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第五百五十八話

 パーシオン統一人民国。

 怖い方の全体主義の国だ。

 銀河帝国の「俺たちの星を守ろうぜ!」っていうゆるい縛りとは違う。

「国家へ忠誠を尽くせ」って方の全体主義である。

 同じく全体主義的なラターニアは「国は国民を守り、国民は国を守る」っていう相互契約だ。

 互いの約束なのでフェアではある。

 実際、ラターニアは国民の遺体にすら金を払う。

 太極国は俺たちとそれほど違いがない。

 惑星領主にあたる県令は領民を守る義務があり、領民は惑星を守るために従軍する義務がある。

 クロノスはまだそこまで制度が固まってないけど、徴兵制はある。

 人口減りすぎたうえに正体不明の敵がいるのだからしかたない。

 とにかく、税金含めた国への奉仕は各国ともに国民へ課せられている。

 だがパーシオンはその中でも異彩を放つ。

 政府機関紙「報道」とパーシオン労働者党の機関誌「真実正義」に森羅万象の真理が書かれている。

 あ、大丈夫ッス。

 俺も意味わかんねえから。

 今回それらを手に入れた。紙よ! 紙!

 みんなで回し読み。

 ふむふむ「労働者よ! 侵略者を打ち倒せ!」。


「侵略者って誰よ?」


 俺は思わずつぶやいた。

 現在パーシオンと戦争状態の国はないはずだ。

 するとクレアが苦笑いする。


「クロノスかな?」


「もしくは銀河帝国じゃろうな。第三者から見れば銀河帝国は次々と支配領域を広げる危険な国家じゃからの」


 嫁ちゃんの言葉には少し納得した。

 でもさー、喧嘩売ってこなきゃ俺たちは攻撃しないよ。

 国民の命がかかってるわけでさ。

 そもそも支配領域拡張の発端はプローンが喧嘩売ってきたからだし。

 そのプローンだって借金踏み倒そうとして滅びたわけで。

 そこからはゼン神族の自爆じゃん。

 俺ら悪くないよね?

 話し合いをするが「全体主義国家怖いよね~」に「銀河帝国にビビリ散らかしてる」という感想しか出なかった。

 頼みのシーユンも「かなり大きな貿易国家ですが……よくわかりません」と言われた。

 貿易はすれど外国人は受け入れずみたいな国家らしい。

 結局、事前準備もできずに会議が始まった。

 パーシオンには嫁ちゃんの同席は断られた。

 あくまでクロノス公国大公とサシで話し合いたいようだ。

 ひげ面スキンヘッドで堀り深いおっさんが画面に出た。

 肌は白に近い灰色だ。


「パーシオン総統ビクトルだ」


 笑いもしない。無愛想である。


「クロノス公国大公レオ・カミシロ・クロノスです」


「会談であるが、貴国のマゼラン及びオーゼンへの侵略行為について」


「両国の国家崩壊の方が先です。我々は国会崩壊後にマゼラン一部地方の要請を受けてこれをクロノスに編入。他地域は復興の支援をしているだけです。またオーゼンについては人口の減少が著しく、自力での復興は不可能であると判断してます」


 オーゼンはマゼランに逃げた難民と、運よく生き残ったごく少数がいる。

 残念ながら生き残りはエッジの実家の惑星くらいの規模しかいない。

 マゼランもオーゼンの機械兵による虐殺で似たような状態だ。

 マゼランの生き残りは惑星一つくらいの規模かな……。

「首都にみんな集めた方がいいよね」ってマゼランの暫定政府と話し合ってるくらいだ。


「それはすべて貴国の陰謀だ!」


「クロノスはこんな大規模な陰謀を行う余裕なんてありません。だいたいイナゴテロのおかげで領域拡張なんてする余力ないんですよ」


「だが貴国の背後には銀河帝国がいる!」


「銀河帝国もいまだゾーク戦争の復興をしている状態です。そもそも鬼神国がゲートを開かなければ我々がこっちに来ることもなかったんです」


「だが実際、銀河帝国はプローンを滅ぼしクロノスを手中におさめた!」


「プローンを滅ぼしたのはラターニアです。クロノスは立候補してないのに大公にされちゃったんですよ! 俺の大公就任に反対してる勢力に資金援助したのに!」


 俺はぎゃん泣きした。

 もうね、思いのたけを初対面のおっさんにぶつけてやる!


「だいたいね! 士官学校の高等部は途中で卒業にされちゃうし! 大学校は一度も通わずに卒業になっちゃうし! 結婚したばかりの嫁ちゃんとはイチャイチャもできねえし! ゾークに人生ボロボロにされたんじゃあああああああ!」


「いや大学院を飛び級と……」


「一度も通ってねえ!」


 俺はさらにまくし立てる。

 本音だけで語る。もうどうなろうが知らん。


「銀河帝国の家に帰りたいからありとあらゆる手でクロノス公国への変更を阻止したのに! 全部裏目に出るし!」


「ほ、ほう……」


「王様になりたくないから資金援助した団体まで裏切りやがって俺を王様にしようとするし!」


「あ、うん……はい……」


「王様になったからとギリギリまで生活水準落としたら餓死しかけるし!」


「……そ、それは壮絶な」


「鬼神国人は兄貴チャレンジとか言って襲いかかってくるし! ボコボコにしたら逆に喜ぶし!」


「……よく耐えてますな」


「でしょ! でも責任と嫁ちゃんへの愛で耐えてるの! そろそろ子作りしたいのに暇ないしさ!」


「あ……はい……」


 当初の無愛想な顔はどこへやら。

 俺への同情と慈悲の顔になってる。


「もう惑星も増やしたくねえ! 仕事増やしたくねえ!」


「あ、はい。ですよね……」


 俺は泣きながらバンバンと机を叩く。

 どうやらビクトル氏、俺を野心あふれる鬼神国人みたいに思ってた模様。

 そう何人も嫁がいて、国を拡大する暴君だと思ってたのだろう。

 だがしかし! 真の俺の姿は哀れな男である。

 イチャコラもできず、酒池肉林どころか高級料理も食べず、酒もたばこもやらず……。

 起きてる間はほぼ仕事。

 たまの休憩時間は料理作って現実逃避……または、カトリ先生に拉致されて死ぬほど稽古!

 どこが暴君だ!


「あー……うん、少し休んだ方がいいのでは?」


「できねえんです」


「あ、はい」


「マゼランとオーゼン滅ぼした連中が休ませてくれないんですよ!」


「あ、はい」


「わかります? このプライベートがない生活!」


「あ、ああ……うん、そのがんばってくれ……」


 会議は突如終了した。

 逃げやがった!

 逃げやがったなあああああああああああああッ!

 こうしてパーシオンとの初会談は向こうが逃げて終了した。

 たぶん俺の勝ちである。

 うわああああああああああん!

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― 新着の感想 ―
総統「...ある意味、我が国以上の全体主義の犠牲者だった」
愚痴聞かせてるだけw
お労しやカワゴン…これもひとえにてめェが活躍しすぎたせいだが…
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