第五百六十四話
サッカー大会後、イソノのスポーツ団体にアホみたいな金が入ってきた。
俺たちはイソノが使う前に口座を押さえたのである。
「俺……信用ないよな?」
イソノがいじけた。
俺は肩を叩いて笑顔で言う。
「イソノ……聞け。個人が金持ってるとろくなことねえぞ。命狙われるし」
「レオ、お前は大丈夫じゃん」
「そりゃ俺は狙うの難しいからな。近衛騎士団が常に守ってるし。それに俺は弾丸避けられることをみんな知ってる」
「いや弾丸つかみなら俺もできるが?」
「くっくっく、その情報は広く知られてないのだよ! 来るぞ! 面倒な勢力が! スポーツの勝ち負けから政治まで、空気入れられたバカに無限に命を狙われるぞ~!」
「ぐっ!」
はい俺の勝ち!
ということで格闘大会の開会式なのである。
俺は礼服で開会式に挑む。
パーソナルシールド、ヨシ!
手袋……あ、礼服用の白いのじゃなくてバトルグローブ持って来ちゃった。
侍従の皆さんも忙しすぎてボケてるな。
ま、いいか。
別に俺困んねえし。
手を振りながら開会式へ。
開会の言葉を読んで……はいこれで最終日のエキシビションだけ……。
と気を抜いた瞬間だった。
(殺気!)
次の瞬間、パルスライフルのビームが飛んできた、
一発、二発とよけて……おっと他にも射手がいやがる!
パーソナルシールドで防御ッと。
もちろんクロノス警察は無能じゃない。
鬼神国人の警察官がすぐにやってきて……の前に犯人は市民に袋だたきにされた。
「テメエコラ! 王様に何してんだボケが!」
激怒した市民のサッカーボールキック。
「今日からお前がサッカーボールな!」って状態だった。
誰一人として手加減してない。
本気で蹴ってた。
殺される前に救出できた警察偉い!
俺はというと近衛騎士団と避難。
悲しいわ。あたい。
ルーちゃんママとカメラも随伴。
「はっはっは大丈夫ッスよ! 俺が守りますんで! ご安心ください!」
「は、はあ」
いや、あんたを守らなきゃならないだろって顔された。
王様ジョークなんだけど。
でも笑いながらカメラに手を振ったのよ。
そしたら殺気が。
「死ね! 大公!」
それは実弾の拳銃だった。
連射してきたら軍人。
そうじゃなかったら素人っと。
俺は迷わず犯人に突っ込んでいく。
犯人は拳銃を発射。
連射してきた。
おっと、プロか!
弾丸の軌道は予測できた。
俺に当たらないのが半分。
いくつかが俺に当たる。
当たるのだけをバトルグローブでつかむ。
足に当たりそうなのは、なるべく回避。
どうしても無理なのはパーソナルシールドを信じる。
「ふ、ふざけッ」
つかんだ弾丸を投げつける。
とっさに防御しようとした。
刺さるわけないじゃん!
「オラよッ!」
股間を蹴り上げる。
これで硬かったらボディーアーマー着用。
そしたら投げ技からの関節技地獄に移行する。
おいおい、俺を殺りにきたんだ。
アーマーつけてないはずねえだろ。はっはっは!
ぶにゅり。……あっ。
「まっ!」
アーマーなんてなかった。
襲撃者はこの世の絶望を集めたみたいな顔してる。
「は、はひっ……」
「息できないのね! 深呼吸して!」
「あ、あが……!」
この世のすべてが終わったんですね。複数の意味で。
あ、うん……武士の情け。首トン!
でもさ俺……首トンうまくできないのよ……だから腕でギロチンチョップ。
ぐちゃ!
「へぶッ!」
「ふう……悪は滅んだ」
ルーちゃんママたち民間人はシールドで無事。
いまの醜態を思いっきり撮られてたようだ。
「オフレコで……」
「ライブです」
ダメだった。
さーて弾丸つかみが思いっきりフラグだったわけであるが……。
俺の痴態は銀河に広く報道されてしまった。
銃が当たらない化物。
この評判はもはや俺のコントールできないくらいに広がってしまったのだ。
犯人はパーシオン人が二人に最後のはオーゼン人。
ちょっかい出したときにクロノス軍に捕まって命を拾った元オーゼンの正規兵みたい。
オーゼン人が皆殺しになる前だね。
それでやり場のない怒りを俺にぶつけたと。
クロノス軍に入るならわかるけど、俺の命狙うのおかしくね?
俺悪くないよね?
むしろ敵討ちしてやってる側だよね?
どうりでアーマーもつけてこなかったわけよ。
無能とまでは言わないけど練度が低すぎる。
銀河帝国の近衛騎士団なら問答無情でグーパンされるレベル。
……って俺の礼服にバトルグローブも鉄拳制裁レベルだ。
ポケットに入れて証拠隠滅しよう。うん。
「今度から股間は蹴らないようにしようかナ」
ニッコリと笑顔でカメラに言う。
グローブ隠しながら。
「よ、余裕すぎる……」
ルーちゃんママの口から思わず漏れた。
「命狙われるのは初めてじゃありませんので。ホテルに戦車が来たり。今回は弱くて助かりました。はっはっは!」
なぜかカメラマンまで口をあんぐり開けてる。
だってしかたないじゃん。
いつものことなんだし!
そのまま近衛に宮殿に運ばれて開会式は中止。
大会は数日延期になった。
帰ると海賊ギルドから連絡が入る。
俺係、筋肉質のマッチョからの連絡だ。
「大首領様」
「いきなりバグるのやめてもらっていいですか?」
「えー、会議でレオ様を『大首領』とお呼びすることが決定しました」
「なにそれぇ!」
「それよりも大変です。大首領様にかけられていた賞金がつり上がってます」
「俺、賞金首だったのぉッ!?」
「そりゃ有名人ですし」
「つり上がってって?」
「だいたい惑星が買えるくらいの値段になりました」
「俺を殺しても銀河帝国とクロノスが報復するよね? 惑星一つじゃ割に合わなくない?」
「……そういう考え方もありますがね。賞金首でこの値段は法外です」
「そもそも誰よ。俺の命なんか狙ってるの?」
「オーゼンから逃げた金持ちに。パーシオンに亡命したクロノスの大公反対派に。元海賊ギルドで大首領様を狙ってる勢力に……」
「やだ説得力ある! つうかクロノス人は取り締まってないから帰ってくればいいのに」
「オーゼンのスパイですよ」
「死刑だな」
「そういうことです」
「鬼神国のヤンキーに金握らせた方が速くない?」
「鬼神国人がそんな卑怯なことをするとでも?」
「そりゃそうか」
そういう意味じゃ鬼神国人は安心感がある。
うーん、どうしようかな?
羅刹の銀河①
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