第五百七十二話
もはや意味がわからない。
ただ育毛剤をつけた頭皮がスースーしていた。
炭酸とセンブリの効果? なる。
政府緊急記者会見から一時間ほどで戦場の映像が送られてきた。
パーシオン国営放送とレプシトール国営放送が同時に映像を出した。
ただ見解は真逆だ。
パーシオンは戦艦を撃沈する大勝利と報道。
レプシトールも戦艦を撃沈する大勝利と報道した。
どちらも正義を主張。
映像はよくわからない画角の艦隊戦である。
うーん……。
「これさー、二国が結託してクロノスはめようとしてるんじゃね?」
「なんの目的でよ? 油断してるとこで二国がクロノス目指してくるくらいしか考えられねえぞ」
「とりあえずそれ警戒して」
「了解」
クレアがうなずいく。
寝不足で口数が少ない。
レンが眠そうな顔で濃い紅茶を入れてくれた。
「旦那様。お紅茶れす」
おそらく一番寝てないのはレンだろう。
俺たちより他のスタッフの方が忙しいよね。
問い合わせに緊急派遣された護衛の受け入れに警察の警備の増員に……。
戦争への対応に文官と武官が多数来た。
せっかく来てくれた人たちにお茶の一つも出さないわけにはいかない。
お茶出し……お茶だけじゃない。
軽食も作って配る。
宮殿で暮らしてるメディアの皆さんの分もね。
宮殿の横にある二十四時間営業の託児所も全力稼働。
毎回迷惑かけまくってるので菓子折と飲み物持ってご挨拶。
持ちつ持たれつの関係はこうやって維持するものなのである。
「儲かってるじゃん!」
じゃすまされない。
「二十四時間営業止めるぴょん!」
って言われたら俺たちは困るのだ。
いや本気で。
俺たちに子どもができたら宮殿内にも作るけど、さすがに報道や侍従さんの子どもたちと一緒というわけにはいかない。
つうかすでに提案して怒られてる。
要約すると「怪我したら責任の所在どうすんじゃボケがああああああああああッ!」である。
世の中は本当に難しいものだ。
宮殿の中もあわただしい。
点呼終わるまでに休憩所を清掃。
俺たちが起きてるのでトイレ掃除もする。
シャワー室のタオルの交換に、ランドリーの整備。
ボイラーも稼働。
記者会見までに俺たちの正装にアイロンをかけてくれる。
俺たちを着替えさせたら芋ジャージの洗濯と乾燥。
すり切れそうな芋ジャージ姿を他人に見せたらいけないそうだ。
たしかにそれ。
お気に入りのサンダルも洗われてしまった。
ランドリーが全力稼動してる。
さらに、この最中に押しかける議会議員に財界人の対応。
会わないわけにはいかないからね。
ゴミ捨てに庭園の掃除に、落とし物の対応に……。
宮殿スタッフの皆さん。いつもありがとうございます。
あなた方がいなければ私たち本気で全滅です。
というわけで各国人の保護を協議。
銀行を進出させてるラターニアが対応してくれることになった。
と言っても少ないんだけどね。
レプシトールじゃ鬼神国人は借金背負わされて奴隷にされる問題がもう何年もくすぶってる。
ラターニア人は両国人に奴隷にされた過去があり、クロノス人と太極国人は普通に差別されてる。
銀河帝国人は不気味な存在として全力で警戒されてる。
おおむね善人が多く明るく親切、秩序を重んじるが知らない間に利を取ってるということである。
それって善人で親切だからじゃないかな?
俺悪くないよね?
何度かの記者会見をして昼ごろになる。
そろそろ頭が働かなくなると交代で仮眠することになった。
食堂の床に寝袋敷いて寝る。
シーユンと嫁ちゃんはお部屋で。
俺は食堂で雑魚寝。
プロジェクターでニュースは二十四時間放送中。
動きがあったら起きてるやつが起こすことになる。
なぜかこの状態をルーちゃんママが撮影してる。
せっかくなので踊りたいところだが、気力がわかずスヤー……。
軍服で眠る俺の姿は全宇宙に報道された。
クロノス民は「王様無茶しやがって……」と涙したようだ。
俺寝てたから知らねえけど。
「んー……おなかすいた……」
起きて洗面所に行くと顔に落書きされてた。
猫型ロボットなのか怪異ピエロなのか判断が難しいやつ。
女官さんが笑いながらクレンジングで落としてくれた。
髪を整えて新しい軍服に着替える。
いままで着てたのは洗うそうである。
まだ臭くないのに……。
うむ……料理を……。
「お食事の用意が調いましてございます」
レンがそう言った。
雑な焼きそばとかじゃない。
つまり議会の皆さんとの食事会である。
軍の準礼服に着替えてクレアやイソノ、エディなどの身内をゾロゾロ引き連れて行く。
ケビンだけ「手術あるからパス」って言われた。
ケビンは女性型ゾークの代表だから扱いが難しいんだよね。
議会だと俺の反対派はいないんだけど、ワンオーワンとケビンの反対派はいるんだよね。
ゾークだけは無理って人かなりいる。
老人が多いかな?
クロノス関係ないってのもある。
排除するほどじゃないけど、クロノス公国の意思決定をさせるのだけは勘弁してくれって態度だ。
なのでワンオーワンとケビンは残る。
メリッサが付き添ってくれるようだ。サボりだよね?
頭使うの無理。あ、はい。
会場に着くと議会の重鎮たちがお出迎え。
まずは食事。
議会議員たちはみな食欲がない。
一方俺たちはみなぎる食欲という名のビーストを必死に抑えながら上品に食事をする。
コース料理、肉とお魚。
美味しい……だが、コース料理を食べると焼きそばや牛丼などの雑な料理が食べたくなる謎!
話し合うことも現状わかってることを説明するだけだ。
なんも隠してませんって言うだけ。
ま、議会の人たちも不安なんだろうね。
俺が情報隠してるか否かすらわからないもの。
なんで俺は「ラターニア銀行からの報告以上の情報はないッス」と言うしかない。
書類を各議員に渡す。
俺が直接やらんと不安なんだろうね。
ここが最終手段「出奔」を使えるタイプの大公の弱みである。
俺が情報出さないで華麗に夜逃げの準備してたらまずいもんね。
宮殿にもかなりの数の密偵がいると思うよ……。
密偵からの情報で、俺がなにも知らないって情報つかんでるだろうに。
そんな無意味……議会の連中の不安を解消するためだけの食事会が終わり……。
疲労MAXになったところでレプシトールから連絡が来たのだ。
ウロコのある爬虫類系寄りの姿の女性に言われる。
「大公陛下。我らとともに悪のパーシオンを滅ぼしましょう!」
え……やだ怖い。




