第五百六十二話
サッカー大会の直前くらいに武道大会の開催をアナウンスする。
するとパーシオンから参加の申し込みがあった。
断る理由もないので参加者をエントリーしておく。
俺はトーナメントには不参加。
カトリ先生とのエキシビションマッチのみの参加である。
サッカー大会では開会の挨拶のみね。楽だわ。
サッカーの話である。
今回は士官学校のサッカー部ではなく銀河帝国のプロチームが参加する。
今回代表チームにしなかったのは単に銀河帝国が有利すぎるからだ。
だってプロ選手の数が違うもの。
それはダメだよ。
外宇宙ではかなり前から銀河帝国の元プロが各地で指導してた。
元プロスポーツ選手の第二の人生問題ってかなり深刻なんだよね。
そりゃ成功する人も中にはいるけど、過半数は燻ってる。
学校のコーチやスポーツスクールのコーチも枠が限られてる。
一般の就職ができる人ならいいけど、そうじゃない人も多い。
プロ時代に反社組織と繋がって、引退後に海賊として……なんても少なくない。
そこでサッカーの伝道師作戦である。
銀河帝国の反社もラターニアやクロノスまでは追って来られないだろう。
「俺の顔つぶしたらわかるな?」って海賊より怖い感じで脅してある。
何かやらかしたら軍で強制労働させようと思う。
さてサッカーであるが士官学校サッカー部、現在はクロノス公国軍サッカー部が警備に奔走してた。
憧れのスター選手の警備である。
女子サッカー部もニコニコしてる。
……男子も女子も……こっちじゃ実業団扱いの半分プロ選手でしょが。
クロノス公国からはプロチームが出場してる。
クロノス公国軍サッカー部は予選リーグ敗退したのである。
勝利したのはカミシログループヴァンダーファルケ。
カミシログループクロノスの所有するチームである。
何度もクロノス公国軍と優勝争いを繰り広げた有力チームである。
選手兼監督は元院生のヤマオカ先輩である。
ヤマオカ先輩はサッカーのために軍を除隊した筋金入りのサッカーバカ。
そのまま数多くいる身内に本家の家督、伯爵位まで譲ったほど……ヤベエやつだ。
隠居届を直接嫁ちゃんに提出したもの。
嫁ちゃんも口開けて固まってたよ。
文句も言えないくらい驚いてた。
いやそういうわけにいかねえだろと。
お前英雄やぞと。
とりあえずクロノスの貴族にしてイソノの下でスポーツ庁長官を兼任させた。
大学院での専攻はスポーツ経済。
球技からプロレスまで、マネタイズならまかせておけ。
俺たちのスポーツが黒字なのはヤマオカ先輩の力が大きい。
絶対に手放せない存在である。
もちろん商社から派遣されたスポーツ経営の専門家もいるんだけど、彼らを使う司令塔はヤマオカ先輩なのである。
実際すげえのよ……引き抜きが……。
歴史ある中立派の公爵家から婿入りを打診されたりとか。
たしかに表面上は「スポーツに多大な貢献をした英雄に冷や飯食わせてる」ように見えるだろう。
……違うのよ。すべてヤマオカ先輩が自ら望んだことなのよ。
中立派と関係者全員で腹を割った話し合い……本音をシャウトする会議の結果、ヤマオカ先輩は公爵家の親戚筋の姫と結婚した。
そんな夫婦はいつも楽しそうである。
人生を全力で楽しんでるな……。
そんなヤマオカ先輩もプロとの試合を張り切ってる。
俺たちは暗殺でもされたら困るので全力で警備する。
俺は開会式で挨拶。
みんなはサッカースタジアムの警備をしてた。
開会式が終わったら俺も貴賓席で警備の報告を受ける。
「こちらリコ、不審物はなかったよ」
「なにもやってこない確率の方が高いけど警備は厳重に頼んます」
「了解」
嫁ちゃんも貴賓席で報告を受ける。
「こちら銀河帝国選手団担当。不審物ありません」
「不審者はどうじゃ?」
「大量に」
そりゃそうか。
人気者だもんね。
この状態じゃ逆に襲撃するのは難しい。
パーシオンも大人しい。
試合が始まった。
初戦はクロノス公国と鬼神国。
いつもの相手だ。
二チームとも慣れたもの。
敵チームというよりは立ち上げから共に戦った仲間みたいな雰囲気である。
和気藹々としながらも激しい試合を見せる。
双方……レベル上がったな。
普通に面白い試合だ。
試合が終わりクロノスが勝利した。
両チームともさわやかであった。
みんな成長したね。俺うれしいよ。
で、ここで俺と嫁ちゃんは帰る。
夜は太極国とラターニアが戦う。
シーユンが貴賓席で観戦。
ワンオーワンとタチアナがいるので大丈夫だろう。
禁軍もいるし。ワンオーワンとこの執事さんもいるしね。
タチアナにはラターニア、太極国、クロノスの精鋭で構成される聖女親衛隊がついてるし。
となるとテロを起こすならパーシオンと銀河帝国戦か……。
ただパーシオンがテロを起こすとは限らない。
本当にクロノスと仲良くしたいと思ってる可能性も捨てきれない。
とにかく警戒しながら大会を進めるしかない。
「宮殿に戻るとすぐにリコちから連絡が入る」
「こちらリコ、大量に煙幕と爆竹持ち込んだやつを逮捕したよ」
「国籍は?」
「パーシオン」
うーん、本当にテロをするならいきなりズドンってやるはずだ。
こりゃただのバカだな。
「パーシオンはなんだって?」
「引き渡しを要求してるって。自国で裁くってさ」
「じゃ、引き渡して」
「いいの?」
「ただの爆竹だしね」
警備を破るためのマニュアル作ってるとか工作を疑うけど、それはそれでかまわない。
テロなんてやったらぶち殺すってだけだ。
この日、捕まったのはホラ貝持ち込んだ鬼神国人に、酒飲んで暴れた鬼神国人に、喧嘩はじめた鬼神国人多数に……。
バカどもがああああああああああああ!
「鬼神国人のお客様~レオくんからのお知らせです。喧嘩するなら相手になってやるから宮殿に集合だぴょん♪」
「うおおおおおおおおおおおおおッ! レオの兄貴にチャレンジできるぞ!」
「かかって来いやボケナスども!」
こうして太極国とラターニアの素晴らしい試合の裏で。
俺と鬼神国人のバトルロイヤルデスマッチが開催されたのである……。
なおサリアきゅんも強制的にバトルロイヤルに俺サイドで参加させた。
「あんたねえええええええええええええ!」
「うけけけけけけけ! 死なば諸共じゃあああああああああ!」
両国の友情は深まったと思う。




