第五百七十話
大会終了後、即日パーシオンへ抗議と非難声明を出した。
あらかじめ書式テンプレートを複数用意してたからこのスピードである。
映像添えて、俺がサインしたら即提出。
文官も「え、徹夜しなくていいのぉッ?」って驚いてた。
民主制時代のクロノスじゃ徹夜は当たり前のブラック職場だったみたい。
書類仕事で何度も死にかけた俺はそんなの許さない。
手間はなるべく減らす!
俺に回ってくる書類を減らすためにもな!
それでも夜シフトの人は残すし、偉い人は夜中起こされるかもしれない。
しばらくは三交代制シフトかな。許してね。
なお俺は眠れない。
ずっとパーシオンや周辺国と会議だ。
体痛いのに~!
プロテインと痛み止めと胃薬飲んで対応。
すぐ痛みを止めなくてもいい場合は経口摂取の方が安全なのだ。
パーシオンの外務大臣から連絡来たのでイソノが対応。
はっはっは!
俺、仮眠とっていい?
手がぷるぷる震えてるのよ。
俺は試合後にエンジニア部門総責任者の京子ちゃんに正座で怒られた。
「殺戮の夜が壊れるのはしかたないです……だけど新型の胡蝶の夢まで壊すのはどういう了見じゃぼけえええええええ!」
ということである。
俺、今回だけは悪くないと思うのよ。
あのくらいやらないとカトリ先生に勝てないし。
なおカトリ先生であるが一晩入院とのこと。
骨や臓器は無事。体じゅうに打撲があるだけ。
機体が大破したので念のためである。
やーい! 病院送り!
なお俺も打撲だらけであるが、優秀な軍のナノマシンのおかげでテキトーな栄養摂取で休息回復できる。
なんか俺とかカトリ先生は各種安全装置があまり意味をなさないんだよね。
……動きが激しすぎて。
それでもあたいは戦うわ……。
軍人って哀しい生き物ね……。
イソノは一晩中パーシオンの外務大臣にウザ絡みされた。
「勘弁してくれよ……」
そのつぶやきには哀愁が漂う。
そう、それは漢という名の物語……。
「レオ! てめえも仕事しろ!」
「イヤぷー!」
それは冗談として、俺の方もお仕事。
あちこちに書類を提出。
クロノス軍に映像を提出。
俺とカトリ先生のコックピットの映像に、各種ログを提出。
敵戦艦のログの解析結果を承認。
つっても俺が読むんじゃなくて分析官の分析結果を承認する。
これもあらかじめ夜番の班を編制してたおかげでサクサク進んだ。
いやさー、パーシオン側としたら「国営放送の記者が船の操作を誤った」とか「俺たちの知らないテロリスト」と言い張るしかない。
「もう宣戦布告しちゃうの術」もあるか。
なんで俺たちは「お前のとこの軍艦じゃね?」、「ログ見ろや。軍から正式な指令出てるぞ」と抗議するのである。
もちろん「犯人はお前じゃ死ね!」といきなり宣戦布告するルートもあるが、議会で説明責任に追われる。
当方は独裁者になるだけの気力も器もない。
なのでガチガチに証拠固めて議会で論戦した方がまだマシである。
今回は軍事的挑発と言うにはあまりにも直接的に喧嘩売ってきてる。
このまま侵攻してもいいんだけど、別にパーシオンいらないし。
パーシオン側のメンツは丸つぶれにしたし。
「本気で国際大会に殴り込んで暗殺しようとしたのに返り討ちにされてやんの! ギャハー!」
もうこれである。
さらに言うと、ここで報復しないとなめられるというこちらの事情も……。
さーて、どう調理するかね。
とりあえずメンツは徹底的に潰しておこうと思う。
なお鬼神国では「レオの兄貴祭り」という謎のイベントが自然発生した。
群衆が川にダイブし、山車が街中を暴走した。
剣聖とその弟子による死闘は鬼神国人の魂に刺さったようである。
インタビューに答えた鬼神国の若者が叫んだ。
「俺、来年こそレオの兄貴に挑戦するっす!」
「来んなバカ! ぶぁーか!」
俺は思わず怒鳴った。
ツッコミ不在、まさにツッコミ不在であった。
猫吸いに行こう。
「きなこちゃん!」
「にゃーん♪」
「かわいいでちゅねえ♪」
ズズズズズズズズ……と猫を吸う。
だいふくも俺を見てスリスリしてくれる。
このような情けない生き物がクロノス大公なのである。
さてルーちゃんママたちは素早かった。
テロ事件直後から緊急特番を繰り返し報道してる。
すでにパーシオンはさらし者状態だ。
あれだけやってたった二機に全滅、しかも船まで墜とされる。
侍なら辞世の句が必要なレベルだろう。
実際、各国からは俺への称賛メッセージが届き、パーシオンへの非難声明が相次いでる。
うんアホだな。
俺とカトリ先生を殺るのが最低条件とか目標設定が間違ってる。
ルーちゃんはタチアナにワンオーワンにシーユンが面倒見てる。
王宮に託児所と放課後児童クラブ作らないとねえ。
要望送っておこう。
猫吸いを終えて食堂へ。
どちらにせよ。俺は寝られない。
いきなり宣戦布告してくる可能性があるからね。
食堂に行き夜食を作る。
料理人がいる方の食堂じゃなくて、俺たちが自由に使っていい方の食堂。
結局分けることになったのである。
みんな仕事してる。
「ちーっす」
元気に体育会系的ご挨拶。
「おつかれーッス」
中島が挨拶を返すと栄養ドリンクをぐびりと飲んだ。
他にもクレアやレンも仕事してた。
レンもいまや宮殿侍従総長だもんね……。
そりゃ忙しいわ。
「みんな、夜食作るけどなに食べたい?」
「うーん……ラーメン」
クレアが答えてくれた。
「あいよ~」
ラーメンだな。
出汁パックを煮出して業務用のベーススープと混ぜる。
醤油ベースに……。
「味のリクエストは」
「醤油」
クレアが言うと中島が。
「味噌」
あ、またもめるやつ。
「言っとくが豚骨はカスタマイズしない業務用スープだからな」
「ぐ!」
豚骨&醤油豚骨どもが不満そうだ。
作る手間考えろ。
「塩がいいです!」
レンは今日は塩スープ気分らしい。
「チャーシュー山盛りで」
「あ、はい」
チャーシューは作ってストックしてるのがある。
醤油に味噌に塩に……。
「醤油であります!」
すでにワンオーワンが着席。
目を輝かせる。
「はいはい了解」
「婿殿~、おなかすいたのじゃー」
嫁ちゃんも来た。
「あ、こっちにいやがった! ワンはどうやって飯の気配を感じてるんだ? あ、味噌お願いッス」
タチアナも来た。
ルーちゃんも連れて。
「レオ様、私も塩で」
遠慮がちなシーユン。
君はそのままでいてください。
こうして深夜のラーメンパーティーが……あれ?
仕事の話してた記憶が……ま、いいか。




