第五百五十六話
アマダの野郎の結婚式が終わると鬼神国から連絡が来た。
ラウンドワンツースリーのマスコットキャラを川に投げ込んだら野球チームが不振になったんだって!
知るかボケ! ぶち殺すぞ!
とはいえ鬼神国人は気のいい連中が多い。
ボランティアでコキ使……慈善事業をしようと思う。
ドブさらいである。
俺の個人資産でドブさらい事業開始。
俺の個人資産であるが……アマダの結婚式にかなりの額を間接的にぶち込んだ。
普通なら減るはずだ。
……増えたんだよ。
番組収益とか……イベントの収益とか……株とか短期の債券とかで……。
俺の知らないとこで……。
出演してたタレントさんの所属する芸能事務所の大株主だったなんて知らないよおおおおおおおおッ!
ということでお金を慈善事業に使う。
ルーちゃんママことスーさんから連絡が来る。
「番組の取材許可を」
「あー、いいですね~。取材許可するように言っておきます」
ドブさらいの主催団体に通知して……。
え? 番組にする?
いいッスよ。
これは俺の個人プロジェクトなので許可は自由に出せる。
どもども好きにしてください。
リハーサル代わりにクロノスの川もやるかー。
河川のインフラ壊れまくってるから直してる最中なんだけどさー。
どうしても汚くなったんだよね。
先にこっちを取材したい?
了解ッス!
じゃー、宮殿と内務省に連絡して~。
というわけでゴミさらい当日、ルーちゃんと手を繋ぎながら宮殿近くの川に行く。
きなこやだいふくはお留守番。
どうせカミシロ一門の小規模なボランティアだし、ゴミさらいしながら生き物捕まえて遊べばいいよね~。
川の近くまで歩いて行くと人がたくさんいた。
おかしい……。
護衛の近衛騎士団に頼んで様子を見に行ってもらう。
するとお仕事フル装備姿のスーさんを連れて戻ってくる。
「どうやら連絡ミスがあったようで……メディアと共催のイベントになりまして」
「どういうこと?」
アイドルグループや俳優やコメディアンも参加の巨大イベントになったらしい。
「ま、いいか。行くベ」
ルーちゃんと手を繋ぎながら人々のところに行くとサーッと人混みが割れた。
「王様が来たぞ!」
「ほらどいて!」
「そこあけろ!」
「どもども~」
頭を下げながらルーちゃんやスーさんと会場の川に行く。
若手のコメディアンがボランティアさんに挨拶してた。
「王様だ!」
「王様が来たぞ!」
「すげえ! 本物だ!」
「レオ・カミシロ・クロノスの本物ッス!」
ルーちゃんと手を振りながらさらに奥へ。
すると嫁ちゃんやクレアたちがいた。
「どうしてこうなった……」
嫁ちゃんとクレアが頭を抱えていた。
二人とも俺と同じでそれぞれが別々の部署にアプローチした結果、自分たちの知らないところで話が大きくなってたんだって。
わかるー。
俺も地域のボランティアくらいの規模だと思ってたのよ。
「あははは! 家族だから行動パターンが似てきた!」
メリッサがゲラゲラ笑ってる。
レンは黙ってお茶を入れてる。
タチアナにワンオーワンにシーユンはメディアの取材を受けてた。
特にシーユンは「我が太極国でも見習いたい」とコメントをしてた。
これつまり「太極国、緊急でやれ!」って意味だよね……。ま、いいか。
逆にタチアナは「出身のコロニーも水質汚染で大変だったことがあるッス。つっても、あたしクローンなんで、自分の記憶じゃねえんですけどね!」って爆笑してた。
それを見たメディアの人はコメント返せなくて固まってた。
タチアナ……お前のジョークはたまに笑えないのよ……。
ワンオーワンは「がんばるであります!」と元気だった。
ドブさらい自体はサクサク進む。
だって宮殿のすぐ近くの川だもん。
そんなに汚れてないよ。
地価が高い地域でエリート層が住んでる地域だし。
川にゴミ投げ込む人はいない。
ただイナゴテロの傷跡だけがある。瓦礫やフェンスの破片、建物の残骸とかね。
でもいいのよ。まずはやりやすいところから初めて全国に普及すれば。
なあに予算は大量にある。
すでにイベント会社が入ってたみたいで、凄まじい勢いでイベントが進行する。
知らぬは仕事を発注した当の俺たちだけだった。はっはっは!
投げ込まれてるゴミ、というか風で飛んで川に入ったものと瓦礫だ。
瓦礫はイナゴテロのときのである。
たまにイナゴの破片が見つかって悲鳴が上がる。
柔らかい部分は川の生き物に食べられてなくなっちゃうんだけど、外骨格は残っちゃうわけ。
でさー、これはみんな予想が甘かったんだけど、白骨化した遺体が見つかったの。
それもかなり多数。
工事してるとこから見つかった例はあるんだけど……、ある程度は回収してたから発見されないと思ってた。
たぶんイナゴテロで川に飛び込んで力尽きた人じゃないかな。
「大至急警察とクロノス教に連絡せよ!」
こういうイレギュラーに強い嫁ちゃんが陣頭指揮を執る。
警備してた警察がすぐに来てくれた。
クロノス教の神官も飛んできた。
「まずはどうすればいいですか?」
ここからは大公の俺の仕事である。
ちゃんと儀式をしなければならない。
「すぐに死者の安寧を祈る儀式を執り行います!」
まずは死亡判断。
どう見ても死んでるけど警察の役目だ。
ケビンと医師団にボランティアのクロノス人医師も加わって死亡診断書を書く。
「死亡を確認したよ」ってだけのやつ。
詳しい診断はあとだけど、まずは鎮魂の儀式をせねば。
もうお祭りどころじゃなかったけど、俺たちが懸命に働くのを見てボランティアさんも祈りを捧げていた。
クロノス教の神官たちも続々到着。
教団本部の幹部も来た。
なぜかクロノス教に知らせたことを感謝された。
俺はすぐに教団に寄付。
いやこれだけの移動だけでも大変だもの。
イベント主催者が費用を負担しないとね。
それをクロノス教の人たちに感謝される。
「今日は急な依頼で申し訳ありません」
頭を下げる。
「いえいえ、我々の文化や教義の尊重、心より感謝申し上げます」
教団のお偉いさんたちで祈りを捧げる。
今回は簡易で。
調査が終わり次第合同葬。
身元のわかる遺体を家族に返還したら個別の葬儀をしてもらう予定になった。
地元の政治家や各大臣も大急ぎで駆けつけ、ボランティアに参加するために作業着姿だった知事は宮殿で喪服に着替えてきた。
メディアも真面目なドキュメンタリーになった。
もうトップニュースがこれ。
ドブさらいのボランティアも参加して簡易の儀式を執り行う。
軽率だったかもと反省する。
だけどクロノス教の神官さんに涙ながらに感謝された。
俺が神社を優先するかもと恐れていたようだ。
ないない。地元の宗教組織とは仲良くする。
文化侵略はもめるからね。
筋を通したせいか俺への批判はなかった。
うーん少しくらい怒ってもいいのよ。
デリカシーなかったのは事実なんだし。
この事件のせいか各地でボランティア団体ができた。
遺体の捜索にゴミの片付けかな。
とにかく行政だけじゃ手がまわらないところをやってくれる団体だ。
宮殿の近くの川もボランティアによる清掃が行われている。
俺たちも毎回参加してる。




