第五百五十七話
遺体の捜索をちゃんとやったら出るわ出るわ。
さらに俺たちの話題を見て、クロノス領土の全惑星でボランティア団体が発足。
遺体の回収が恐ろしい勢いで進んだ。
ちょうどいい機会ということでクロノス領土の各地で合同葬儀。
クロノス教の神官さん総出で葬儀を執り行うことになった。
当然人が足りるわけない。
葬儀会社にも人を出してもらったがそんなものじゃ足りない。
とうとう銀河帝国のゲーミング坊主と神社も参戦。
座敷童ちゃんとこの神社経由で連絡が入ったみたい。
彼らは文化侵略なんかする気もない。
地方惑星の神社や寺なんて放置されてるのが実情だ。
彼らはあくまで法要とかお祭りのときのイベント会社を使って交流事業のていでお手伝い。
ついでに彼らが経営してる大学の研究員をクロノスに派遣させることを約束した。
宗教学だって。
今のところ困ることはない。
クロノス教も交渉として難色を示したかったんだろうけど、そうも言ってられない。
クロノス教の今後が決まってしまう一大イベントなのだ。
帝国のイベント会社は優秀だった。
銀河帝国だと数珠や玉串に相当するクロノス教の法具……これなに?
ええっと……日本語だと神像とランプと香炉かな?
それと短剣。
これらを売る屋台を出す。
我がセルバンテスがクロノス国内で販売してたものだ。
俺たちが説明を受けるよりも先に製造開始してた。
それをクロノス教の喪服に身を包んでテントで販売。
ボランティア団体「レオ会」の募金箱やクロノス教の魔除けなんかも置いた。
かなり値引きしてる。儲けなんかいらないんだって。
実際ほぼ原価である。
人件費が少し入ってるくらいかな。
それよりも信用を得る方が大事だそうで。
やだ商社怖い!
お香なんかも販売。
「売上の一部は被害者の生活再建と復興に使われます」
徹底してる。
この異常なスピードにラターニア教は少し出遅れた。
クロノス国内にはラターニア人もかなりいる。
彼らはうちの会社、セルバンテスに連絡。
セルバンテスはすでにラターニアで葬儀関連の品を扱っていた。
正装から燭台に聖典、香油とかあとせんべいみたいなやつとかの細かい品も。
とにかくそれらをセルバンテスで販売。
もちろん会場で出張店舗を出して販売。
利益があるのは正装くらいか?
あとは値引き販売してた。
太極国人は少数。
だけど軽く扱わない。
シーユンに頼んで宗教の人を呼んだ。
俺も原稿を持ってスピーチ。
冥福を祈り、クロノスに平和をもたらすことを宣言。
なんか俺の支持率高くなってるんだよね。
遺体があんなにまだあるなんて思ってなかった。
デリカシーなかったんだけど、ちゃんと謝って葬儀をやったら人気が爆発した。
クロノス人もあんなに遺体が残ってるのには驚いたみたい。
逆に感謝されちゃった。
……なぜだ?
