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第五百七十六話

 合法的な撤退劇……別に海賊ギルドは高い技術を持った会社ではない。

 中古艦船の整備技術はあるが民間の会社である。

 特許や独自の技術を持ってるわけではない。

 製造メーカーと組んだ正規軍にかなうはずもない。

 共通規格と純正パーツ、そして完全マニュアル化された整備。

 これこそ正規品の真骨頂だろう。

 逆に海賊ギルドが得意としているのはニコイチと他社パーツの改造。

 下請け工場の従業員の海賊化による知的財産の流出と製造が廃止された古いパーツの再生産である。

 要するに……一流企業や軍のエリート部隊は特に困らない。

 だが、民間の零細企業が死ぬほど困るのだ。

 半世紀以上前の海賊ギルドの商人しか扱ってない品々がいまだに国家の製造業で使われている。

 その辺まで含めてサクサク夜逃げした。

 機械を置いてけ、技術を置いてけ、資産を置いてけ。

 それがパーシオンのやり方であるが、気づいたときにはもう遅い。

 もぬけの殻である。

 これはパーシオンが間抜けなだけだ。

 そもそも大首領就任と同時に現地法人と海賊ギルド本部の資本関係を切り離した。

 同じ名前の資本関係のない別法人でしかない。

 それを一気に解散した。

 海賊ギルドの構成員はオーゼン経由でクロノスに避難。

 普通の企業はすでに家族も含めて夜逃げ済み。

 現地人に入れ替わっていた。

 お姉さんたちには早期退職の割り増し付きで退職金を渡し、お店は現地人に売却。

 クロノスとラターニアの国際規格でお姉さんを守っていたため、大半がクロノスの支配領域にやってきた。

 治安問題など発生しない。

 なぜならすべて表で管理してるからだ。

 ちゃんと従業員として扱っている。

 ……ま、犯罪はどうしても起こるんだけどね。詐欺とか殺人とか。

 工場や建設業の労災と同じくらいかな。

 工場や建設業に労災がつきものなのと同じように、飲み屋には喧嘩、えっちなお姉さんには詐欺と殺人がつきものと……考えるのは少しドライかもしれない。

 それをどう評価するってのは難しい。だから専門家にぶん投げる。

 さてパーシオンくんの反応であるが「やりやがったなこの野郎」と最初は思ったらしい。

 何度も抗議された。


「貴国に厳重に抗議する!」


「しかたないじゃん。合法的な会社なのに資産凍結しようとしたんだから。あまつさえスパイとして逮捕する計画あったじゃないですか? その前に事業たたんで逃げるの当たり前ですよね?」


「な、なぜそれを……」


「我々はラターニアや太極国と懇意にさせてもらってます。貴国のやり方は調べ尽くしていると思ってください」


 さーて、ちなみに俺は罠を仕掛けてるのだが気づいてないらしい。

 パーシオンくんが罠の存在に気づいたのは一ヵ月ほど経過した頃だった。


「か、海賊をどうにかしろ!」


「無理ですね。私の管理下にない海賊です」


 罠と言ってもただ教えなかっただけなんだけどね。

 パーシオンの使っていた航路の一部が使えなくなった。

 いままで海賊ギルドの護衛で安全に航行できていたルートだ。

 俺が襲わせてるわけではない。

 そりゃさー、海賊ギルドの派生の海賊なんだから、話ができてるに決まってるじゃん。

 海賊ギルドが警備会社として護衛する。

 その料金の一部をいまだに海賊やってる連中に通行料として分けてるわけ。

 安全を買ってるってわけ。

 これは異常な話ではない。

 海賊と交渉できるのならどの企業もやるだろう。

 そこで海賊ギルドである。

 袂を分けたといえども元身内なんだから交渉の余地はある。

 だから通行料を払うことで安全に航行できた。

 護衛なんて演出でしかない。

 こういうのは事件が起こる前に解決しておくものなのだ、

 警備会社がいなくなれば襲うに決まってるじゃん!

