第五百七十七話
海賊を使った嫌がらせであるが着実に効果を上げていた。
ついでに俺の子分じゃない方の海賊に呼びかけて彼らの家族の避難をさせる。
自分一人で滅ぶなら海賊の美学であろう。
だけど家族は別だ。
クロノスで受け入れようと思う。
海賊ギルドの合法的な会社で働いてもらってもいいだろう。
これは合理的な選択ではない。
ただの配慮である。
常に合理的な判断をするのが正しいわけではないのだ。
いつかは滅ぶことを運命づけられた存在であっても、利用している以上配慮や救いがあってもいい。
すると予想以上に感謝された。
「てめえが海賊ギルドを滅ぼした!」くらいの恨み言は覚悟してたのだが……。
実際は「俺たちはこの地に古くから住まうもの。男衆は滅びは必然……ですが女やガキどもは関係ねえ。大首領の旦那、感謝します」と泣きながら礼を言われた。
要するに反対派と言っても必ずしも俺の敵ではないわけだ。
麻薬なんか生業にしてた連中も、本部はそういう作物しか作れない過酷な土地の農家の集団だったりする。
家族含めて滅びることを選んだ連中もいるが、たいていは家族のクロノスへの避難を選んだ。
故郷を守るために戦ったのは俺たちも同じだ。
特に土地に縛られた貴族家出身者は身につまされるだろう。
地方領主のしがらみは本当に他人事じゃない。
みんな同情的だった。
すぐにパーシオンが飛んでくるってわけじゃないけど、なるべく生き残ってほしい。
なおパーシオンであるが、「無学な海賊どもよ。地方から開拓地に移住せよ」とか「教養のない貴様らにチャンスをやろう」とかナチュラルにあおってる。
これ……交渉してるつもりなのよ、彼ら。びっくりするでしょ?
中央のエリートの世界観で物言っても反感買うだけだと思うのよ。
ビレッジボーイのぽくわかるもん!
リアルタイムで反感と恨み買ってるのがわかるもん!
最後の一兵になっても戦い続ける覚悟を決めたのがわかるもん!
と、まあ……暗い話が最初に来たが、明るい話も。
クレアが報告に来た。
笑顔である。
守りたいこの笑顔。
「来月、プロレスの全宇宙大会の決勝やるから」
様々な惑星で巡業してたプロレスであるが、ついに王者が決まるそうである。
なおサッカーや野球、格技と違い、行政の補助金はほぼ受けてない。
会場貸したくらいか?
フリーも経験したタンク師匠とザウルス師匠がいるおかげで黒字化はあっと言う間だった。
……いやすげえな。
自分たちでスポンサーを探し、放送局と交渉し、ペーパービューまでこぎつけた。
地方惑星での会場も地元の有力者と交渉してサクサク決めた。
体育館やスーパーマーケットの駐車場で興行できるのは本当に強い。
というかクレアさんが最近大人しかったのこれね!
「ほいほい。場所は?」
「宮殿の庭」
庭なんて言ってるが宮殿の隣にある国立公園である。
国のものであって俺のものではないやつ。
そもそも宮殿の敷地が広すぎるのよ。
「へいへい、承認っと。打ち上げ花火するときは気をつけてね」
「はーい♪」
隣と言ってもとんでもなく離れてるため、夜中騒いでも問題ない。
むしろみんなで見に行こうって感じである。
ただ火の管理だけは気をつけろ。いや本当に。
ここから火が出て首都丸焼けとかシャレにならんからな!
「防災スタッフ増やして。本当に火事だけは」
「うんそうだね。防災スタッフ増員っと……」
クレアがオーダーを出す。
……うーん……なんか直感がうずくのよね。
なんか俺の暗殺じゃなくて、なんかウルトラショボい事件が起きなそうな気がする。
「警察も増やそう」
「もしかして直感」
「うんだ」
「たいへんだ! こちらクレア! リコちゃんレオの直感が働いたって!」
ドドドドドドと音がしてフルアーマーリコちがやって来た。
「レオくんの直感だって!」
「うん! ほらレオ、説明して」
「最初はなんか火事になるような気がして。ほら庭から出火して首都丸焼けとか嫌じゃん……ってクレア顔真っ青……」
だから説明したくなかった。
みんなの俺の直感への信頼は異常なほどである。
「た、たいへんだ……リコちゃん……」
「く、クレアちゃん……どえらいことに……」
「た、大会中止!」
「あー、それなー。考えたんだけど、その選択肢取ったらさらにひどいことになりそうな気が……」
「どわあああああああああああああッ! イソノくん! 中島くん! レオくんの直感! エディくんも今すぐ来て!」
リコちがあわてて野郎どもを呼ぶ。
「いや気がするだけだから……」
「それで何回も命拾いしてるでしょが!」
リコちにガチトーンで怒られる。
「レオの直感警報! 食堂に全員集合! これは訓練ではない! 繰り返す……」
クレアが深刻な声で全館放送をする。
いやだから必ず当たるわけじゃなくてな。
「レオの直感が首都炎上を予告。繰り返す。レオの直感が首都炎上を予告……」
天地がひっくり返ったような騒ぎになる。
議会から説明を求めるメッセージが大量に届く。
いやだから直感であって予知ではないと何度言えば……。
近衛騎士団が部屋に入ってきて食堂に案内される。
軍が護衛が配置し、上空にはヘリが飛んでる。
「いやだから直感であって予知じゃねえっての! 聞けよ!」
「レオの直感は当たりすぎるの!」
直感さん……俺本体より信用されてない?
おかしくない?
こうして俺は食堂に連行されるのだった。
食堂では男子どもに囲まれて事情聴取される。
デスクライトを当てられる。
「ちょ、まぶしい!」
「吐け! なにを見た!」
「燃える首都」
「……たいへんだ」
男子どもが警備計画を練りまくる。
軍も総動員だな。これ。
寝てた嫁ちゃんが目をこすりながら入ってきた。
「なんじゃ~、寝てたのに」
嫁ちゃんはこっくりこっくり船をこいでる。
「首都が燃えるってレオの直感が」
「どわあああああああああああああ! 今すぐ警備を!」
嫁ちゃんお目々ぱっちり。
完全に俺は置き去り。
みんなで会議になる。
「はいレオくんカツ丼」
「あざっす」
ケビンがカツ丼作ってくれた。
レンがお茶を入れてくれた。
もうどうすんのこれぇ?