俺って失敗も多いけど今のところ許されてる模様。
クロノス教にラターニア教に太極国の宗教、たぶんお坊さん的なやつの合同イベントなので夕方までかかった。
事前に長屋のおばちゃん、ハーさんに泣きついて一般の人が食事できるようにしててよかった。
あとトイレも全力で設置してよかったよ。
さすが商社……すげえぜ。
イベント終了後に偉い人たちと会食。
というか、こっちが本番まである。
各国宗教の重鎮や経済界の大物、各国の軍の高官も出席、ほぼ国際会議状態である。
こっちには鬼神国も出席、サリアもやってきた。
「レオさん、助かりました。遺体を返還してくれたんでこちらも葬儀できましたよ」
サリアは笑顔である。
「合同葬じゃなくてよかったの?」
「うちらは葬儀よりもその後の仇討ちが重要ですんで」
葬儀ってより家の名誉のために仇討ちの覚悟を表明する場所なんだって。
病死だと「運命に勝った。偉い!」って感じの儀式になるらしい。
近くて遠い文化が鬼神国。
比較的に理解しやすいのがクロノス。
一見理解しやすそうだけど、根本のところで理解できないラターニアって感じかな。
ラターニア教の葬儀は「死による奴隷からの解放を祝いつつ、二度と奴隷にならないことを祈る」儀式である。
説明を受ければ納得できるけど、同じ風景は見られないってやつだ。
理解した気になるのが一番危うい。
だから、いちいちラターニア教の大司教さんに連絡を取ってアドバイスをもらってる。
わからないから聞く。
これを徹底してるからラターニア教との関係は悪くない。
「異教徒にしちゃ物事の道理がわかってるじゃないか」って感じだろうか。
クロノス教も同じ。
改宗しないけど尊重する。
で、会議なんだけど、端っこで目立たないようにメシ食ってようと思ったのね。
さすがにイソノたちと「焼きそば食べたいよね~」とか言ってたわけ。
サリアもこっち側。「お好み焼き食べたいよね~」とか言ってたのよ。
食べたいよね~。
シーユンもこっち側で「レオ様の作った炒飯食べたいです」とか言ってたのね。
そしたら俺らの方へ各国の宗教指導者が満面の笑みでやって来るわけ。
法衣を着た太極国の大道士って人までも来た。
あ、はい。
「クロノス大公陛下ならびに太極国シーユン皇帝陛下、サリア国王陛下にご挨拶申し上げます」
まずはラターニア教の指導者がご挨拶。
場所がクロノスだから俺が先に名前を言われたようだ。
あとは国の規模順。
この辺の順序はまだうろ覚えだ。
難しいのよ。
そしたら太極国の大道士も同じ挨拶。
最後にクロノス教の大神官がご挨拶。
この顔は……敵意はないけどなにかたくらんでる顔だ。
そりゃ、お金出せって言うなら出すけどさ……。
すると三人とも真面目な顔になる。
「ゼン神族との戦い。我らもご協力させていただきたく存じます」
言うと思った。
だから端っこにいたのに。
「まだ戦うとは決まってません」
俺はぶち殺そうと思ってるけど、クロノス公国はまだ決めかねてるって意味ね。
戦いたくないって意味じゃない。
相手の規模も強さも本拠地すらも測りかねてるって意味だ。
ただ言えるのは基本的に俺らを下等生物扱いしてなめプしてるのはわかってる。
なめてるから戦力を小出しにしてるのだ。
強者は強者で国内事情があるんだろうけどね。
戦力の小出しって政治的にそうなっちゃった結果、被害が増加するんだよね。
もちろん軍事の素人がアホアホ決断した場合もあるけどね。
向こうも組織の長だ。
俺たちの状況はわかるだろう。
「それでもかまいません。聖女に神樹の出現。……我らに共通する神話の再現。我らは時代の変革の真っ只中におります。その中心にいるのはレオ・カミシロ・クロノス陛下であらせられます」
「宗教家に戦えなんて言えませんよ。ですがね、民にもしものことがあったときはお願いします」
死後の悩みもあるだろう。
墓と弔いは頼むぜって意味だ。
「全力を尽くします」
あれ?
ちょっと伝わらなかったかも。
「我ら、各教団が手を取り合い、皆様と民の団結を促進させましょう」
あんれー?
いや、そこまでしなくても……。
すると嫁ちゃんがやって来た。
「貴公ら、よくぞ言われた! この戦いは民の自由と平和の戦いじゃ! 婿殿、我が最愛の比翼レオ・カミシロ・クロノスよ! 覚悟を見せよ!」
嫁ちゃんにそこまで言われたらしかたねえな。
「クロノスだけじゃない。関係国、それに銀河帝国までも平和と正義を約束しよう」
ここでいう正義っていうのはゼン神族ぶち殺すぞって意味じゃない。
「総合的に良い方の選択肢を選ぶッス」って意味でしかない。
でも俺はほくそ笑んでいた。
共通の敵がいるってこんなにも安定するのね。
あとは俺が大きな間違いさせしなければいいはずだ。……たぶんね。
そして数日後、存在すら忘れてたパーシオンから外交チャンネルで会談申し込みが来たのである。




