第五百六十九話
カトリ先生が刀を構えた。
俺も構える。
ここからは軍艦なんかより強大な敵だ。
……なんだこのバグッた思考。
カトリ先生の専用機は鬼神国のデザインを取り入れた鎧武者『胡蝶の夢』。
太刀の二刀流がすでに凶悪すぎる。
最新機体だけあって、設計が洗練されている。
最新鋭の操作アシストつき。
対して俺は無茶な動きをするためパーツ交換を見越したシンプル設計。
操作アシストなにそれおいしいの。マニュアル機だ。操作は難しい。
俺は刀で斬りかかる。
後の先? 極意? 知るかそんなもん!
先手必勝じゃボケえええええええええ!
刀を下から跳ね上げられた。
だが想定済み。
俺は上から押しつぶす。
単純な動きなら一刀の方が強いもんね!
このまま上から剣ごと押しつぶしてくれる!
カトリ先生はベクトルを変えようとするが俺はそれを許さない。
「そう簡単に倒されるかよ!」
カトリ先生の抵抗が始まった。
カトリ先生も下から腕力で抵抗する。
だんだんと俺たちはつばぜり合いになっていく。
技術が必要になるとカトリ先生の方が強い。
ぐぬぬぬぬぬぬ!
刃が殺戮の夜の首筋に……。ら、らめ!
このままじゃ二刀流で両側から切断される!
「さあどうした! 俺を倒してみろ!」
俺はサイドによけるしかなかった。
ちゃん回避できれば拮抗した力がゼロになり前に圧力をかけてる胡蝶の夢がバランスを崩す……はずもない。
カトリ先生がそのままぶんっと俺を押しつぶす。
サイドに周りながら潰された俺は慣性で離脱す……間合いを詰めてきやがった!
「そろそろ行くぜ!」
二刀流による八方向からの斬撃が同時に来た。
いや同時じゃない。
あまりにも速くそう見えるだけだ。
こういうのはヘタによけない!
俺の方が一撃は重いもん!
「うおおおおおおおおおおおおおッ!」
突きを繰り出す。
突いてしまえば距離を開けられる。
ドスッと胴突きが……手応えがない!
半歩、たった半歩後ろに下がって回避してた。
俺の間合いが完全に読まれてる!
カトリ先生がスルッと腕を搦めて……組み討ちが来る!
バーニア全開! 回避! 回避! 回避!
蹴飛ばして腕を抜き距離を取る。
一旦仕切り直しだ。
……なんてのを許してくれないのがカトリ先生ですよね!
すでに食らった死ぬタイプの突撃をしてきていた。
二刀の突きが殺戮の夜の頭部を捉えていた。
「うおおおおおおおおおおおおおッ!」
あんなの食らったら死ぬわ!
「ふんが!」
俺はあわててキリモミ回避。
ドゴッと機体が揺れた。
暴走特急カトリに跳ねられたのだ。
だが突きだけは回避。
俺はさらにキリモミして離れていく。
てめえ! もう許さねえぞ!
俺はキリモミしながらライフルを抜く。
「はッ! そんな状態で撃てるはずがねえだろが!」
カトリ先生が突っ込んでくる。
……職業軍人なめてんじゃねえぞ!
俺は狙う……。集中だ!
俺はグルグル回りながら……タイミングを計って射撃!
「ぐッ!」
カトリ先生の肩に命中!
撃ち抜いた。よっしゃ当たった!
カトリ先生の機体が刀を一本落とした。
「な! 当てやがった! てめえ化け物か!」
「そっちの方がバケモンですぅッ!」
ようやく姿勢制御に成功した俺はカトリ先生を撃っていく。
「どもレンジでも戦えるテメエの方がよほどバケモンじゃボケ!」
カトリ先生は片手でビームを斬って行く。
「ビーム斬る人の方がバケモンですぅッ!」
俺は銃を収納。剣を抜く。
相手は片手……だが勝つには……勝つにはどうすれば……。
俺は重い一撃を放つ。
……だがカトリ先生が普通の戦略なんか通るはずもない。
何度も斬り、いなされる。
二刀流の片腕潰してこれよ!
化け物すぎるでしょ!
俺はだんだんと崩されていく。
そして……。
「死ねえええええええええええッ!」
一撃が殺戮の夜を襲った。
だが俺はそれを待っていた。
俺の手には拳銃が握られていた。
一番抜くのが速い武器な!
俺はすべて予想していた。
そして初心を思い出した。
俺は軍人だ。剣士じゃない。
だから使える武器はなんでも使う。
俺は拳銃を乱射した。
カードリッジの全エネルギーを使い果たすほどの連射。
だがカトリ先生は突っ込んでくる。
装甲がベコベコになった暴走特急カトリが俺めがけて渾身の突きを放つ。
だがそれでよかった。
拳銃なんてただの目くらましだもんねー!
俺は突きを放つ手をつかんだ。
足を引っかけてバーニア全開。
背中側に腕を曲げながら組み合う。
「はッ! 折らせるわけねえだろ! 加速なんかしても意味ねえぞ!」
「意味あるもんねー! 俺の勝ちッス!」
俺は明るい声で勝利を予告する。
「はッ?」
カトリ先生が驚いた声を出した瞬間、俺たちは浮遊するデブリ。巨大な岩でできた隕石が見えた。
これが見えてたんだもんねー!
俺は胡蝶の夢の腕をへし折りながら、背中に刀を突き立てながら隕石に突っ込んだ。
隕石の勢いで殺戮の夜の足が砕けた。
ベキベキと音を立てて破片が飛んでいく。
だがこれは必要な犠牲でしかない。
俺は刀を胡蝶の夢に突き刺し、隕石に深々と突き刺していた。
胡蝶の夢も全身が砕けていた。
そりゃそうか。デブリにぶつかったらこうなるわ。
さすがの胡蝶の夢でも操作不能だろう。
「俺の勝ちッス」
「クソ……負けだ」
二機ともほぼ大破。
勝負がついたのに静寂だった。
あっれ~? おかしいな。実況の声が聞こえない。
すると遅れて感性が上がった。
「う、うおおおおおおおお! 王様が勝ったぞ!」
「す、すげえええええええええ! どちらもバケモンじゃねえか!」
「王様万歳!」
あー、死ぬかと思った。
試合にしちゃハードすぎるだろ。
俺が口を開けて呼吸してると、嫁ちゃんから通信が入る。
「でかした婿殿! 文句なしの勝利じゃ!」
「嫁ちゃん……次は不参加でお願いします……」
「無理じゃな」
「なんでぇ?」
「宇宙各地から挑戦の申し込みが来ておる」
「もーやだー! 疲れたああああああああああッ! 嫁ちゃんとイチャイチャしたいいいいいいッ!」
すると嫁ちゃんがニコッとほほ笑んだ。
「あのな婿殿……その……この通信も中継されてるぞ」
「ぎゃあああああああああああああッ!」
新たな黒歴史を背負った孤独のヒーロージェスター。
いいもんねー!
夫婦仲いいもんねー!
俺は気にしないもんねー!
こうして俺は宇宙最強の称号を手に入れたのだった。
……ところで拿捕した船どうなったん?




