第五百六十一話
カトリ先生に気づかれないように遅延行為。
そして俺たちで議論のための議論を繰り返す。
「なあなあレオ、今日の晩飯なんだっけ?」
イソノの野郎に聞かれた。
「宮殿の畑でブロッコリーが収穫できたから、他の野菜と魚で中華風ガーリック炒めにするみたいよ」
「なるほどブロッコリーか。では今日の会議は解散で」
「ブロッコリー!」
はっはっは!
俺たちの勝ちだ!
永遠に大会など開催させない!
さーて、きなこと遊ぼうっと。
「きなこ!」
「にゃーん♪」
神社でだいふくと遊んでたきなこを迎えに行く。
ニコニコしながらやってきた。
「はいはいパパでしゅよ~。かわいいでしゅね~」
どうぶつ係と化したメリッサが笑う。
「ふふふ。隊長、赤ちゃん言葉になってるよ」
「いいでしゅよね~」
「にゃーん♪」
ゴロゴロスリスリしてくる。
やはり癒しだわ。
うちの子が一番かわいい。
「だいふくもかわいいでしゅよ~」
「きゅっ!」
ということで帰ろうとすると、なぜか二匹ともメリッサの後ろに隠れた。
殺気を感じて振り返りもせずに脱兎のごとく逃げる。
……が襟をつかまれた。
「レオくんさ~、大会どうなってるの?」
カトリ先生である。
「先生、現在安全面評価などの会議を重ねてます」
俺は胡散臭い顔で言いきった。
毎回ブロッコリーがどうたらやゲームの新作の話をしてることが漏れるはずがない。
官僚構造で徐々に忘れられていき、いつかは計画や責任の所在そのものが消えるさだめ!
あまりにも完璧! 完璧すぎる!
官僚構造そのものを使いこなす己のセンスが怖い!
「そうか」
そう言うとカトリ先生は木刀を地面に突き刺した。
ふふふ、暴力で官僚構造を破れるとでも!
はっはっは!
勝ったな!
するとカトリ先生は俺に紙を差し出した。
「なんスかそれ?」
「果たし状だ」
「ふぁ?」
なに言ってんだおっさん。
半分バカにしながら読む。
おいおいおいおいおいおい……。
「人型戦闘機での決闘って……あんた目はどうすんだよ?」
「手術を決めた。ゾークと外宇宙のテクノロジーを取り込んだいまなら可能だ。お前の真の全力、そして俺があきらめた夢の果てを見たい」
一気に頭が冷静になった。
「俺はこれでもパイロットの頭張ってんだ。何度も死線をくぐり抜けたし、何度も死にかけた。剣が強いだけのおっさんが……なめてんじゃねえぞ!」
俺はカトリ先生の胸倉をつかんだ。
「わかってる。だがなレオ・カミシロ! お前という最強に挑む。いまやすべての武人の夢だ!」
「勘弁してくれよ……」
「くっくっく……この年で俺も挑戦者だ……。逃げられると思うなよ」
「先生、受けて立ちますよ。これでもパイロットの世界じゃ最強を名乗ってるもんで。だけど、せめてシミュレーターソロクリアくらいはしてくださいよ」
「当然だ! 待ってろレオ・カミシロ」
カトリ先生は大喜びで帰って行く。
クッソ、逃げられなくなった。
「あー……妖精さん聞いてた?」
「暑苦しい漢の友情。聞いてましたよ~」
「カトリ先生の専用機の用意して」
「いきなり専用機ですか?」
「カトリ先生ならすぐにソロクリアしてくるって。ゼン神族との戦いでカトリ先生が戦ってくれたら心強いでしょ」
ということで俺は逃げられなくなったわけである。
カナシイ……。
野球の試合が始まる。
するとパーシオンから連絡が入る。
「なにかありましたか?」
笑顔で出るとビクトルのおっさんが全力で渋い顔をしていた。
なにか大きなストレスにさらされたようだ。
「そちらが計画してるサッカーだが……我らも参加させてほしい」
「えっとルールなどは?」
「問題ない。ラターニアの資料から学んだ」
ルールブックや初球指南書やテクニック指南の各種動画はラターニア語版もある。
もちろんクロノス版もすでに出回ってる。
できるって言うのだから断る理由はない。
「ならどうぞ、練習試合の日程は……」
これは外交である。
平和だの国威高揚の効果だのは著しく低いが、なにかあったときの緊急連絡先が増えると考えればコストパフォーマンスは高い。
政治とスポーツは別なんてのは寝言なのよ。
相手をコントロールするって意味じゃない。
人間のつきあいの中に組み込んじゃうって意味である。
だから断る理由はない。
ということでサッカー大会にパーシオンが参加することになった。
……ちょっと用心しとこうかな。
これは差別じゃないよ。
いや本当に。
責任者のイソノと中島のとこに行こう。
ノックもせずに足でドアを開けてソファに腰掛ける。
「サッカー大会。パーシオンが参加することになった」
「……お、おう」
イソノも中島もキョトンとした顔で俺を見る。
察しが悪い。
……疲れすぎて思考停止してるようだ。
「警備を強化して」
「おう! リコに連絡する」
リコちがやって来た。
「パーシオンが参加って本当です?」
「なのよー。だから警備強化して」
「了解……手荷物検査は?」
「強化して。表向きの理由は「酒の持ち込みが多かった」とかで」
「酒だけだと弱いかな……スタジアムでビール売ってるし……理由は酒と爆竹にするね」
「よろしく」
ということで疑いながらも親善試合が組まれたわけである。
野球であるが銀河帝国のチームが無双した。
そりゃ当たり前だ。
子どもの頃からリトルリーグで育った野球エリートが、中学高校と強豪校でしのぎを削りプロになるわけである。
まだ野球が来て三年目のとことじゃレベルが違いすぎる……って言いたいとこなんだけど、試合にはなってた。
ちゃんと試合が成立してた。
技術的には圧倒的な差があるけど基礎体力や運動力でカバーしてた。
銀河帝国のプロチームも手を抜かなかったのが素晴らしい。
結局、ガチ勢が強い。
キレ散らかしてた太極国との決勝だった。
しかも圧倒的な展開じゃない。
ちゃんと銀河帝国からも得点して意地を見せた。
自国のリーグを見て顔を真っ赤にしてたシーユンも自国チームのまさかの健闘に満面の笑顔である。
「皇帝の名の元に褒美を与えなくてはなりませんね」
シーユンは表彰台を見て穏やかにほほ笑む。
選手たちを讃えるために国に一時帰国するそうである。
シーユンの頭の血管が心配な俺だった。
なお鬼神国であるが……悲惨な結果に。
「ド畜生があああああああああああああああああッ!」
サリアの叫びが響いたのである。




