第五百七十三話
レプシトール。
企業による統治をしてる国家だ。
そこに暮らすレプシトール人は爬虫類のようなウロコを持つ。
おおむね人間形態の種族だ。
水槽の中にいるタコの人たちよりは我々に近い。
ただ気になることがある。
目の前の人物、カレンさん。
ええっとマイク&ハマー社の会長だ。
それはいい。
この時点でツッコミどころしかないが、もっと大きな問題がある。
小学生が考えた未来感のあるスーツの胸元を広く開け、その豊かな……。
そうなのだ。……おっぱいがある。
授乳しなければ必要ない器官だと思うのよ。
実際、プローンにはない。
つまり人間ベース?
いやだが……世界が求めてる? ……おっぱいを。
「なにか?」
「いえ、少し考えてしまいまして」
なぜだ?
なぜおっぱいがある!?
「銀河帝国基準でGですが」
「……」
まさかのGカップ。
ナゼだ……?
やはり人間ベースか?
「殿方の視線はたいていバレてますよ」
すかさず画面外から嫁ちゃんのデュクシが脇腹へヒット。
「なにを見てるのじゃ?」
「ち、違うのよ。純粋に科学的な疑問が気になっちゃって」
もう一回デュクシがヒット。
ハーレムに寛容な嫁ちゃんであるが、自分の許してないものには厳しい。
こないだもギャルものの……そのなんだ……そういうのを視聴したのがバレて部屋から追い出された。
カナシイ……。
食堂で寝袋敷いて寝たもん!
「それで、なんのご用かな? どこかの国が戦争を始めたせいで、せっかくの夫婦の時間を邪魔されての。のう婿殿」
「ソウダヨ!」
「ふふ仲がよろしいようで。先ほども言いましたが、我らと手を組み、悪の国家パーシオンを滅ぼしましょう」
痴話喧嘩で話をごまかすの術失敗。
真面目に言うか。
「我がクロノスは領土拡大の意思なし。戦争に関して介入する気はありません。ただ市民への虐殺などが行われ、要請があった場合は救助活動を行います」
「その救助活動でいくつの国家が滅亡したと? クロノスもそうですよね?」
「残念な結果になり遺憾の極みです。ですが我らは無軌道に侵略を繰り返してるわけではありません。その証拠に鬼神国やラターニアや太極国など複数の国家と強固な同盟関係を構築。またバトルドーム諸国とも友好と同盟関係を構築しております」
別に俺悪くないもん!
「あら、大公陛下は諸国でフレンドリーな悪魔と恐れられているようですが」
カレンさんはニコッと笑う。
ただしその笑顔は蛇のようなものだった。
「批判はご自由にどうぞ。我らは言論、表現の自由を大切なものとしており、基本的に制約しないことにしております」
にこり。
だって、同人誌やアニメに制約かけられたイヤだもん!
ようやく鬼神国でオリジナルアニメが完成して数ヶ月後に公開なのに!
ラターニアや太極国、それに我がクロノスでもコミックを作ろうという動きが出た。
この火を消さない!
主に俺自身のために!
つうかね!
ようやくクロノスもなにかあったら大喜利始める文化が定着してきたの!
これはいい傾向なんだからね!
「ふふふ、聞いていた通りの殿方のようですね」
すると嫁ちゃんが得意げな顔をする。
「この銀河帝国皇帝ヴェロニカの夫じゃからな!」
なんとなくお気づきだろうか。
そう、なぜか我々は雑談に終始してる。
『協力は断る。ただし雑談でごまかしながら』の術である。
それをカレンさんもわかってる。
お互い雑談をしながら腹の探り合いをしてるのだ。
向こうに与える情報は簡単だ。
『うちら関わりたくねえッス。でも虐殺だけはかんべんな』これだけ。
そもそもパーシオンがゼン神族の国家という証拠はない。
さらに言えばパーシオンに攻め込んだらパーシオンとレプシトールは手を組んでフルボッコまである。
そりゃさー、クロノス世論的には「ゼン神族殺す。慈悲はない」っていうのが大半だけど……。
それに俺を暗殺しようとしたパーシオンは滅ぼすベき派も多い。
でもいまはやらない。
レプシトールにそそのかされてやるってシナリオが気に入らない。
なんかさー、パーシオンをそそのかしたの。レプシトールくんじゃないかなって疑ってるのよ。……展開が速すぎて。
ということでお互い情報を引き出しながら雑談。
「銀河帝国皇帝ヴェロニカ様もレオ大公陛下の暗殺未遂事件にさぞお怒りのことでしょう」
「なあに妾は婿殿を信じておるのじゃ。宇宙最強の漢、それが我が夫、レオ・カミシロじゃ。暗殺未遂も恐れを知らぬ有象無象がちょっかいをかけただけのこと。そんなことより現在の寝不足の方が問題なくらいじゃ」
あらまー、言うねえ。
本気で潰しに来たのを有象無象呼ばわりよ。
「我が社の開発した快眠サプリメントを献上させていただきます」
カレンさんにっこり。
あらやだ……こっちも負けてないわ……。
おかしい。目がバグってる。
嫁ちゃんの後ろにブチ切れる虎が見える。
そしてカレンさんの後ろには大蛇が……。
なお俺は芋を持つ宇宙怪獣カワゴン。
えっと……家帰って寝ていいですか?
オレ……イモタベタイ……。
結局、次回の雑談タイムの約束をして終了。
何一つ話は進まない。
カレンさんを考える。Gカップの話ではない。
なんでもかんでも取引だと思ってる勢だろうか?
それだったら『感情戦に持ち込んで話がてんで噛み合わない地獄タイム』の術に持ち込むのだが。
そんなことを考えてると。嫁ちゃんが抱きついてきた。
「婿殿の作った料理食べたいのじゃ」
「了解ッス!」
というわけで食堂に行く。
すると快眠ドリンクがもう送られてきてた。
つまり会議前に俺らの寝不足を知ってたと。
やだー! レプシトール優秀!
それを見て嫁ちゃんは笑顔になる。
後ろに巨大な虎を背負って。
あ、はい。
「嫁ちゃんなに食べたい?」
「オムライス!」
「はーい!」
まずはチキンライスを作ってっと。
ニーナさんは仮眠中。
起こさないようにしようっと。
卵で包んでケチャップかけてっと。
「はい、嫁ちゃんオムライス」
「うむ!」
虎が消えた。
こうして家庭内の問題は消えたのだった。
レプシトール……恐ろしい子。
勝ちでも負けでもないけど……いままで会ったことないタイプだ。