 もちろん軍が護衛するって手はあるけど、無駄なリソースつぎ込むことになる。

 通行料?

 元身内と約束守らない国の軍じゃ料金が数倍違うに決まってんじゃん!

 しかも。「ざーこざーこ♪」なのである!

 実際、独立系の海賊が攻撃したら一目散に軍の護衛艦は逃げ出した。

 こんなのに命かけられないですよね~。

 民間人の命なんてどうでもいいですよね~。

 俺らは傍観。だって俺の子分じゃないもん。

 ただ捕獲された民間人の身代金は払ってやってる。

 身内価格のはした金だ。

 そして海賊ギルドのクロノス本社という名目で恩を押し売りしてやる。

 貸しだ、貸し!

 これも保険で補填されますし~。

 会計のマジックでどうでもごまかせる程度のものだ。

 さらに海賊ギルドが元身内に武器を売るのは禁止しない。

 いつかは元身内の海賊たちは破滅するだろう。

 パーシオンが本気を出したら終わりだ。

 ただ、いつ本気を出すのか?

 そのデータにはかけた金以上の価値がある。

 そんな仄暗い謀略、謀略とすら言えない嫌がらせをしていると、レプシトールから連絡が入る。

 またカレンさんだ。

 カレンさんはまめに連絡をしてくる。

 今日はいつになく真面目な顔だ。


「陛下。正直な感想を発言しても?」


「どうぞ」


「初対面のとき、私の胸を見てましたね」


「美女が谷間を見せつけてくれましたので」


「嘘ですね。陛下は我々をトカゲか人間か、変温動物か恒温動物か考えてらっしゃいました。あれはそういう顔です」


「だいたい正解です」


「さらに言えばラターニアのミネラルウォーターから身長や体格を測ろうとした。さらに後ろの温度計から我々の体温を推測しようとした」


「気づかれましたか。私も若輩の未熟者ということですね」


 バレてたわ。

 ま、別に困ることないけどね。


「いいえ、AIによる映像解析で陛下の視線を指摘されて初めて気づきましたわ」


「それはどうも」


「私、とても屈辱的でしたの。マイク&ハマー社創業者の孫として、いままで一度も負けたことのなかった私が出し抜かれた。それも自分よりも年下の若者に」


「勝ち負けが決まるようなレベルの情報ではありませんよ」


 大げさだな。


「私、初対面でうっすら思いましたの。この男は殺さなきゃって。それが確信に変わりましたわ」


「話し合いで解決しましょうよ、それがお互いにとって幸せだと思いますよ」


「ええ、そうでしょうね。殺さなきゃっていう本能的恐怖。それそのものが陛下の罠ですものね。パーシオンはその欲求に、いや恐怖に突き動かされた。そしてどんどん袋小路に追い込まれている」


「まさか。自分はあくまで軍人。民間人に怖がられたというだけでしょう。これ内緒なんですがね、私、戦略や謀略なんて苦手なんです。部隊長がせいぜいの小さな器のつまらない男なんですよ」


「……この嘘つき」


 本音なんだけどね。

 ジェスター補正はあるけどさー、それって俺がコントロールできる力じゃないもん。

 カミラさんはため息をついた。


「……議会にかけ合ってみましょう。レオ・カミシロ・クロノスと戦うなと。ですが期待しないでください。我々のパワーバランスはあなた方が思ってるよりはるかに複雑なのです」


 おっとデレた。

 これはびっくり。


「よろしくお願いします」


「命がけですがね、万が一のときは亡命をお願いします」


 なにその不穏なセリフ。

 やめてそういうの。

 いや本当に。

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― 新着の感想 ―
新しい嫁候補w いや見た目が人外はちょっと・・・。 ケビンでお腹一杯ですので。
いつもながらレオ君上手。 海賊ギルドは村上海賊感ありますね。ちゃんとアウトローな彼らは彼らなりの生活と生きる術がある事が判る感じがスゴクイイ。
あー、ケモノよりの本能があるのか
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