ったわけである。
俺としては軍事パレード気分なんだけどね。
やだー! 俺の直感過大評価しすぎですよ!
野党は「金を使いすぎだ!」とか「貴族主義で平民をバカにしてる!」なんて怒ってるけど、招待客の9割は平民である。
クロノス貴族なんて、地方領主と俺の仲間くらいしかいないんだからね!
完全に商談の場所だわ。
でも野党ちゃんがんばって!
俺を蹴落としてくれ!
俺も会場で招待客に挨拶しまくる。
はっはっは!
権威? そんなものなんかねえ!
本来なら俺たちは軍で上司に殴られながら仕事をする年齢だ。
仕事のミスを下士官に泣きついてどうにかしてもらうとかさ。
それで飲みにつき合わされたり、その帰り道で新兵と一緒に反社と喧嘩させられたり……。
出世してよかった。
とにかく我らには偉そうにする理由などない。
パーシオンやレプシトール勢はここにはいない。
だからその話はなさそうだ。
……なんて思った。
「大公陛下。お久しゅうございます」
クロノスの貿易商の爺ちゃんに挨拶される。
顔見知りだ。
と言っても親しくしてるわけじゃない。
顔を知ってるって程度だ。
「お久しぶりです。楽しんでます?」
「ええ、とても楽しませていただいております。これも陛下のおかげと存じております。……ところで、至急お耳に入れたいことがありまして……」
「え……っと、怖い話?」
爺ちゃんがこくりとうなずいた。
「レプシトールについてのお話です。マイク&ハマー社がカミラマッカーシー社と抗争状態に入りました」
「抗争?」
「ええ、あの国は企業による統治……企業が武力を持っている特殊な国でして。カミラマッカシー社の武装ヤクザとの銃撃戦が行われてるようです」
じ、字面がおかしい。
なによ武装ヤクザって!
そんなトンチキな国なの!?
事前の資料に書いてないよ!
いや武装してるって書いてあったけどさ!
ヤクザだと思わないじゃん!
「マイク&ハマーも自社の軍で応戦中のようです」
「えっと……マイク&ハマーが危ないってことですか?」
「それはなんとも。どうしても現場の空気感はわかりません」
ですよねー。
「困ったな……カレン氏が交渉相手だったんですが……」
「おそらく……レプシトール内部のパワーバランスの変化があったのでしょう」
カレンさんの言ったとおりだった。
企業による軍事含めた統治。
複数の軍事力を持った企業がしのぎを削る……というかレプシトールの企業はヤクザなのだ。
ようやく理解できた。
高度な社会に見えるが力こそ正義な無法地帯なのである。
それを企業というガワをつけただけなのだ。
ほーん。そういうこと。ほーん。
なるほどねー。
「情報ありがとうございます。ちょっと関係各所に問い合わせしてきます」
そう言って別れる。
個室に入って護衛を外で待機させてっと……。
「海賊ギルド大首領として頼みがある……」
そう言って海賊を招集するのだった。
すっかり汚れちまったわ……あたい。
夜会で後からやって来た嫁ちゃんと合流。
嫁ちゃんは銀河帝国皇帝陛下ご入場ですってやった。
俺はその辺にいる。マスコットキャラ枠。
あれよ。眼鏡っ娘人妻を魔法少女に勧誘するやつ。
……自分で言っててよくわからない。
相手が暴力で来るならこっちも暴力を使うのみ。
だって軍隊は暴力の専門家だもの!
別にカレンさんを助けるってわけじゃない。
交渉窓口の確保のためだ。
……そして首都が炎に包まれる直感の火元がわかってきた。
こういうのは敵の正体がわからないときが一番恐いもの。
正体さえわかってしまえば対策はいくらでもあるのだ。
首都を守るため、交渉相手を守るため。
俺は謀略を練るのだった。
「嫁ちゃんが俺の顔を見て冷や汗を流す」
「婿殿……なにか凄味のある恐ろしい笑顔じゃが……」
「はっはっは。悩んでた懸案が解決しそうなのさハニー」
さーて、この隙あらば俺に喧嘩ふっかけてこようとしてる状態。
そろそろまとめてシメてやらねば。
売上データでました
たいへん好評だそうです!
ありがとうございます!




